第11話 月あかり

文字数 412文字

 月あかりは、わたしの希望だ。
「暗い中でしか、明かりは見えない。だから永遠の暗渠もなく、永遠の白日もない」
 世はうつろう、わたしも一ヵ所にとどまることもない
 わたしは、わたしのあちこちから漏れ出している、現在・過去・未来を見る
 それらは、漏れるそばから霧散し、蒸発する
 けっしてとどまることはない
 たえまなく、流れ、動き、けっして止むことはない

 月のあかりは、わたしの希望だ
 暗ければ暗いほど、それは煌光となる
 死は、柔らかいベッドに見える
 不幸は、僥倖に見える
 憂鬱は、やさしさに見える
 わたしは、コビトのように小さな人間なので
 この手はすぐいっぱいになる、
 生、幸せ、快楽にまで、手が回らない

 月のあかりが、わたしの希望だ、
 雲に覆われれば、その向こうにいる月を想像する
 絶望も希望も わたしがつくっている独創物
「何も思わず、いればいいんだよ」
 月が言う、
「ただ、生きてるだけでいいんだよ。そこにいるだけで、いいんだよ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み