第四夜:教室

文字数 581文字

 こんな悪夢をみた。
 
 今でもハッキリと覚えている。
 放課後のうす暗い教室。中が見えないように出入口にかけられた厚手のカーテン。そして、いつもの何倍も高く感じる先生の机と、その隣で私を見下ろす冷ややかな目。椅子に座った私は、その目を真正面から見返す自信がなくて、うつむいて、ただ時が過ぎるのを待っていた。
「…山崎さんに話を聞きましたが、あれは遊びのつもりでやったそうですよ。周りの人たちも冗談だと思っていたそうです。」
 この先生はズルい。そうやって間接的に、お前がやられていることは、いじめなんかじゃないと伝えてくる。ただの被害妄想だ、と。そして、後はずっと黙って私を見てる。
「…わ、私は、いじめられていません。」
 この言葉を待ってるんだ。無言で圧力をかけて、私に自ら口に出させることで、このクラスにいじめなんてないんだと、認めさせようとしている。
 このことに気づいたとき、私は、このクラスに自分の味方などいないのだと悟った。
 だから私は、先生の望む通りの言葉を口にして、個別懇談を終えた。
 私の味方は誰もいないんだと、思い知ったその時から、私は人を信じることをやめた。

 目が覚めた。
 今の私も、あの頃と何も変わらない。未だに人を信じることが怖い。
 
       …どうすれば、この恐怖を無くすことが出来るのだろう?
 

 

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