☑ 死の冰解 ☑

文字数 453文字

 ひとに問いかけているが自分は考えているのかって?そうだね。わたしの理想の死に方は考えているよ。それは“凍死”だ。
 何故凍死が理想の死に方なのか?それは凍死というのは神秘の塊だと思うからだよ。
 まず大前提として,今話しているのは理想…つまりは想像の世界だ。現実に一番多いのは病死なのだろう。だが,想像の世界でまでそうである必要はない。
 “矛盾脱衣”というものを知っているかい?
 人間は,寒冷な環境下では熱を外気に奪われることで体温が低下する。体温が一定以下に下がると、生命維持のために身体から熱が出ていくのを抑制し,熱生産性を高めて体内から温めようとする働きが強まる。この際,体感温度(外気温)と実際の体内温度に温度差が生じると,低体温症のためにまるで暑い場所にいるかのような錯覚に陥って衣服を脱いでしまうとされる。
 人間は死の間際では,異常なことであっても本能が作用すると実行してしまう。矛盾脱衣はそれを可視化していると言える。わたしがこれを知ったとき,凍死という死に方が神秘的だと感じてしまったのだよ。
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