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文字数 1,407文字

 まさか、何処かに潜入しろとでも。
待てよこの人、唯のお巡りさんだよな。
本当は公安とか言う所のエージェントで、
お巡りさんは世を欺く借りの姿とか?!
テレビの見過ぎか?!

「お前さん、いや佐藤君。探偵やらないか?」

 へっ?何ですと?
やっぱテレビの観過ぎ?小説の読み過ぎ?
警察官は夜勤の暇な時、小説や雑誌を良く見ると聞くけど。
えっ?この人やばい人なの?

「今から探偵学校にでも通えってんですか?
嫌です、一応手応えのあった会社があるので。
内定貰います。給料安いけど仕事は簡単だと思うので。普通のサラリーマンになります、
はい」

と確りと断りを入れて。
俺はステーキを食べながらビールを飲んだ。
 すると斎藤さん不愉快そうな顔をしながら、

「俺の計画はこうだ」

と勝手に話を続けた。

「俺は来年定年退職だが。嘱託で65まで警察に居られる。そうなると本署勤務となる。
楽な仕事で、現場に出なくていい仕事だ。
本署には俺の知り合いの刑事部長がいるんだ。
そいつは後輩でな、交番勤務の時ミスをホローしてやって恩を売ってある。
あいつは俺に刑事にならないかと、手を回してくれたんだが。娘がまだ小さくてな。嫁がやめてと言うので。安全な仕事を選んじまった。
なのに、その嫁も娘も出て行っちまった」

「離婚したんですか?」

「バーカ別居だ。嫁は苦労は掛けたが。
もうしょうがないかなと思っている。
だが、娘は取り戻したい。もう成人しているが
格好良いところを見せたいじゃないか。
結婚式にも、出たいしな」

「結婚なさるんですか?」

「いやまだだ。仮定の話しだ、仮定の。
お前は、先を急ぎ過ぎる」

「はぁ、ところで斎藤さんが警察に残るのと。
俺が探偵やるのと、どう関係するんです?」

 斎藤さんは顔を近づけてきて。
俺がこの話に食い付いたと思ったのだろう。
怖い顔をして、

「刑事部長から情報を仕入れて、事件を解決するんだ。お前がな。そして、俺が逮捕する。
これで二人の名前が、売れるって寸法だ」

と体を椅子に戻すと。ご満悦にサラダを頬張りだした。バリバリと良い音がした。
斎藤さんは嬉しそうに食べていた。
 俺は、ちょっとだけ考えたが。
う〜ん、無理だなと思った。

 俺は、凶悪犯罪に立ち向かうタイプの男ではない。しかも容疑者リストに上がって。
そうか!警察署内をうろつけるか・・・。
考えてるな。
ダメダメ!この人の口車にのっては。
俺は平凡な普通の生活を手に入れるのだ。
その為に大学に行ったんだから!

「お断りします。ご馳走様でした。帰ります」

 斎藤さんは気が変わっったら電話しろや、と交番に帰って行った。
俺は道々考えた。もし斎藤さんの話に乗れば。
史上初の探偵が事件を解決する事になる。
いや斎藤さんがか。
 う〜ん、容疑者探偵?
有り得ない!なんやそれ?
俺は笑いながら家へと帰った。

 それから俺は、交番には行かなくなり。
まともな、コンピューター関係の会社に就職した。全てが妄想だった様な、悪夢だった様な。
斎藤さんの冗談だった様な気がしてきていた。
 コンピューター関係と言っても、紙や部品を売る仕事で。事務から営業納品までやる小さな会社だったが。そこそこ、給料は貰っていたので満足していた。

 だが!まさか!まさか・・・。
その会社で殺人事件が起ころうとは?!
しかも俺が、第一容疑者になろうとは?!
正に青天の霹靂だった・・・。

 やっぱり容疑者顔なんだろうか?俺は。

 終わり。


 平成28年12月初稿
 令状5年3月31日加筆修正。
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