堂の演技
文字数 2,721文字
広いホームセンター駐車場 蛾が飛び回る照明の下 濃紺のロンドクルーザー車前
3人の男女が車を背に100メートル先の警官と向き合っている
銃を構えた警官の後ろには 野次馬のホームセンターの客だ
後方左 堂は目を閉じ 胸元で両手を30センチぐらい離し 気の塊を創っている感じで集中している
後方右 伊東は左手を天に向けて上げ 右手は手刀に斜め降ろし 迎撃態勢
前方 愛奈は横に手を広げて 警官と仲間の間の盾になっている
愛奈は伊東にテレパシーで話しかける
愛奈に 伊東の意志が伝わる
愛奈は 横に広げていた両手を ゆっくりと夜空に向け 何か語り掛け始めた
警官は 愛奈の能力 幻想現実化を阻止し 争いを市民の目から隠すため 駐車場の照明が消される
狙撃手に合図を送る ナイトビジョン(暗視装置)のレンズが愛奈に集中する
伊東は 夜空に手を伸ばしている愛奈の背を蹴り倒し 手刀を横に振る
前にいた何人かの警官が 切られた状態になり倒れる
狙撃手は伊東を狙い撃ち 伊東は両手で頭は護ったが 何発か身体に受ける
愛奈は即座に 前に倒れ込む伊東を抱き留める
伊東の傷をみて無言になる・・
溢れ出る赤に手を当てる 愛奈は伊東に囁き幻覚をかける 陽だまりの中 恋人の膝の上 優しい愛の言葉 温かい手が伊東の手を握り そっと囁く
伊東はあたたかく満たされた穏やかな気持ちになり静かに眠りに入る
右手には現実化されたサバイバルナイフが握られていた
愛奈は伊東を膝に抱いたまま 伊東をジッと見つめる あなたを愛している
ナイフを伊東の胸の中央に押し込む 抵抗のない胸 刃は根元まで入った
堂は目を閉じたまま集中している 平行だった手は横いっぱいに広がって 大きなエネルギーが出来ている
愛奈は振り返り 堂を観察 すでに制御できないエネルギー 止めなければ
右手に語る 銃出でよ 右手にザウアーP226が握られている
銃口を下に向けサムセフティ(手動安全装置)を解除しスライドを引く
堂を狙い 一発 堂の頭に向け打つ ロンドクルーザーの後部座席の窓が砕ける
次は 狙う
愛奈の行動に 警官達は 沈黙で許している
堂は目を閉じたままだ
堂は右手を愛奈に向ける
愛奈は銃で 堂の中央を狙い エネルギーごと堂を消す覚悟で撃つ
「バン」大きなパーティークラッカー似の音がする
愛奈軽い衝撃を受け崩れる
愛奈の弾は堂をはじき 愛奈に当たったのであった
堂は静かに目を開く 無表情だ
人知を超えた力 彼らは人間ではない 危険過ぎる力だと判断 狙撃手に合図を送る
堂に一斉射撃 堂に着弾 堂の身体から幾つも光が漏れる・・が 強い光が跳ね返す
撃った弾は当事者に返され 警官が倒れる 止めの合図が出る
銃弾が返るのを理解し 対策を考えるため 中断
対策として 上空のヘリから移動しながら銃撃をする事になる
危険なため市民は退避させ 堂は身長の2倍ぐらいぐらいになった巨大エネルギーボールを 小さく圧縮し始めた
堂の上空を旋回していたヘリが 南方向へ移動する 小さくなると すぐ方向を北に変えて堂に銃撃をし 右へ方向転換
堂に銃弾が当たる 当たった箇所が光 銃弾が返されたが 移動した後のヘリには当たらない
弾の当たったはずの 堂とエネルギーボールは健在だ
次対策は対人戦 ナイフと銃を持った5人の機動戦術部隊(警官)が堂に向かう
堂は 圧縮されたエネルギーボールを 上空に上げ漂わせ 待つ
サバイバルナイフの警官 堂に切りかかる
堂は 無抵抗になる 刃を受け入れる 堂に刃が当たるが 硬い感触 刃が滑る「?!」
焦る5人
堂は片手で刃を受け止め 拳でボディーを狙う
拳の当たった一人 ハンマーを食らった様になり倒れる
拳が胸に当たった者は 肋骨が折れ内臓に刺さる
堂と残りの機動隊員3人がもみくちゃに闘っていると 蛍の様な光が一つ二つ現れ 堂たちの周りを舞い始める
たくさんの小さかった光は集まり 幾つかの野球ボール位の大きさになり そして輝いて 闘う4人の視界を邪魔し いつの間にか争いが止んでしまった
光は瞬き 堂の前へ集まった
堂は待機させたエネルギーボールに手を伸ばす
光は点滅し 堂の周りを大きく周り 満月の光を吸収し始めた
光は強くなり 雨のような銃弾となって堂に撃ち込まれた
光の銃弾は跳ね返らず 堂に当たり 堂は倒れた
その様子を倒れている愛奈は目撃していた そして目を閉じた
風景が色を失い 月の前を地球の影が横切る
皆既月食だ
暗い地上 警官・市民は満月の光を待つ
影から月光が出る瞬間 無音の振動が世界を走った
皆が闇に気をとられている間 彼らの姿は消えていた
倒れていた警官は起き上がり 皆まるで時間が巻き戻されているように感じた
警官は彼らを探したが 彼らのいた痕跡は何も見つからなかった