隆太の苦悩
文字数 1,437文字
拳一郎の言葉に透子、優斗、小太郎の三人はそれに賛成したが、隆太だけは違った。
そう言って隆太は一人だけ拳一郎たちの前から去って行ったのだった。
×××
拳一郎たちと別れた隆太は自宅に辿り着くと同時に部屋へと移動し荷物を置いて、暗い色をした動きやすい服に着替えると足早に道場へと向かった。
道場には厳格な雰囲気を纏った隆太の父が帰りを待っていた。
隆太は父の下へと歩み寄ると正座をして両手を床に付けて綺麗なお辞儀をする。
ありがとうございますと隆太は立ち上がり戦闘に構えを取った。
対して父は特に構える事無くただ来なさいとだけ口にした。
その瞬間、隆太は一気に距離を詰め、手始めに父の左足を目掛けて右の回し蹴りをお見舞いする。
しかしそんな彼の動きをまるで疾うの昔に読んでいるかの様に半歩下がって避けた。
だが隆太は動きを読まれる事を予想していたのか無駄なく次の攻撃を仕掛ける。
滝の様に勢いのある隆太の連続攻撃に父はどこかがっかりした様子で彼の拳を受け止めそのまま床に叩き付けた。
態勢を持ち直して再び父に攻めようとしたがそれよりも早く自分の両目に二本の指が刺され、動きが止まってしまったのだった。
図星だった。
全ては後藤優斗が入部してからである。
ずっと同格だと思えていた拳一郎がやる気を見せ、透子の下で段々と力を付けている。
そんな彼を見て焦りを感じた隆太は『暗殺者』の職種札を使いこなすヒントになるかもしれない忍の家柄の自分の父に修業を付けることを願い乞うたのだ。
父の質問にすぐに答える事は出来なかった。
今まで家柄に興味を示さなかった附けがこんな所で突き付けられるとは思わなかったからだ。
それにより少しばかりの後悔に襲われる。
父から答えを聴いた瞬間、隆太の頭の中で『忍』の極意を利用した『暗殺者』としての戦い方が溢れ出す。
こうして隆太の秘密の特訓はまだまだ続いたのであった。
×××
翌日、部活を終えると隆太はすぐに拳一郎に声を掛けた。
隆太の発言に、皆は驚愕した。
こうして、特訓の成果を見せるために、隆太は拳一郎と職種決闘をするのであった……。