6頁、結婚、そして裏切り

文字数 1,107文字

 それから私達の付き合いは始まった。
 最初は友達として、彼の良く行く居酒屋などに連れて行かれた。定食屋もあった。私には珍しく楽しかった。
 日曜にはデートの如く、色んな場所に連れて行ってもらった。
段々と私は、彼の好む大人しい服に変わり、化粧も薄くなっていった。
 彼がある日、私に言った。

「結婚を前提に、付き合って下さい」

と頭を下げて、手を差し出した。
私は嬉しいのに、ちょっと考えたフリをして、

「しょうがないなぁ〜」

と手を握った。彼は早く返事をしろ、と言って怒ったふをした。
二人は既に、お互いの事を大事に思い、愛し合っていたのを、知っていたからだ。
 二人の気持ちは高まり。遂に結婚を話し始めた。だが、問題が1つあった。
それは、私が一人娘という事だ。
父は入婿を望んでいた。お見合すら考えていた程だ。

 だが彼は、俺は次男坊だ問題無いよ、と父に私を下さいと頭を下げにやって来た。
 私は心配した。しがないサラリーマンの彼を見て、案の定父は渋い顔をした。
だが母に説得されて、父の会社に入る事を条件に許してくれた。
 私のお腹に彼の子供がいることも、父を説得する1つの要因ではあったのだが。

 そして、今日を迎えた。
私は豪華な結婚式場で、ウエディングドレスに身を包んでいた。幸せの絶頂だった。
 私はこれも1つの儀式だなと、笑いながら父と母に挨拶に向う為。ドレスを引き摺り、父と母のいる控室へと廊下を歩いていた。

 すると、窓から見える駐車場の一角に彼を見付けた。私は、あっ!と喜びで彼を見た。
 だが、二人の男と笑いながらに話す彼を見て、身体が固まってしまった。
 彼が、まるで10年来の友達と話しているかのように、楽しげに話しているのは・・・。
あの日、私を犯そうとした男達だったからだ。
 見間違えようもない。
パンチパーマの様な、ボサボサの長髪と短い髪に狸の様な顔で、目の細い男。

 最初は何かのトラブルだろうか?と思ったが。罪は彼らの方にある。警察を呼ばれて困るのは彼らだ。脅される憶えもない。
 私は彼らの話が気になり、扉を見付け裾を手でたくし上げると外に出て。彼らの傍の立ち植木の影に隠れて、近寄った。
彼らは私に気付かず、楽しそうに話していた。

「兄貴〜、上手くやりましたね〜。頼みますよ〜、これからも」

「あはは、まさか、ここまで上手くゆくとはな
金を搾り取ってやろうと考えてたのに。
本気になりやがって。結婚だよ!
これで俺は、次期社長だ。あはは、お前らも金には不自由させないぜ」

「あはは、悪だなぁ〜、兄貴は」

 彼らは尚も話を続けていたが。
私の目の前は真っ暗になった。気を失いそうになったが。大きく息を吸って考えた。
 私の中に悪魔がやって来た。
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