十九時

文字数 443文字

 雨はまだ止まない。
 淡いヒスイ色の傘の皮を無造作に捻じりながら、走るバスの外を見た。
その後、年代もののディスコを奏でるラジオに耳を傾ける。
 今日も誰かさんのせいで程よく疲れた。放課後の星ちゃんとの話題はすこし尾を引いたけれど、久々に息抜きができたような。
 明日は世界史が自習。早いところ片づけて、空想にでもふけって、好き者の私をどうにかあやさないと。週末の土曜は、星ちゃんとお出かけ。たまには、私からプチガトーでもねだってみるのも悪くない。
 でも、自分を甘やかしてばかりじゃ、いつか苦い日がやってくる。耐えられるわけがないから、適度に引き締めて、地獄を未然に防ぐのがいい。今夜こそ、十五分でもギリシアの文化を復習して──……
 まどろむ通学バスのなか、短い夢を見た。降り続いた雨がようやく止んで、虹の橋が架かる、とても幼い夢だった。学校が遊園地になったら授業している場合じゃないだろと思うけれど、夢中の私は、その絶景に魅了されている。

 明日も虹を滑り落ちるように、流れるように生きよう。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み