第2話

文字数 756文字

 男たちはこぞって挑戦しました。しかし彼らは、九十八個はおろか九十個すら見つけられませんでした。
 何人目の挑戦者なのかを数えるのも忘れた頃、ある男が意気揚々と王宮にやってきました。よく日に焼けた、背の高い男で、各所の筋肉は常人の二倍ありました。
 男は名をストレングスといいました。見た目通り、力の強さと体力の多さを自慢としており、宝石捜索の疲れなど微塵(みじん)も感じていない風に見えました。
 彼は白い歯を見せ、好青年然とした笑顔を作りました。
「見つけ出しました! 百個のエメラルドです!」
 爽やかな風貌と恵まれた体格に期待していただけに、王様は強い失望を味わいました。誠実そうに見えて、こいつはずるをしていた。娘を与えるには値しない男のずるを、王様は暴くことにしました。
「でかしたぞ、ストレングス。体力自慢のお前でも、百個(・・)のエメラルドを探すのは骨が折れただろう」
「ええ、お褒めいただき光栄です。それでは、約束通り姫様を私に……」
 「百個」と言った時、ストレングスの目が逸らされたのを王様は見逃しませんでした。
百個(・・)のエメラルドが本物かどうか検じてからだ。お前のように誠実な男を疑っているわけではないのだ。体裁というものがあるからな。許せ」
 王様は家来に命じ、百個のエメラルドを調べさせました。九十八個は本物でしたが、案の定二個は偽物でした。その二個もエメラルドではあったのですが、王様のエメラルドではありませんでした。
 偽物のエメラルドは、形がいびつで、端に金の欠片がついていました。ストレングスが自身の装飾品からもぎ取ったものだとすぐに分かりました。
「嘘つきめ! お前に姫はやれん! 出ていけ!」
 ストレングスは王様の剣幕に肩をすぼめ、こそこそと出ていきました。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み