ライオンズセール 其の2
文字数 2,648文字
ライオンズセール其の2
書いた人:甘らかん(アンチスポーツ)
先日、〈ライオンズセール〉というタイトルで一筆たしなめたところ、かなりの閲覧数をいただきました(当人比)
ミラクル顔面奇跡を呼んで〜♪
という言葉は〈地平を駆ける獅子を見た〉には含まれていませんでした。類似商品もありません。あるのはただ、
ミラクル元年奇跡を呼んで〜♪
でした。
さて、今回の話は2018年9月29日(土)の出来事。
マジック1となった西武ライオンズが、地元所沢での10年ぶりという胴上げをかけての大一番に挑み、結果ソフトバンクに負けてしまって、残念ながら優勝は持ち越しになってしまった日。
その日、私はたまたま所沢に降り立っていました。
台風が来る前に買い物を済ませてしまおうという魂胆で。
決して本拠地で優勝の瞬間を味わって、その場で優勝セールがはじまったら美味しいな、などという。純粋な西武ファンが聞いたら怒りの赤い弓が発射されるような思想のもとで行動していたわけではない。
そんなことは、電車に乗った時点で言えやしない。
「しまった! 迂闊にも西武球場前行き直通電車に乗ってしまった!」
落ち着け。おとなしく座っていればバレやしない。
野球のやの字も知らず、ミラクル元年をミラクル顔面だと思い込んでいた。そのうえ当日にはじまったらいいな、という優勝セール目当ての罰当たりが所沢に向かっているなどと。
ライオンズのユニホームを身にまとい、地平を駆ける獅子をその目に焼き付けんとする生粋のライオンズファンの前で、
セールのことしか考えていません!
なんて、言えやしない。
所沢に近ずくにつれ、増えていく老いも若きもライオンズの獅子たち。電車は進む。気高く進んでく。勝利はそこに。
所沢の竹下通りとまことしやかに囁かれているプロペ通り。ここでは気の早い松崎しげるの雄叫びが雨のなか元気よく轟いていた。
そして三歩進めば一人の割合で遭遇するユニフォーム着用の人。
デーゲームにそなえ、所沢でご飯をかっこんでから球場に向かう! という人もいれば、チケットをゲットすることができず、パブリックビューイングに思いの丈をぶつける人。
そして、とにかく負けなければ優勝セールだ! とセールのことしか考えていないこの私……違う違うそうじゃない。
この日に所沢にでたのは台風のせいだ。
もはや聖剣でもないかぎりその勢いを止めることができない台風24号が、日本列島を蹂躙しようとしていたから。
日曜は関東地方も外出など自殺行為と言われているくらいなので、必要なものは今日買わないと買えないということなのだ。
「しかし、しげるが聞けたのプロペ通りだけだったな」
元ダイエーだったイオンは仕方ないにしても、西武百貨店所沢店においてもしげるは息を潜めていた。
優勝へのカウントダウン。勝利はそこに、なのだが、まだ勝利したわけではない。
売り場の人間は青いユニフォームを羽織ってはいるが、〈ライオンズGoGoセール〉という皮をかぶって、その時をじっと待っているのである。
それは西武百貨店に足を踏み入れる客も同じで、パブリックビューイングを大音量で行っている1階正面玄関入り口で樽に入った日本酒が割られ、振る舞い酒の館内放送が流れる瞬間を、今は何も言わずに陳列商品を眺めながら待っている(個人の感想です)。
店員と客の待ちつ待たれずの空気のなか、試合は進んで行く。
場所を変え、西武が運営するもうひとつの商業施設、グランエミオに向かう。
ここにはスターバックスコーヒーがあるので休憩と洒落込もうとしたわけだ。
しかし、
スタバの正面がパブリックビューイング会場になっており、大変な人だかり。
座れはしたものの、真剣にライオンズを応援するファンたちの一喜一憂がライブに聞こえてくるのでお茶の会話が試合の行方にもなってしまう。
さらに、そのときのファンの拍手やら悲鳴やら叫びやらで、どうやら本日のライオンズの雲行きは怪しいことが知れた。
そうか、今日の優勝はないか。
残念なことだが、席を立ち、試合半ばで家路につくことにした。
ところで、
ミラクル元年をミラクル顔面と思っていた私だが。
ミラクルガッツメン
ではないかと思っていた時期もあった。
ミラクル元年、もいまいち意味がわからないから、ミラクルガッツメン奇跡を呼んで〜♪のほうがしっくりこないだろうか。ガッツのある男たち。かっこいいじゃないか。
作詞の人に掛け合いたいが、もう亡くなっているからどうしようもない。
ミラクル問題に想いを馳せつつ帰りの電車に乗り込む。外は止む気配のない雨で、あと1〜2時間もすれば球場から押し寄せるファンで所沢は賑やかになるだろう。電車も混むだろう。
残念でならない1日であった。
優勝の持ち越し。
しかしながら、これでよかったのかもしれない。とふと思う。
「今日優勝したら、予告通りなら明日からセールでしょ? 明日って言ったら台風直撃で外出られないじゃん。電車だって動かないかもじゃん、セール行けないじゃん。だったら明日優勝してもらって、月曜からセールはじめて日曜にセール終了したほうが西武百貨店的にも売り上げ伸びるでしょ。客だって台風のなか目の色変えてセールセールとか取り乱したくないし」
純真な西武ライオンズ球団のファンに聞かれたら体育館の裏に連行されても文句は言えないことをさらりと言ってのける。
これが、セールのことしか考えていない人間の正体か。
最後にもうひとつ、言っておかなくてはならないことがある。
ライオンズの応援歌は松崎しげるの〈地平を駆ける獅子を見た〉と男性合唱団の〈うぃーあざラーイオンズ、おおおライオーンズ♪〉というタイトル知らず、があると前回述べたが、実はもうひとつあることに気づいたが、やはりタイトルは知らない。これはメインボーカルがいて、合唱団がかぶさる感じのスローテンポな応援歌。
〈かっとばせ〜ライオン〜燃えろ〜ライオン〜せいぶ〜ライオンズ〜♪〉
ライオンズ優勝の際にはほぼほぼこの3曲がエンドレスで流れる。
心ゆくまで洗脳されてカラオケで歌うのもいいだろう。
ライオンズセールがはじまることを楽しみに待つことにしよう。
※次回、らかん、レオとライナに拉致られる。
書いた人:甘らかん(アンチスポーツ)
先日、〈ライオンズセール〉というタイトルで一筆たしなめたところ、かなりの閲覧数をいただきました(当人比)
ミラクル顔面奇跡を呼んで〜♪
という言葉は〈地平を駆ける獅子を見た〉には含まれていませんでした。類似商品もありません。あるのはただ、
ミラクル元年奇跡を呼んで〜♪
でした。
さて、今回の話は2018年9月29日(土)の出来事。
マジック1となった西武ライオンズが、地元所沢での10年ぶりという胴上げをかけての大一番に挑み、結果ソフトバンクに負けてしまって、残念ながら優勝は持ち越しになってしまった日。
その日、私はたまたま所沢に降り立っていました。
台風が来る前に買い物を済ませてしまおうという魂胆で。
決して本拠地で優勝の瞬間を味わって、その場で優勝セールがはじまったら美味しいな、などという。純粋な西武ファンが聞いたら怒りの赤い弓が発射されるような思想のもとで行動していたわけではない。
そんなことは、電車に乗った時点で言えやしない。
「しまった! 迂闊にも西武球場前行き直通電車に乗ってしまった!」
落ち着け。おとなしく座っていればバレやしない。
野球のやの字も知らず、ミラクル元年をミラクル顔面だと思い込んでいた。そのうえ当日にはじまったらいいな、という優勝セール目当ての罰当たりが所沢に向かっているなどと。
ライオンズのユニホームを身にまとい、地平を駆ける獅子をその目に焼き付けんとする生粋のライオンズファンの前で、
セールのことしか考えていません!
なんて、言えやしない。
所沢に近ずくにつれ、増えていく老いも若きもライオンズの獅子たち。電車は進む。気高く進んでく。勝利はそこに。
所沢の竹下通りとまことしやかに囁かれているプロペ通り。ここでは気の早い松崎しげるの雄叫びが雨のなか元気よく轟いていた。
そして三歩進めば一人の割合で遭遇するユニフォーム着用の人。
デーゲームにそなえ、所沢でご飯をかっこんでから球場に向かう! という人もいれば、チケットをゲットすることができず、パブリックビューイングに思いの丈をぶつける人。
そして、とにかく負けなければ優勝セールだ! とセールのことしか考えていないこの私……違う違うそうじゃない。
この日に所沢にでたのは台風のせいだ。
もはや聖剣でもないかぎりその勢いを止めることができない台風24号が、日本列島を蹂躙しようとしていたから。
日曜は関東地方も外出など自殺行為と言われているくらいなので、必要なものは今日買わないと買えないということなのだ。
「しかし、しげるが聞けたのプロペ通りだけだったな」
元ダイエーだったイオンは仕方ないにしても、西武百貨店所沢店においてもしげるは息を潜めていた。
優勝へのカウントダウン。勝利はそこに、なのだが、まだ勝利したわけではない。
売り場の人間は青いユニフォームを羽織ってはいるが、〈ライオンズGoGoセール〉という皮をかぶって、その時をじっと待っているのである。
それは西武百貨店に足を踏み入れる客も同じで、パブリックビューイングを大音量で行っている1階正面玄関入り口で樽に入った日本酒が割られ、振る舞い酒の館内放送が流れる瞬間を、今は何も言わずに陳列商品を眺めながら待っている(個人の感想です)。
店員と客の待ちつ待たれずの空気のなか、試合は進んで行く。
場所を変え、西武が運営するもうひとつの商業施設、グランエミオに向かう。
ここにはスターバックスコーヒーがあるので休憩と洒落込もうとしたわけだ。
しかし、
スタバの正面がパブリックビューイング会場になっており、大変な人だかり。
座れはしたものの、真剣にライオンズを応援するファンたちの一喜一憂がライブに聞こえてくるのでお茶の会話が試合の行方にもなってしまう。
さらに、そのときのファンの拍手やら悲鳴やら叫びやらで、どうやら本日のライオンズの雲行きは怪しいことが知れた。
そうか、今日の優勝はないか。
残念なことだが、席を立ち、試合半ばで家路につくことにした。
ところで、
ミラクル元年をミラクル顔面と思っていた私だが。
ミラクルガッツメン
ではないかと思っていた時期もあった。
ミラクル元年、もいまいち意味がわからないから、ミラクルガッツメン奇跡を呼んで〜♪のほうがしっくりこないだろうか。ガッツのある男たち。かっこいいじゃないか。
作詞の人に掛け合いたいが、もう亡くなっているからどうしようもない。
ミラクル問題に想いを馳せつつ帰りの電車に乗り込む。外は止む気配のない雨で、あと1〜2時間もすれば球場から押し寄せるファンで所沢は賑やかになるだろう。電車も混むだろう。
残念でならない1日であった。
優勝の持ち越し。
しかしながら、これでよかったのかもしれない。とふと思う。
「今日優勝したら、予告通りなら明日からセールでしょ? 明日って言ったら台風直撃で外出られないじゃん。電車だって動かないかもじゃん、セール行けないじゃん。だったら明日優勝してもらって、月曜からセールはじめて日曜にセール終了したほうが西武百貨店的にも売り上げ伸びるでしょ。客だって台風のなか目の色変えてセールセールとか取り乱したくないし」
純真な西武ライオンズ球団のファンに聞かれたら体育館の裏に連行されても文句は言えないことをさらりと言ってのける。
これが、セールのことしか考えていない人間の正体か。
最後にもうひとつ、言っておかなくてはならないことがある。
ライオンズの応援歌は松崎しげるの〈地平を駆ける獅子を見た〉と男性合唱団の〈うぃーあざラーイオンズ、おおおライオーンズ♪〉というタイトル知らず、があると前回述べたが、実はもうひとつあることに気づいたが、やはりタイトルは知らない。これはメインボーカルがいて、合唱団がかぶさる感じのスローテンポな応援歌。
〈かっとばせ〜ライオン〜燃えろ〜ライオン〜せいぶ〜ライオンズ〜♪〉
ライオンズ優勝の際にはほぼほぼこの3曲がエンドレスで流れる。
心ゆくまで洗脳されてカラオケで歌うのもいいだろう。
ライオンズセールがはじまることを楽しみに待つことにしよう。
※次回、らかん、レオとライナに拉致られる。