第6話 同志としてのダンス(完結)

文字数 1,547文字

 ダンス愛好家を「社交」「プロと踊る」「アマチュアの競技会」「大学の競技ダンス」と大分大雑把に4つに分けて説明してきた。
なにもお金のかかるプロと踊るばかりがダンスではない。アマチュア同士でカップルを組んで競技会に挑戦するという楽しみもある。プロの登竜門である大学の競技ダンス・部通称学連と社会人の競技会をまとめて説明しよう解説しよう。

 ダンスのためにカップルを組むわけだが、まず第一に大切なのは身長差。女性7センチから8センチのヒールのダンスシューズを履くので、男性との身長差は10センチが理想とされている。女性の方があまり大きいと見栄えがよろしくないとされる。
 さらに技術者ということもある。どちらかが熟練者でどちらかが初心者だと、練習時からストレスが生じて、諍いの元となることも少なくない。
 そのようなことを考えると、必ずしも夫婦や恋人同士がダンスのカップルとしてベストとは言えないということになる。実際ダンスのためだけに赤の他人同士で組んでいるカップルはとても多い。これはプロでも同じで、それぞれに家庭があって、ダンスのためだけの組んで活動しているカップルをビジネスカップルと呼ぶ。

 ペアダンスであるがゆえに、男女間のトラブルがないわけではない。実際不倫カップルの話はよく聞く。だが大抵の夫婦や恋人ではないカップルは同志として切磋琢磨し合っている。競技会に出て1つ1つ勝ち上がり、時には悔し涙を流しながらも昇級していく。その達成感には、趣味とはいえたまらない醍醐味があるのだ。

 趣味で踊るアマチュア同士の競技でも、突き詰めていけば世界に通じる。金スマでキンタロー。・ロペスペアが世界選手権にチャレンジしていたのはこのアマチュア同士の競技の集大成だった。知らない視聴者は彼らが世界トップクラスのダンサーだと誤解したかもしれないが、あくまでアマチュアの中のさらに細かく区切られた年齢別のカテゴリーでのトップだったということ。プロの競技会とアマチュアの競技会ではレベルがかなり違うことは付け加えておく。
日本はなかなか世界で勝てるレベルにはないのだが、ジュニアの頃からダンスを始めている選手たちが少しずつ海外でも成績を残すようになっている。興味のある方はぜひYouTubeで「ダンス競技会」などと検索してこの世界を覗いて欲しい。びっくりするほどキレッキレでキラキラな世界をわかってもらえると思う。

 ここまで読んでくださった方は、それでは一体おまえはどの生息域に属しているのかと思われた方もいるだろう。それでいうならば、私は②のデモラーということになる。最初に書いたように、美しいドレスを着て、カンペキなヘアメイクを整えてスポットライトを浴びるシンデレラ体験は、そこまで1つの作品をつくり上げていく過程とともになにものにも替えがたい楽しさがあった。お世辞が大半とわかっていても、褒められることで自己肯定感も上げられた。おかげでプライベートのゴタゴタの時期を乗り切ることができた。

 そんな私も一度だけ競技にチャレンジしたことがある。「ウリナリ社交ダンス部」というテレビ番組の収録が入り、芸能人がたくさん出場する競技会だ。パートナーとなってくれたのは、とても上手でステキな男性。1曲だけ、数時間の練習で出ただけだが、なるほどこれがアマチュア同士で戦う楽しさなのかとよくわかった。
とはいえ、アマチュアのダンス人口は男性が圧倒的に少ないため、今はプロと出る競技会(通称プロアマまたはミックスコンペ)を目標としてレッスンに励んでいる。

 深くて楽しい社交ダンスの世界。それは、街角の「社交ダンス」と掲げたドアの向こうにとてつもなく深く広がっている。一度足を踏み入れてみませんか?
 Shall we dance?
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