何度でも生まれ変わる

文字数 1,126文字

 幼い頃、世界は希望に満ち溢れていた。
目に映る全てが輝いていた。
世界の中心がどこにあるかなんて考えた事もなかった。

 子供の頃、世界は滅んだ。
日々に絶望が溢れ、幼い日に見ていた希望はすべて幻なのだと知った。
敷かれたレールから外れたら終わりだ。
そしてより良いレールに乗る為に日々追われる。
世界はいつだって自分でないどこか遠くを中心にして動いていて、私はいつだってその隅に追いやられ、なんの為に生きているのだろうと思った。

 大人になって、地獄に落ちた。
世界の隅に追いやられた人々は、世界の中心にいられなくとも少しでも自分の欲望を満たそうと、平気な顔で他人を騙し奪い傷つけた。そしてそれを「駆け引き」や「利口な生き方」と言う言葉で正当化していた。それに引っかかれば「〇〇の負け犬」と後ろ指さされ見下され蔑まれる。
どんぐりの背比べだ。なのに相手をズタズタに傷つけてでも、少しでも自分をよく見せようと手当たりしだいに奪う。奪って満足するかといえば、更に更にと繰り返す。そして自分は奪われたくないので徒党を組む。寄り集まって我が物顔でひそひそクスクス、奪いとった相手を「負け犬」と見下して笑う。
どのみち世界の中心でもない隅っこで、擬似世界の中心を作って偽物のカーストの高みでせせら笑っている。
世界の存在の意味のなさに何も感じなくなった。
おそらくすべてを諦めたのだ。

 人生を後ろから数えた方が楽になっただろう頃、ふと気づいた。
すべてを諦めてから見えてきたものがあった。

 ああ、そうか。
私は何にでもなれる。
何でもできる。

 これはこうでなければならないなんて決まりはただの思い込みだ。幸せとはこれだと言うのも思い込みだ。

自分以外の誰かが言ったただの言葉だ。

 そしてそれに翻弄されて、何もできないと決めていたのは自分だ。なりたい形を諦めていたのは自分だ。
誰かに自分の全てを決めさせていたのは、他の誰でもなく自分自身なのだ。

 こうなんて決まりはない。
強いて言うなら、こうだと自分が思ったものになれば、それが正解なのだ。自分以外の人間がそれをどう言おうが、それはその人の世界の事なのだ。

 ここまで来るのに随分と遠回りしたものだ。
でも、私は不器用だから、多分そこまでしなければ気付なかったのだ。

人それぞれ、着地点は違うだろう。
答えも違うだろう。
ただその答えは自分で探し出すしかない。

自分自身を自分だと決める答えを。

 人の答えを借りてもそれは正解じゃない。
たとえ傍から見れば愚かしくても、それが自分の答えならそれが全てなのだ。誰に何を言われたって気にする必要はない。

人は皆、違うのだから。
人それぞれ答えは違うのだ。

 それでも迷いは生まれる。

でも、大丈夫。
私達は何度でも生まれ変わる。
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