【第三十九片】 一発ギャグを何発かすればいつかは笑われる。

文字数 859文字

スポーツ研究部に初依頼が来た次の日の放課後、風馬たちは依頼者である鷹岡駿矢に会うため、サッカー部や野球部、テニス部、陸上部が練習をしている校庭に来ていた。

「元気がある、外部活の人は」

と、運動部に入ったことがなかった麻紀はそう呟いた。それを聞いた風馬は校庭の方を改めて見た。確かにサッカー部は紅白戦をしていて、部活内で怒声が飛び交っている。野球部はバッティング練習をしながら、声をかけあっている。テニス部はラリーを交わしながら、大声をあげている。そして、陸上部も長距離の練習のために校庭の周りを走っている。

それぞれが本気で部活をやっている。

「んで、依頼人の鷹岡駿矢って人はどこにいるんだ?」

風馬は校庭にあまり視線を向けない様にそう言った。そんな風馬を浩正は横目で見た後、凛の方に視線を戻した。

「確かサッカー部の人でしたよね?」

「うん。そうだよ。でも、駿矢くんは他のサッカー部の部員にこのことを知られたくないらしくて、たぶんこっちに来ると思うよ。ほら、早速来ているみたいだよ」

凛は浩正の疑問に、そう答えながら校庭の方へと指を向けた。それにつられるように浩正は視線を校庭の方へと向けた。

そこには坊主頭で、白のサッカーのユニフォームを着た少年が近くまで歩いて来ていた。

「ええと、稲原さんもいるし、スポーツ研究部の方々ですよね。サッカー部二年の鷹岡です。よろしくお願いします」

と、駿矢は後頭部を左手で擦りながら、少し頭を下げながらそう言った。あまりにも腰が低い駿矢の態度に、浩正や凛、麻紀ですら対応に困っていたが、風馬が一歩前に出た。

「俺は空野風馬だ。よろシュート」

風馬は片手を挙げながらそう言った。これは入学初日に教室で風馬がやった寒いギャグであり、それを知っている浩正と麻紀は白い目で風馬を見ていた。
遠くからサッカー部や野球部などの声が聞こえる中、風馬たちの場所だけ、しーんという擬音が似合いそうな雰囲気になっていたはずだったが、吹き出して笑いそうになっている凛と駿矢の姿があった。

「ええ…………」

と、浩正は言ってしまった。
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