第1話

文字数 633文字

『ある地方で、ひどい日照りが続いていた。
そこで、その地方にある教会では、雨乞いのための特別祈祷会をもつこととなった。
祈祷会当日、教会に集まった信者たちの中に、ひとり、傘をもってきたおばあさんがいた。
他の信者たちは変に思っておばあさんに尋ねた。
「なぜ、こんなカンカン照りなのに傘など持ってきたのですか?」
すると、そのおばあさんは答えた。
「私たちは雨をふらせて下さいと祈るために集まったのでしょう? あなたがたこそ傘の準備がなくて、雨の中をどうやって家に帰るおつもりですか?」』

これはある教会の集会で牧師が語ったものですが、実は実際にあった話なのだそうです。
その牧師は、雨乞い祈祷会に傘を持ってこなかった人たちを『不信仰』の一言で片付けてしまいましたが、わたしにはそのような単純な問題とは思えないのです。

というのは、もし本当に神を信じていなかったり、祈りはきかれないなどと思っていたのであれば、はじめから雨乞い祈祷会には来ないはずだからです。
では、傘を持ってこなかった人たちは一体何をどう思って祈祷会にやってきたのでしょうか?

ここに、わたしの言おうとしている『陰の正統派』の信仰があります。
この信仰は、これまで本来の正統派の陰にいて注目もされず、それどころか、上述の例話のように「不信仰」とか、あるいは「誤解」「認識不足」などとして切り捨てられ、表面に出てこなかった隠れた信仰なのです。

さて、ではこの問題について、陰の正統派のふたつの特徴を通して説明してまいりましょう。
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