手乗り猫

文字数 720文字

仕事でPC画面を見ながら、ふっとマウスを掴もうとしたら「ニギャッ!」と言われた。
びっくりしてそちらを見ると、マウスだと思ったら猫だった。もふもふしている訳だ。

「あ、ごめん。」

反射的に謝った。
いやでも、猫?
マウスはどこにいったんだ?
だいたい何だこの猫は?
猫にしたって小さすぎやしないか?
マウスと間違うぐらいの大きさしかない。
なのに「猫」ってわかるんだから、猫の造形というのは完璧なのだなと思った。

猫はマウスを探す私の手に飛びかかって遊んでいる。
仕方なく撫でてやると、ゴロにゃんと頭を擦りつけてくる。
可愛い。
ミニチュア猫だが、やはり猫は可愛い。

「……いやでも、マウスは?それにこの猫、何なんだ??」

すっぽりと手の中に収まるミニチュア猫。
子猫という訳じゃない。
本当に猫が縮小されただけのように見える。

「ネズミの事は知りませんが、私は手乗り猫です。」

「手乗り猫?」

「本日2月22日は猫の日ですので、猫を飼いたいのに踏ん切りのつかない優柔不断な人の元に現れるお試し猫です。」

そう言った手乗り猫は、するんと手の間を抜け出すとキーボードの上を歩き出す。

「あーーっ!!」

「何事もお試しです。」

その後も自由奔放で、ツンツンで冷たい甘えん坊を手に乗せて過ごした。
さんざん振り回され、もふもふ感を味わい、寝ている無防備な姿に癒やされたのだが、仕事が終わる頃にはふっといなくなってしまい、代わりにあんなに探しても見つからなかったマウスがデスクの上に転がっていた。

「……引っ越そう。明日にも引っ越そう。」

確かに手乗りサイズではあったが、手の上で転がされたのは、むしろこちらなのかもしれない。


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(手乗り猫は2月22日限定で現れます)

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