隆太の苦悩

文字数 1,437文字

よしっ!!
今日の練習はここまでだ!!
皆お疲れさん!!
お疲れ!!
そうだ!!
これから皆で飯食いに行かねぇ?
拳一郎の言葉に透子、優斗、小太郎の三人はそれに賛成したが、隆太だけは違った。
すまない。
俺は帰ってやることがあるからさ。
マジか!!
またかよ!!
影山ここ最近忙しそうだな。
ああ、少しな。
また今度誘ってくれ。
そう言って隆太は一人だけ拳一郎たちの前から去って行ったのだった。
×××
拳一郎たちと別れた隆太は自宅に辿り着くと同時に部屋へと移動し荷物を置いて、暗い色をした動きやすい服に着替えると足早に道場へと向かった。
ただいま戻りました。
ムッ、戻ったか。
道場には厳格な雰囲気を纏った隆太の父が帰りを待っていた。
隆太は父の下へと歩み寄ると正座をして両手を床に付けて綺麗なお辞儀をする。
父上。
今日も稽古宜しくお願いします。
良かろう。
立ちなさい。
ありがとうございますと隆太は立ち上がり戦闘に構えを取った。
対して父は特に構える事無くただ来なさいとだけ口にした。
その瞬間、隆太は一気に距離を詰め、手始めに父の左足を目掛けて右の回し蹴りをお見舞いする。
しかしそんな彼の動きをまるで疾うの昔に読んでいるかの様に半歩下がって避けた。
だが隆太は動きを読まれる事を予想していたのか無駄なく次の攻撃を仕掛ける。
甘い。
滝の様に勢いのある隆太の連続攻撃に父はどこかがっかりした様子で彼の拳を受け止めそのまま床に叩き付けた。
っ!?
まだです!!
態勢を持ち直して再び父に攻めようとしたがそれよりも早く自分の両目に二本の指が刺され、動きが止まってしまったのだった。
勝負ありだな。
あ、ありがとうございました……。
攻撃に迷いが見える。
…………。
まだ自分の役割が見えないと言った所だな。
図星だった。
全ては後藤優斗が入部してからである。
ずっと同格だと思えていた拳一郎がやる気を見せ、透子の下で段々と力を付けている。
そんな彼を見て焦りを感じた隆太は『暗殺者』の職種札を使いこなすヒントになるかもしれない忍の家柄の自分の父に修業を付けることを願い乞うたのだ。
隆太よ。
お前にとって忍とは何だ?
俺にとっての忍……。
父の質問にすぐに答える事は出来なかった。
今まで家柄に興味を示さなかった附けがこんな所で突き付けられるとは思わなかったからだ。
それにより少しばかりの後悔に襲われる。
解らないと言った顔だな。
申し訳ございません……。
まぁ良い。
お前も大会まで時間が無いだろう。
特別に教えてやる。
ありがとうございます。
良いか、心して聴け。
『忍』とは影を味方につけ、耐える事である。
先程の組手の様に、ただ闇雲に攻撃をしても意味は無いのだ。
影を身に纏い、隙を突いて敵を倒す。
これが本来あるべき『忍』の姿なのだ。
影を味方につけ、耐えること……。
父から答えを聴いた瞬間、隆太の頭の中で『忍』の極意を利用した『暗殺者』としての戦い方が溢れ出す。
父上!!
もう一度、御手合せお願いします!!
ウム、良かろう。
来なさい。
こうして隆太の秘密の特訓はまだまだ続いたのであった。
×××
翌日、部活を終えると隆太はすぐに拳一郎に声を掛けた。
鷹野、お願いがある。
おん?
どした?
今から俺と職種決闘をしてくれ。
隆太の発言に、皆は驚愕した。
何を考えているのか解らないが、良いぜ。
やろうか。
い、良いんですか!?
ま、職種決闘で怪我する事は無いから良いだろう。
許可する。
軽いな……。
皆、強くなった俺を見てくれ。
こうして、特訓の成果を見せるために、隆太は拳一郎と職種決闘をするのであった……。
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登場人物紹介

後藤優斗(旧名:前田優斗)

小倉中学校三年。
使用職種札:剣士
小等部六年の頃、父が他界したことで職種決闘のプレイを控える事に。

宮野透子

小倉中学校三年。
使用職種札:闘士
小倉中学校職種決闘部部長を務めている。
明るく陽気で男勝りな性格の持ち主。
『神の世代』の中で最強を誇る。

鷹野拳一郎

小倉中学校三年。
使用職種札:闘士
小倉中学校職種決闘部副部長を務めている。
気性が荒い。
透子の事を『宮ちゃん』と慕っている。

影山隆太

小倉中学校三年。
使用職種札:暗殺者
透子の幼馴染。
穏やかな性格をしている。

桐谷小太郎

小倉中学校一年。
使用職種札:銃士
内気な性格をしており、常に自分の気持ちを抑えている。

神条白銀

聖薔薇学園三年。
使用職種札:剣士
『神の世代』の一人。
聖薔薇学園職種決闘部部長を務めている。

眞壁紅

聖薔薇学園三年
使用職種札:闘士
『神の世代』の一人。
部長の白銀を酷く崇拝している。

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