実力の差
文字数 1,525文字
『グローリー・オア・フラストレーション』!!と拳一郎と小太郎、隆太に紅の四人は一斉に職種札に魔力を込めて変身し、試合が始まった。
闘技場の出入り口で優斗は彼ら四人の試合の様子を黙って眺めていた。
先手必勝、拳一郎は『闘士』の職種札特有の目にも留まらぬ速さで紅との距離を縮めて拳を振るう。
だがしかし彼女はそんな勢いのある彼の攻撃を涼しい顔してヒラリと避けて、その手首を掴み、投げ飛ばした。
二人の言葉に拳一郎は「うるせぇ!!」と聴かずに再び紅に突っ込んでいく。
「バカが……!!」と隆太は呆れて彼の動きに合わせる様に行動を開始した。
『闘士』の職種札よりも早く動ける『暗殺者』を使用している隆太の攻撃を意図も簡単に往なし、隙が出来た横腹に鋭い蹴りを放って吹っ飛ばした。
飛んでくる拳を紅はそっと掌で優しく受け止めそのまま拳一郎を背中から床に叩き付けた。
小太郎の背後へと回り込んだ紅はそのまま彼を蹴り飛ばし魔力で作ったバレーボール大の光の玉を浴びせた。
そこから紅のワンサイドゲームだった。
向かってくる拳一郎や隆太を往なしては反撃してダメージを負わせ、いつまでたっても戦う意思を見せない小太郎に容赦なく闘士特有の能力を浴びせた。
そうしていく内に、あっと言う間に彼ら三人はドロップして敗北した。
特にそこの貴方!! と言って紅は小太郎を指さした。
闘技場の出入り口で拳一郎たちの試合を見ていた優斗は葛藤していた。
再び職種決闘の部隊へと舞い戻るか否か。
職種決闘に感けていたから父は亡くなったのではないか?
そんな負の感情が胸中に蠢いている。
父ならこの時、どんな言葉を掛けてくれるのであろうか……?
『自分らしく生きろ』
亡き父が最期に振り絞って残した言葉。
気が付けば、優斗は彼らの目の前まで歩を進めていた。
優斗はズボンのポケットから剣士の職種札を取り出してこう言った。