第16話 皿屋敷から皿を盗め!

文字数 1,366文字

(16)皿屋敷から皿を盗め!

信子が姫路工業大学にいる大学時代の同期に頼んだら、すんなりと構成成分の分析器を使用させてくれることになった。
あとは、本物の皿を青山家から一時的に拝借してくるだけだ。

武は皿の入手方法について、お菊さんに確認する。

「青山家からお皿を取ってくのは、お菊さんにお願いしても大丈夫かな?」

「大丈夫よ。私は普通の人間には見えないから。ただ、念のために誰かに見張っておいてほしいわね」とお菊さんは言った。

「じゃあ、アオヤマに頼めばいいのかな?」と武は猫に聞いた。

「ああ、アオヤマなら家の中にいても不自然じゃない。誰かが来たら『ニャー』って知らしてもらえばいい」と猫は言った。

武は重要なことに気付いた。

― お菊さんは猫語が分からない

猫のアオヤマが『ニャー』と言っても、お菊さんにはその『ニャー』が「お腹が空いたよー」なのか「誰かが来たよー」なのかが分からないのだ。

言葉の弊害があるから、猫→武→菊の順番に情報伝達しないといけない。
青山家に侵入するためには、情報伝達方法を整理する必要があるだろう。

「お菊さんは猫語が分からないから、アオヤマの『ニャー』が何なのか分からない。猫語の通訳のために僕も一緒に行った方がいいのかな?」と武は言った。

「えっ、武も泥棒するの?」と信子が言った。

信子が会話に入ってきた。ますますややこしくなりそうだ。

「泥棒じゃないよ。数時間借りるだけだよ」と武は弁明する。

「泥棒と一緒よ。借りるって言っても、住居侵入罪!」と信子は言った。

「じゃあ、どうしたらいいのさ?」
武は母に反対されて不満そうだ。

「お菊さんは毎晩お皿を数えてるでしょ?その時に1枚すり替えればいいじゃない?」
信子は泥棒しなくてもいい代替案を伝えた。

「本物と似た皿に一時的にすり替えるか・・・。その案はいいかもしれない」

「そうでしょ。お菊さんは毎晩数えているんだから、大きさ、重さ、色、模様が似た皿を用意できないかな?」と信子はお菊さんに聞いた。

「完璧でなくてもいいなら、近い皿は探せると思う。」とお菊さんは言った。

「じゃあ、デパートに似た皿を探しに行こうよ!」

信子は急に仕切り始めた。
デパートに行きたいだけじゃないのか?

青山家に侵入して皿を盗む案はペンディングになった。

***

武、信子、お菊さん、猫は姫路のデパート『ヤマトヤシキ(2018年閉店)』に到着した。
ちなみに、和服だと目立つので、お菊さんは信子の服に着替えている。

ヤマトヤシキに着くと信子は「皿を見てきて」と言い残して洋服コーナーに直行した。
やはり、デパートに行きたかっただけのようだ。

仕方ないから武はお菊さんと食器売り場で皿を探すことにした。
お菊さんは陳列されている皿の中から、一つの皿を手に取った。

「このお皿、ほしいなー」

コイツもショッピングを楽しんでいる・・・。

「気に入ったのなら、母さんに買ってもらおう。それで、そっくりな皿はあったの?」と武はお菊さんに聞いた。

「これが近いかな?暗いところだったら、本物と分からないと思う」

「じゃあ、その皿を買って帰ろう」

皿を購入した後、信子がお菊さんを洋服コーナーに連れまわして服を選び始めた。
その後も買い物を続け、結局、家に到着したのは4時間後だった。

デパートの買い物は疲れたが、これで準備は整った。

皿のすり替え作戦の決行だ!
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