雨に濡れた犬の匂い

文字数 458文字

雨が降ると思い出す。

実家の犬の雨に濡れた匂い。

はっきり言って臭い。
どんな匂いかと聞かれると困るが臭い。
とにかく臭い。
他に例えようのない独特な臭い。
濡れた犬の匂いは濡れた犬の匂いだからだ。

しかも奴らは何故か、拭いたりしてこちらが乾かそうとする事から逃げる。
ドライヤーなんぞ持ち出した日には、必死の抵抗を受けたりする。
物凄く非難され、絶望され、信用を失い、こちらが悪い事をしているようで納得いかない。

何でだ。
こちらは寒いだろう等、色々気を使っているのに納得いかない。
しかも本当に臭い。

臭い。
非常に臭い。
例えようのない妙な臭い。

だがこれ、変な中毒性がある。

臭いのにまた嗅ぎたくなる。
雨の日の散歩を思うとうんざりするのに、妙にふと思い出して嗅ぎたくなる。

犬の濡れた匂い。

夕方のチャイムの音。
窓から雨を見ながら、今日は素直に散歩に行っただろうかと思い出す。


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【AI朗読データあります。】
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