文字数 1,039文字

家に帰ると、夫の耳がニャがくニャっていた。

<自然はそれ自体に変化する能力がある>

ピンと立ったニャがい耳はまるでウサギのようだ。

「あニャた、どうしたの?」

夫はニャがい耳をこちらに向けて

「オレに聞くなよ。わかるわけないだろ」
「ウサギかしら?」
「だろうな」

と言う夫は少しにやついて言葉を続ける。

「ネコの次はウサギだよ」

そういって夫はニコっとした。私もすこし吹き出しニャがら

「ニャに笑ってんのよ」

このニャがい耳で私の話も少しは聞いてくれるようにニャるだろうか。

「他に変わったところはあるの?」
「いや、まだない。耳だけだな」
「小さい音までよく聞こえるとか?」
「そういうこともないな」
「ちょっとジャンプしてみて」
「なんだそりゃ」
「だってウサギでしょ?ウサギニャらジャンプ力が」
「天井にぶち当たったらどうするんだ、クレームが入るぞ」
「それもそうね。今度公園でやってみましょう」
「うん、メジャーを用意しないとな」
「あニャたニャに言ってるの?」
「そっちが言い出したんだろ」

そうこうしているうちに息子が塾を終えて帰ってきて、夫の耳を見て声を上げた。
うわーとか、あぁーとか、歓喜の声だ。

「父さんはウサギ?」
「うん、そうらしい」

そう言われて夫は少し恥ずかしそうだ。
しかし息子は小さくジャンプしてから夫に飛びついた。

「父さんはウサギかー」

そう言って私を見る。

「母さんはネコで父さんはウサギ」

息子は呪文を唱えるように繰り返しそう言った。

「うれしいの?」

と息子に問いかけると、笑いニャがらニャおも”呪文”を繰り返した。
すると夫は息子を抱いたまま立ち上がってニャにやらステップを踏みはじめた。
”呪文”に合わせた”舞”だ。
息子はときおり吹き出しニャがら”呪文”を繰り返す。
しかたがニャいから、私も”舞”に合わせて手拍子を打った。
かわいい動物に変身することはうれしいことニャのかもしれニャい。
息子は人間のままでいてほしいと思っているが
それもこのネコ化またはウサギ化の進展にもよる。
少数派とニャれば、生活は不便にニャるに違いニャい。

”舞”がひと段落すると、息子が告白した。ヒゲが生えてきていると。
まだ子供ニャのに、というと、そっちの髭とは違う、感覚毛だよと嬉しそうニャ顔で言い返す。
そして続けるのだ。
ネコにウサギにハムスター、ぜんぶ愛されている動物ばかりだと。
それでまた”舞”が始まりそうにニャるのを、お風呂という言葉で制した。
その夜は、息子の晴れ晴れとした表情を思い出しニャがら久しぶりにぐっすり眠ることができた。
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