第3話

文字数 840文字

 エメラルドを百個見つけたという二人目の男が現れました。
 彼はビューティと名乗りました。ビューティは名の通り美しい男でした。金の巻き毛に優しく整った顔立ち、高貴なオーラ。女性たちは彼を王子様と呼ぶでしょう。
 しかし、彼の言葉の端々(はしばし)には高慢さが滲んでいました。内面の美しさを重視している王様は、この男が気に入りません。
 ビューティのプライドをへし折ってやろうと、王様はねちねち責め立てました。
「百個のエメラルドを集めたのか。お前はただの美男子(・・・・・・)にしか見えないが、自力で百個を探し出したのか?」
「もちろんですとも! 美しさだけでなく頭脳も天から与えられた私ですから。一人で百個のエメラルドを見つけました。私にかかれば造作もないことです。私の頭脳明晰なことといったら……」
「よい、よい。お前の知能の高いことは理解できた」
 長くなりそうだったので、王様は中断させました。
「お前が知能を駆使して集めた百個、調べさせてもらうぞ。高い知能(・・・・)で偽物を作られていたらたまらんからな」

 家来が調べると、九十八個が本物、二個が偽物でした。偽物は見た目こそ本物そっくりでしたが、明らかに軽かったのです。
 ビューティを問い詰めると、知人に頼んで偽物を作らせたことを白状しました。百個のエメラルドを見つけられなかった場合、自分のプライドが傷つけられると思ったビューティは、あらかじめ偽物を用意していたのでした。
「高い知能を振り絞った結果がこれか! 偽物のエメラルドとは古典的な手を……。お前は大馬鹿者だ! 何がプライドだ! お前の発想自体、プライドを投げ捨てているものだということが分からんのか! 本当にプライドの高い人間は偽の宝石を作ったりせんぞ!」
 ビューティは、王様の罵倒に傷つけられ、倒れてしまいました。家来二人が彼の四肢を持ち、外へ運び出します。
 ビューティとの会話はそう長くありませんでしたが、王様はどっと疲れてしまいました。
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