第21話

文字数 951文字

 ビシビシと外が騒がしくなって、急に寒くなりだした。
 窓から外を見てみると、窓自体が凍っていて外は……吹雪いている?!

「膨大な生体電流の魔術だ! 奴ら、この学園長室に……と、閉じ込める気だ!」
「違う! 凍死させようとしているんだわ!」
「ナニナニー! 魔術ってナニ?! ねえ、なんだか凄く寒くない? バイト休んでよかったかも。もう九月だってのにこんなに寒いんだもん」

 ぼくは危機感から学園長の机の上を見た。他にも分厚い本やペーパーナイフ、高価なペンなどが置いてあった。
 机にも霜が降りはじめ室温が極度に下がり、すぐに凍えそうになる。
 ぼくは部屋の中にも机の上にもメタンもないので、火炎系の魔術が使えなかった。そこで学園長室を見回した。試験官の中は、どれも初歩的な魔術の勇気の書では使えない高位魔術の触媒しかない。
 
「そうだ! 知恵の書なら使えるものがあるかも知れない! 凛! イチかバチかだ! その本を開いてくれ!」
「へ?! なんで呼び捨て? まあ、いっか……」
 凛が知恵の書を開いた!
 辺りにある試験官の中のリケッチアが光った。

 リケッチアはウイルスと細菌の真ん中に位置する大きさの微生物だ。ダニに咬まれることで発症するダニ媒介感染症にもなる。

「へ??」

 知恵の書が再び宙に浮かび発光し、大量の空気の摩擦が生じた。
 ぼくには知恵の書が窓ガラスを割れと言っているみたいだった。

「ハッ!」

 ぼくは大量の空気摩擦で収束し、凍った窓に向かって強力な電撃を加えた。
 バリ―ンと、窓ガラスが粉々に砕け散った。
 砕けた窓から魔術師たちが一斉に学園長室に侵入してくる。白花が凛に試験官を持たせ、凛は両手で試験官を開けると、知恵の書が再び輝き、強力な生体電流でリケッチアを媒体にした血液を壊死させる有毒な霧を噴出させた。

「伏せろ!!」

 魔術師たちには魔法障壁があるが、ぼくは今度は、気体を圧縮させて空気だけで小爆発を発した。
 魔術師たちはもろに爆発に巻き込まれ、ブン! という電気の消える音がした。どうやら三人の魔術師の魔法障壁がなくなったのだろう。
 魔術師の一人が悲鳴を上げ、霧から逃げる。

 二人の魔術師も逃げようとしたが、霧を吸い込んでその場に倒れた。
 リケッチアの霧によって、顔があっという間に真っ青になっていた。
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