第6話

文字数 839文字

 国全体が二人を祝福しました。姫を(めと)りたがっていた男たちも、相手がオネストだと分かると嫉妬の炎を消しました。
 盛大な宴が開かれ、王宮中に幸福が満ちました。
 祝いの間は色鮮やかな花々で飾られました。
 料理人は腕を奮い、最高の料理の提供に力を尽くします。
 肉料理や魚料理といったメインディッシュはもちろん、美味しそうなドレッシングがかかったサラダや舌触り滑らかなスープ、果物の盛り合わせなどが並びました。
 ワインは良質なブドウから作られたもののみが選ばれ、芳醇な香りを鼻孔へと運びます。
 王様たちの眼前では、きらびやかな衣装を身につけた女性たちが舞い踊っています。
 誰もが笑い、隣の者と肩を組み、手を取り合いました。
 この世の楽園が、ここにありました。
 花婿探しを始めてから難しい顔ばかりしていた王様も、今日は顔が緩みきっています。
 王様は、場の雰囲気と一仕事終えた達成感に促され、つい飲みすぎてしまいました。アルコールで酔った体を家来に預け、彼は祝いの場をあとにしました。
 周りの者は心配そうに様子を伺っていましたが、王様が片手を挙げて大丈夫だと示すと、どんちゃん騒ぎを再開しました。

 明くる朝。いつもであれば自力で起きる王様が、八時を過ぎても顔を出しませんでした。
「寝坊かしら。相当お酒を飲んでいらしたから……」
「私が行って見てきますわ」
 女中の一人が厨房を離れ、王様の部屋に向かいます。王様の顔を覗き込むと、彼女は失神しそうになりました。
「ヒィーッ」
 悲鳴を聞きつけて、ばらばらと人が集まってきました。最後に娘夫婦が入ってくると、女中は扉を閉めました。
 寝台に体を横たえた王様は、眠っていました(・・・・・・・)。厳密に言うと、絶命し、永遠の眠りについていました。
 王様の体からは、魂だけでなく二つのエメラルドも抜き取られていました。
 「スライの呪いだ」と誰もが考えましたが、口には出さず、黙って王様の魂に祈りを捧げました。
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