第8話:新しい成績分析方法

文字数 2,921文字

 一方、株投資では1989年10月11日に証券会社から電話でソニー株が上昇してるので成り行き全株売りを指示され、その通りにすると9400円で売れ税引き後利益1710万円、口座残高が1790万円となり佐野の資産が9百万円となった。やがて1990年を迎え、1月の模擬試験の結果、弱点の塾生、数学7人、英語7人、科学7人と全く減っていない。

 弱点を克服した人もいるが新たに弱点になった人が出てしまったのだ。何も有効な手を打てず、ゴールを迎えた気がした。そして2月になり25人の不合格者が出た。東大2人、東工大4人、一橋大4人、横国大4人、横市大5人、都立大6人の不合格者だった。これは、まさに、佐野が怖がっていたことが起きてしまった。

 やがて3月に入り私立大学受験となり次々を合格者が出て最終的に108名の合格者となり96%の合格率であり、これだけ見れば、良い結果に見える。しかし国公立にだけに、ついて言えば75%と言う低い結果となる。この結果について、その後、検討会をも持ったが結論が出なかった。弱点あるかないかでなく受験科目ごと10点満点で何点かという表示にして難関校については8点以下が弱点とした。

 1ランク落ちる学校については7以下が弱点とか工夫すべきだと意見が出た。確かに受験校別に点数を出す方法しか対策がないと言う結論に達した。しかし、それを算出するのは大型コンピューターに個々のテストの点数結果を入力しないと人の手だけではできないと言う意見が大勢を占めた。しかしプロの進学塾としては講師の勘でも構わない。

 しかし、そう言う資料を作らないと今回のような事件が起きる可能性があると佐野は講師全員に話し、これができてこそプロの難関校の合格請負人じゃないかと言った。それに対し論点は間違いない、本当は、そうあるべきかも知れないが時給千円で、そこまで要求されたら、たまらないと言われると、佐野は全く反論できなかった。

 そして苦い経験の1989年度のだった。しかし佐野はあきらめずに腹心部下の本田とケイトに、この話をすると、そのチャートグラフの草案を考えてきますと本田が言っれた。そしてケイトも作るべきでしょと賛成した。その後、本田が円形の中心点から8科目なら8つの線を等間隔をあけて中心点から外に向かって直線を引く。次に、その直線を10等分して1から10までの点を打つ。

 そして8教科の個々の実力を数値化して数学が8なら8の所に赤印をつけ国語が7なら7の所、英語が10なら10の所、理科、社会、化学と点数化して、その点を結ぶと完成する。私立大学の場合は受験科目が少ないから3科目で3角形、5科目で5角形、6教科で6角形の形を作って個人の能力判定に使っていけば良いと提案した。

 これをホワイトボードにフリーハンドで本田が書き出すとケイトがパーフェクト、エクセレントと言い佐野が完璧と驚く様に言った。早速、その原案を作り何も書き入れてないグラフをB5用紙に2つ作り次々とコピーして15部、30のグラフを書ける用紙が完成。次の会合の時に、その原案の話しをするとアルバイト大学生が完璧。だれが、これを考えて作ったのと聞いたので本田君だと言い本田が前に出て使い方を詳しく説明した。

 すると驚きの声が巻き起こった。これで行きましょう、これすごい特許ものですとといい、他の進学塾に漏れたら、まずいという者も現れたほど好評だった。1990年3月30日15時過ぎにケイトと本田が来ると佐野が既に来て長方形に20人まで座れるように長机を並べ長椅子を入れた。11時に11人が集まり11時10分に15人が集まり女性が7人、男性8人の顔ぶれだった。

 そして佐野が司会をして自分から自己紹介してソニー株を数回売買して収益は1千万円くらいかなと言った。すると男性から挨拶をおねがしますと言い次々と挨拶した。農家、商店をしながら株投資をして50万円位の投資で旅行代を稼いでると言う中高年が多かった。女性に替わり最初の派手な衣装の化粧の濃い40代と思しき女性が亡き夫から株投資を教えてもらい利益は5千万円程ですが損する事も多いので負けない投資を教えていただきたいと言った。

すると、みな驚いた様な顔をした。その後、亭主の稼ぎだけでは良い暮らしできないので株で10万円位の利益を得てますという人奥様方も多かった。その他、投資信託で着実に増やしたけれど、もっと増やしたいので株を勉強したいとか女性の方がまともな投資経験者が多く男性は博打の様な株取引が多い事がわかった。

 するとケイトが立ち上がりホワイトボードにグラフを書いて株というものは、この要因、上がり下がりが多いと言い曲線の上部と下部近くに横の直線を書いて、こっから下で買い、こっから上で売れば儲かると少し荒っぽいが理論的な事言うと男子達がなる程と納得した。投資というものは会社の仕事が何か、その会社が儲かっているかどうかが一番重要だと話した。

 ROE「自己資本利益率」、計算式は当期純利益を自己資本で割って100をかける、つまり自己資本で、どれだけ稼いだかという数字が高いほど効率的に儲けてる優良企業。また株価が高いか安いのかを見るのがPER「株価収益率」と言って株価を1株当たりの純利益で割ったもの。この数字が小さいと分母の株価が小さい、つまり割安株で買う対象になる。

 最後にPBR「株価純資産倍率」、計算式は株価を一株当たりの純資産で割ったもの、これもPERと同じで分子の株価が小さいと割安、大きいと割高となると説明すると、大きな歓声と、ため息がでた。つまり、「すげーな」と「難しいな」と言う意思表示だった。この説明を聞いて、男性達は、このボインのねーちゃん、よく知ってる、「もしかして儲けさせてくれるのと、ちゃう」と心をときめかせた。

女性達は、
「何よ、あんたなんかに負けないわよファイトを燃やした様だ」。どっちにしろ宣伝効果は絶大で男性陣が、ねーちゃん、また、教えてくれよと言わんばかりだった。そして知り合いも知識がないから連れてきても良いかと言い、お茶、紅茶、珈琲とせんべい、団子があったら最高だけどなと言うと、人数が集まれば考えますと佐野が言った。

 初回の会合としてはケイトの説明は上出来で、メンバーの株投資へのやる気を十分に引き出してくれ、仲間も連れてきそうだと、佐野は内心、面白そうだと、ほくそ笑んだ。そして最後に佐野が私もケイトほど理論的ではありませんが1973年、早稲田大学理工学部電子工学を出てソニー本社で営業部に配属され業績を上げて頑張りすぎ、身体を壊し1975年、秋に退社した。

 1974年にはじめてソニー株を買い、その後6回の売買で儲けさせてもらったと言った。 すると、ある男性から一番最近はと聞かれ1989年9400円で成行で売ったというと素晴らしいと言ってくれた。そうしてるうちに1時間が経って12時となり、解散となったが帰り際、最後に口を開いた男性が彼は本物だよと、みんなに言うと、驚いた様に、みんなが佐野の顔をじっと見つめた。
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