腐ったミカンの方程式 その1

文字数 1,529文字

 20XX年、突然変異したミカンのカビが日本を襲った。これに接触すると、全身がたちまち鮮やかな緑青色に変わってしまう。それだけではなく、人格も変化する。老若男女を問わず、ウンコ座りをしてメンチを切るようになるのだ。家族全員が感染するともう目も当てられない。親子で根性焼きを始めて、「押忍!」などと言い合うのである。
 社会は恐慌状態に陥った。ミカンカビに感染した患者たちは、大人しく隔離されているような性格をしていなかった。彼らは医師の制止を振り切って、病院のガラス窓というガラス窓を叩き割った挙げ句、盗んだバイクで逃走した。そして街角で誰彼かまわず喧嘩を売った。感染は、身体的な接触を介して起こるので、新種のカビが発見されてから一年もたたないうちに、日本の全人口の半分が緑青色をした腐ったミカン人に変わってしまった。
 黄色人種と緑青人種の間で内戦が始まった。戦力としては、黄色人種の方が勝っていた。これは、コワモテの緑青人種が、意外と勝ちにこだわらなかったせいだ。彼らには一種の滅びの美学があり、警官や自衛官に殴打されると、スローモーションっぽく身をよじりながら地面に倒れ、思い入れたっぷりにゴロゴロ転がるのである。だがこれによって体の表面の胞子が周囲に飛び散り、防護服の隙間から侵入して、使命感に燃える官憲や兵士たちが、たちまちやさぐれた緑のヤンキーに変わってしまうのだった。
 いまや形勢は逆転した。街も田舎も目つきの悪い緑青色のヤカラで溢れかえった。彼らはあちこちで車座になって煙草を吸い、シンナー遊びにふけり、ハチマキをして奇妙なダンスを踊った。感染を免れた少数の人々は、ミカン党を名乗って地下に潜った。実際彼らの肌はミカン色に変化していた。奇妙な反作用と言えよう。彼らは鉄の掟で結束した。腐ったミカンどもは、命に代えてでも、この世から排除せねばならない。コードネーム・パンダを名乗る謎の刺客が雇われた。目に隈ができた陰気な中年男だが、測り知れない戦闘能力を秘めているとの噂だった。パンダは特性の肉襦袢を身に纏った。これで腐ったミカン化した大男のプロレスラーに擬態したのだ。「ようようよう」パンダは偽の巨体を揺すりながら、目についたヤンキー集団に近づいた。こめかみに深く剃り込みを入れた腐ったミカンたちは、うさん臭げな目で新参者を見た。「なんだオメエ、"新米"の"センコー"みてえなキラキラ"お目目"をしやがって」パンダは内心しまったと思った。腐ったミカンたちは皆、死んだ魚のような目をしているのだ。幾多の死線をくぐりぬけた暗殺者の虚無的な目も、彼らにしてみればディズニーキャラのようにお茶目に映るらしい。「んだあ?なめんじゃねえぞ」パンダは咄嗟の機転でぐりんぐりんと首を振り、ヤンキーどもをねめつけた。「俺の"目"はなあ、"藤山寛美ゆずり"なんでい!」するとヤンキーどもは一歩後ろに下がり、緑青色の粉を振りまきながらガクガク頭を振った。「おお、"アニキ"、そりゃあ"お見それ"したぜ!」パンダはアブドラ・ザ・ブッチャーに似せた顔の裏で会心の笑みを浮かべた。情報戦の勝利だ。彼は、腐ったミカンたちが、なぜか藤山寛美を異常に崇拝していることを、事前に調べ上げていたのだ。こうしてコードネーム・パンダは腐ったミカンどもの懐にまんまともぐりこんだ。

(続き考えてません。このまま腐らすかも)

(でももし★をくれたら死んでも書き上げます)

(ってホントに★来たあああ!!ありがとうございますうううう。決死の覚悟で続き書けます)
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