第1話 Holiday Dunny 2009 by TADO

文字数 2,563文字

12月某日、ぎゃらりい熊四手。
【本日のお品書き】

kidrobot Holiday Dunny 2009 by TADO より

Krunk-A-Claus Dunny(レギュラー)

T.W.O.C. the Elf(チェイス)

ふんふんふん~

Christmas time is here again♪

Christmas time is here again♪

どうどう? 今日のダニー!
わあ、一気にクリスマスって感じ!
キッドロボットが2009年にリリースした、クリスマス限定3インチダニーよ!
Kidrobot(キッドロボット)は、ポール・バドニッツによって2002年に設立された、ビニールアートトイを製造、販売する会社。

アメリカで最も早くデザイナーズアートトイを生み出した企業のひとつ。

同社のダニー・シリーズは、2020年にメトロポリタン美術館ともコラボを果たした。


Dunny(ダニー)は、共通のウサギ型の素体にアーティストが独自のデザインを施したビニール製のフィギュア。

通常、3インチのブラインドボックス入りシリーズが毎年発売される。

ふさふさしたピンクのおヒゲが、かわいいわね!
じつはこのピンクのヒゲ、とることができるの。
じゃーん!!

ヒゲをとってみました!

あ、ヒゲをとったら、笑顔でいっぱいなのね。

目もきらきらしてるし、クリスマスのうれしさが伝わってくるわ。

そうそう、ヒゲをつければ、とたんに不機嫌そうな表情でしょ?
でも、子供っぽいツルツル顔を一度見たら、ムッとしたヒゲもじゃ顔も、無理に真面目ぶって笑いたいのをこらえている表情に見えてきちゃうわね。
言えてる!
デザインしたのは、どんなアーティストなの?
このサンタ風ダニーは、イギリスのデザイン・デュオであるTADOがデザインしたものなの!
へー、二人組で活動するアーティストさんなんだね!?
そう、TADOはMike(マイク)とKatie(ケイティ)の二人組なの。


2002年から10年以上にわたって一緒に活動しているわね。

絵を描くのも、クリックするのも、糊付けするのも、二人のアートワークはすべて完全な共同作業で生み出されているそうよ。

なるほど、そのデザイン・デュオTADOが2009年にキッドロボット社とコラボした作品が、今回のダニーなのね。

左側がレギュラーの「Krunk-A-Claus Dunny」

右側がチェイスの「T.W.O.C. the Elf」よ。

え、Santa Claus(サンタ・クロース)じゃなくて、Krunk-A-Claus(クランカクロース)なの?
Krunk(クランク)というのは、英語でCrunkとも書くんだけど、Crazy(狂った、イカれた)とDrunk(酔っぱらった、ハイになった)が合わさったスラングらしいのよ。

ヒップホップの歌詞によく出てくるわ。

てことは、このピンクのおヒゲのダニーは、「酔っ払ってイカれたサンタクロース」ってこと……?

こんなに愛らしい見た目で、ちょっとダークな世界観なのね。

ほら見て、サンタ風の帽子にドクロマークが描かれているじゃない?

TADOはこういう、ダークで愛らしい作風が得意なのよね。

言われてみれば、サンタ風の衣装なのに、赤でなくて黒いわね!
黒いサンタと言えば、中村光さんの漫画『ブラックナイトパレード』が面白いわよ。

去年、実写映画化されたわ。

ああ、『聖☆おにいさん』の作者さんね。
右側の「T.W.O.C. the Elf」と名付けられたダニーは、リリース当時、シークレットアイテムだったの。
混入率は明かされてないけど、おそらく、25個入りカートンに5個ぐらいだと思うわ。
ああ、ダニーはカプセルトイと同じで、買う時に中身が見えないブラインドボックス仕様だったわね。
そうそう、レギュラーアイテムに対して、当たる確率が低いレアなアイテムのことを、コレクター用語で「チェイス」と呼ぶのよね。

「追いかける、追跡する」という意味のchaseからきていると思うわ。

ねえ、「T.W.O.C. the Elf」「T.W.O.C.」ってどんな意味なの?

三角にとがった耳と牙が目立つし、怒ったような表情よね。

twocは、"taken without owner's consent"の頭文字をとったもので、「持ち主に無断で使う」ことを意味する俗語らしいわ。

う、じゃあ「泥棒エルフ」ってこと?

クリスマスを楽しむ人たちにいたずらでも仕掛けようと、狙っているのかしら……
付属のアクセサリーはアイスクリームとエッグノッグのボトル、それからバール!

面白いから、バールを持たせてみたわ。

バールを持ったエルフだなんて、なかなか攻撃的だと思うわ……
もともと、イギリスの民話に出てくるエルフは、小さくいたずら好きで、自然界の精霊のような存在だったらしいの。
へー、現代のファンタジー作品に登場する美男美女のエルフとは、まったく違うのね。

エルフは長命で美しい種族というイメージは、『指輪物語』由来なのかしら?

イギリスやアイルランド、アメリカ、カナダでは、とがった耳で長い鼻、とがった帽子をかぶった、小さくてすばしっこい、緑色の服を着たエルフたちがサンタのお手伝いとして登場するそうなの。
とがった耳に緑色の衣装って、まさにこのエルフダニーの姿ね!

この子、サンタの助っ人だったんだ!?

2003年公開のアメリカのクリスマス・ファンタジー映画"Elf"というのがあるわよ。

邦題は『エルフ ~サンタの国からやってきた~』

なるほどー、サンタを手伝う役割の小さな妖精さんの姿は、英語圏のキッズにとって馴染みのある「エルフ」のイメージなのかもしれないわね。
グリム童話に『こびと靴屋』というお話があるでしょ?

あれ、英語だと"The Elves and The Shoemaker"なの。

ああ、貧しい靴職人をこっそり助けてくれる「こびと」たちというのは、「エルフ」だったのね!
TADOはイギリスのアーティストだからね、サンタクロースとお助け妖精というよくある組み合わせにひとひねり加えて、「酔っぱらってイカれたサンタと泥棒エルフ」のコンビに仕立て上げたんだと思うわ!
泥酔したサンタとバールを持ったエルフが襲ってきたら、悪夢のクリスマスなんだけど……
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登場人物紹介

七里香(ななりか)


デザイナーズトイを集めている。

アート全般に興味があるが、特にロウブロウアートが好き。

「ぎゃらりい熊四手」のオーナーの孫。

杏子(あんず)


ファイヤーキングを中心に1930~1980年代のアメリカン・ヴィンテージグラスウェアを集めている。

「ぎゃらりい熊四手」のカフェ担当。

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