第3話 パワー全開!歌声バトル!?

文字数 1,638文字

M大学付属中合唱部とM市立C中学校合唱部はコンクール地区予選を同点一位で通過、県大会出場を控えるライバル同士。教育委員会の先生方の見守る中、合同練習会でひそかに火花が散っております。歌にかけるプライドと情熱とささやかな人間関係のむむむ・・・?まだまだかわいい中学生。しかし、本人たちは何でも本気!?

エイコ達のM市立C中学の丘を下り谷を越えた隣の丘の上のM大学附属中学校合唱部中1のノリオは、M大付属小学校から持ち上がってきた気の強い中1女子のヤスコに気に入られてしまい、付属中のほかの女子から遠慮されておりました。


M市立C中学校との合唱部合同練習で、M大付属中学合唱部はえっちらおっちら電車を乗り継いで谷の反対側の丘の上のC中学にたどり着き、一緒になって歌ったり、学校ごとに歌ったり、教育委員会の先生方の見学もあるとあって、C中学校の顧問ケイ先生も、付属中の顧問イマダ先生も、普段のテンションよりさらに高めの張り切りよう。



午前の練習が終わってお昼休みの時間、付属中1年のノリオは一緒に机を運んだC中学校のエイコ達と話そうと、お弁当を持って近づきました。しかし、付属中1年の気の強い「女王」ヤスコに連れ戻されてしまいました。付属中の仲間が集まっている場所に腰を下ろすと、付属中の男子たちは興味津々で質問タイムです:付属中1年男子A「お、お、あれ、誰だよっ。知り合いかっ。何年生だ。」付属中1年男子B「え、友達?3人とも?おまえ、3人も彼女は手が早いだろ。ヒョウッ、女好きめー!」ノリオ「違うと何度言ったら・・・せっかく来たんだからさあ、仲間内だけで固まっているのも、変かなと思って。女の子たちが机運んでいるのをほっておくのも申し訳なくてさ。」付属中1年男子A・B「うわあ、ほんとかあ・・・。親切すぎ・・・下心満載・・・?」ノリオ「しつこいなあ。」男子たちが、初めて会う他校の中学生女子ネタに浮かれて無駄話を続けているところに、姐さんぶったヤスコが割り込んできました:「そうよ、彼女とか、そんなわけないでしょ。ノリオ君は合唱部とお勉強で忙しいのよ。こんな田舎のC中学まで出張ってこれるわけないでしょ。」



そうこうするうちに、お昼休憩が終わりそうです。付属中のみんなで、ぞろぞろ音楽室に戻ると、誰かがピアノを弾いて、C中学の子たちが大地讃頌を歌っています。ヤスコがひそかにサーチすると、さっきのお弁当休憩でノリオをヤスコから奪おうとした女子3人組もいます。(なんか、ぼそぼそしてて、ぜんっぜん声が出てないじゃん。ふっ、お子様ねっ。かわい子ぶってるのかしら。私そんなのは我慢できませんことよっ。いつでも全力、パワー全開が礼儀ってものよっ。)いきなり空気読まずに女王ヤスコはフォルテシモでカットインです。



付属中の生徒たちはいつのもことなので、あんまり気にしていません。C中学の生徒たちはびっくりしてヤスコのほうを振り返りましたが、そこは合唱部、すぐにペースを取り戻して、自分の歌に専念します。



昼休みが終わり、顧問の先生方も集まって、教育委員会の先生方もそろったので、まず、C中学が歌い、次に付属中が課題曲を歌うことになりました。



M大学付属中学3年生ソプラノパートリーダーのルミ先輩がヤスコに耳打ちしました。「ヤスコ、いつも高音フォルテ頑張ってくれてうれしいわ。C中学のケイ先生もヤスコのことほめていらっしゃったし。ただし、あくまでもC中学はライバル。おだててひっかけようとしているかもしれないわ。私たちもあなたのパワーに負けないけれど、私たちの音も聞いて、すこーし、合わせてくれると助かるわ。」さすが付属中3年生、ヤスコの性格をよく知った上でのアドバイス。



(ヤスコはパワー全開が信条だけど、尊敬するルミ先輩のご指導は素直に受けますわ・・・!)結構素直ですね、ヤスコさん。付属中の出番は、全般的にいつもよりさらに深みのある、ふっとい低音と自信たっぷりの高音で重厚な仕上がりを見せつけました。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み