4頁

文字数 853文字

 それから数日後、その店の店長が違法薬物所持で逮捕された。
俺はテレビを観ていて、ひっくり返っりそうになった。それと同時に、解放されたか・・・と喜んだ。勿論容疑者からだ。
 それから2、3日俺は交番には近寄らなかった。何かあれば電話があるだろうと。
兎に角、犯罪や警察とは縁を切ろう
(縁は無いのだが・・・)
と思ってのことだ。

 就活は上手くいかなかった。何社か面接に行ったが。全然、手応えなし不採用の嵐。
 参った、こりゃバイト生活でもする事になるのか?と疲弊していた時。電話が鳴った。
斎藤さんだった、

「事件だ。交番に来いや。コーヒー淹れて待ってるから」

と、ぶっきらぼうに言ってきた。
 まあいいか、暇だし。就活は最悪だし。
気分転換にと思って交番へと向かった。
そこには斎藤さんと、もう一人いた。
斎藤さんは、俺を手招きすると。

「お前さん、腹減ってない?」

と聞いてきた。
 う~ん、確かにそろそろ夕飯前かな。
お袋はパートがあるから、食事は結構遅い。
8時頃になる事もある。親父は仕事で食ったり食わなかったり。
土日でもなければ、一家で食事をする事は無いと言っていい。

「はぁ、何となく」

と適当に答えた。斎藤さんはイラッとした顔をしたが。笑顔を作ると、

「この間の情報ありがとう。君の情報で目撃者ありで、家宅捜索の令状が下りて。ガサ入れして、コンビニの店長捕まったそうだ。
私はその情報提供者として、感謝状と僅かだが、特別ボーナス貰ったんだよ」

 なんですと?!
相勤のお巡りさんも笑っていた。俺は、

「あの〜、ひょっとして俺のあの証言で?」

と言うと。斎藤さん立ち上がって、交番の隅に連れてゆくと。

「そうだ、私が見たという事にした。それで、令状が下りたんだ」

「斎藤さん、やばいですよ。もし間違っていたら」

「大丈夫。警察なんてのはな。そう言う間違いをおかすものだ。お前さんだって、何度も職質受けてるだろう」

 確かに、全て間違いだ。
俺は何もしていない。立ち小便すらしない。
もし、事件現場に俺の尿があったら。完全無欠で、犯罪者にされてしまうからだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み