小太郎の本心
文字数 2,592文字
大会三日目。
準決勝へと勝ち進んだ透子たち小倉中学校職種決闘部は今回もスムーズに勝つかと思われた。
小太郎は呆然としていたのか、拳一郎の言葉に咄嗟に反応して対戦相手の足元に銃弾を放つも避けられそのまま距離を詰められるとその相手から攻撃を諸に喰らい、変身が解けてドロップする。
隆太がよそ見をしてしまったのが災いしたのか、対戦相手が迫って来て攻撃を受ける。
それにより変身が解け、隆太もドロップしてしまった。
優斗は対戦相手の人数を見る。
残り三人……。
自陣も残り三人。
優斗の言葉に、透子と拳一郎の二人は呼応し、それぞれ残りの相手を倒して何とか勝利を収めた。
試合が終わり、拳一郎はすぐさま小太郎に近付き彼の胸座を掴んで睨みつける。
拳一郎は小太郎の胸座を掴んでいる手を震わせながら言葉を続けた。
刹那、小太郎は雷に打たれたかの様な感覚を覚える。
図星だからだ。
まさかこんな形で言い当てられるとは思いもしなかったのだろう。
気が重くなった小太郎は、そのまま拳一郎から視線を逸らして黙り込んだ。
桐谷はそう言って拳一郎が掴んでいる手を振り解いてその場から走って去って行った。
「任せろ」と優斗は言って、桐谷の跡を追った。
×××
仲間たちの前から走り去ってしまった桐谷は疲れたのか、会場の出入り口にあるベンチに腰を掛けて息を整える。
その問いに、小太郎は勢いよく首を横に振って否定した。
優斗の言葉に、小太郎は大きく目を見開いた。
×××
僕は見た通り小柄で力も無く、いつも周りから虐められていました。
でも、そんな時、TVに映っていた職種決闘の試合が僕の限界を超えさせてくれました。
職種決闘では力が同じになるように設定され、文字通り実力だけの勝負が行える体感型ゲーム。
確信したのです。
『このゲームなら僕の力示す事が出来る』と……。
親に頼み込んですぐに職種札を購入しました。
色々な技術を身に付け、僕は全国大会で優勝したのです。
最初は職種決闘やっている人たちに尊敬の眼差しで観られていたました。
沢山、一緒に遊びました。
ですが……、
いつしか尊敬から嫉妬に変わり、次第に僕から離れて行ったのです。
ただ僕は皆と楽しくしたかっただけなのに……。
×××
甘えだと思いますけどね……、と小太郎は自嘲気味に笑った。
寧ろ、と優斗は言葉を続ける。
気が付けば、小太郎の瞳からは雫が溢れていた。
×××
その言葉を聴いて安心したのか、透子たちはステージへと上がり、対戦相手のチームと対面する。
審判が右腕を上げると同時にその場にいる選手たちは職種札を取り出し戦闘に入る構えを取る。
『グローリー・オア・フラストレーション』!!
拳一郎は得意の先制攻撃で対戦相手のチームの一人を倒す。
背後に回り込まれた敵の攻撃を喰らいそうになったその時、銃声が鳴り響くと同時に相手は吹っ飛びドロップした。
銃声が聞こえた方向へと視線を向けると、そこにはショットガンを構えた小太郎の姿があった。
それから透子たちは小太郎の援護射撃のお蔭でスムーズに試合を運ぶ事が出来たのだった。
歓声が沸き上がる。
透子たちは全員思わず勝利の咆哮を上げるのであった。