第2話

文字数 471文字

 現実の大学生活は主にバイトに費やされた。キバヤシが得た奨学金はあまり条件の良いものではなかったため、生活費の大半をアルバイトで稼ぐ必要があったためだ。またキバヤシの大学は日本で最も勉強する大学を標榜し、単位数も他の大学と比べて多かったため、朝の9時から5時まで授業をする日が大半であった。楽しみにしていたサークル活動などをする余裕はなく、授業が終わると駅前の居酒屋で働き、自分と同年代の若者たちの注文を取り、皿を洗った。
 生活は5畳一間のアパートと大学と居酒屋のトライアングルで過ぎていったが、キバヤシはそんな日々の生活にも喜びを見出すことのできる青年だった。「今日のまかないのカレー美味かった」、「かわいい女の子のグループを接客できた」、時にはバイト帰りの夏の夜気の清々しさにさえ喜びを感じた。そんな時、キバヤシは心の中で「ファンタジスタ・・・」とつぶやいた。言葉の意味はよく分かっていなかったが、何となく喜びや素晴らしさを表す言葉のような気がしたからだ。いつしかキバヤシは自分のことを秘かに「ファンタジスタキバヤシ」と呼ぶようになった。
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