第3話 生死の狭間に揺らめく者

文字数 9,736文字

?「ゆら〜ん…」
セイ「…トート、静かにしてくれる?」
トート「えー、なんでぇ?今ここお姉ちゃんしか居ないからいいじゃん…」
セイ「…私は静かに過ごしたいの」
トート「…む〜」
そこは光とも闇とも言えぬ場所。
ただ、姉妹が浮かぶだけの世界。
トート「…」プイッ
セイ「…もう、トート…」
トート「…構ってくれないんだも〜ん」
セイ「全く…甘えん坊ね」ナデナデ
トート「…♪」
セイ「…影鴉(かげがらす)は私達の居場所よ」
トート「そんなことないよ〜…」
セイ「なぜ?」
トート「リバは、私達をただの駒にしか思ってないからね〜。ただ自分の理想の為に動く欲望に忠実な人だから〜」
セイ「そんなこと言っちゃダメでしょ?」
トート「ホントなんだもん。それに私あいつ嫌い。」
セイ「はぁ…」
トート「……おやすみ、お姉ちゃん」
セイ「ちょっと、誰が寝ていいって…」
トート「…zzz」
セイ「…………仕方ないわね。世話のかかる妹なのは…昔から変わらないね…」
妹の体に毛布をかける。
セイ「……おやすみ。トート」

イゼ「…暇だね」
マイン「…そうでも無いでしょ」
イゼ「暇じゃないの?」
マイン「…逆に聞くけどなんでそんなに暇なのさ…」
イゼ「だって暇だし。」
マイン「………」
言葉のキャッチボール…
マイン「まあいいや…」
イゼ「……影鴉、だっけ。あいつら来ないかな?」
マイン「なんでそんなに好戦的なんだよ…」
イゼ「私なら余裕でしょ。よゆー。…あいたっ…」
軽く頭を叩かれる。
マイン「油断してると足元すくわれるぞ。」
イゼ「…わかったよ…もう」
リバ「見つけたぞ。半竜と半竜もどきめ」
マイン「もどき…?俺が…?」
リバ「そうだろう?(いつわ)りはなかろう」
マイン「…頭に来るね」
リバ「フン。貴様らと仲良くするつもりは毛頭ない。往くぞ」
マイン「んなもんこっちから願い下げだ死に損ないの爺め!」
リバとマインがぶつかり合い、消える。
イゼ「…1人で行っちゃったよ」
…人通りもない。と言うか最近人里に来ても人をそんなに見ない。
セイ「あら。あなたも独り?」
イゼ「そんな心外なこと言わないで欲しいな」
セイ「…ふふ、心の嘘が見えるわよ。」
イゼ「……ハッタリには動じないよ」
セイ「そう…なら、その命…貰うわね」
イゼ「私はそう簡単には死なないよ。」
幻刀を構える。
イゼ「貴女だったらこれで十分。夢想なんて勿体ない。」
セイ「…後悔するよ。」
冷気を放つ剣を向ける。
セイ「生死剣(せいしけん)…リヴ。」
イゼ「──!」
幻刀を振りかぶる。
──『幻覚世界(げんかくせかい)』──
イゼ「私の世界にようこそ。歓迎してあげる。」
セイ「…へぇ。私と同じような…でもここは暖かすぎるね…」
イゼ「…何が言いたいの」
セイ「『狭間(ハザマ)の世界』」
イゼ「そんな…?!
幻覚世界を上書きされる。
セイ「…さぁ、あなたは死の世界に案内してあげるわ。寒くて、誰もいない虚無の中で過ごしなさい…」
イゼ「……」
でも私なら。
半竜のこの身体なら。
セイ「意味ないわよ。あなたの生死の認識を弄ってあげればいいからね。でもそれに抵抗されたらたまったものじゃないから…まずは半殺しにしなきゃね?」
…無駄だった。
セイ「どこまで耐えるのかしらねぇ?あははは!!」
私に負けず劣らず狂ってる。
イゼ「…!」
浮遊する幻刀(げんとう)を増やす。
セイ「それでなにが出来るのかなぁ!!教えてよ!」
イゼ「…なら教えてあげる…!」
投げナイフの要領で投げる。
セイ「そんなもの…!」
弾かれる。
まぁ、想定内だ。
─次は?
セイ「─!?
1本目に重なるように投げつけた幻刀。
あいつの視界にはどう写ったのかは知らないが、避けられるのもなら避けてみろ。
セイ「がっ…!!
イゼ「ビンゴ♪」
セイ「この…よくやってくれたわね…!」
イゼ「…うわっ?!
いきなり目の前に詰めてくる。
─完全に油断した。
イゼ「うあああっっっ?!?!」
セイ「ふふふ…」
深く切り付けられた傷からドクドクと血が流れていく。
…はっきりと自分から血が抜けていくのが分かる。
傷はすぐに塞がる。が、痛みまでは取れなかった。
イゼ「いつつ……」
セイ「そうね…次は…首を掻っ切って見ようかしら」
その攻撃を間一髪で止める。
だが、先程の痛みのせいでまともに力が入らない。
セイ「痛いのでしょう?なら早く楽になりなさい?」
心臓を抉り出され、そのまま放置されているような。
或いは皮膚をスコップのようなもので削られその穴を放置されているかのような痛み…
とてもじゃないが形容できない。
首を切り落とさんとする刃が迫ってくる。
イゼ「…っ!」
何とか弾き返す。
だが、それだけで息が絶え絶えになる。
セイ「ふふふ…自分で苦痛の伸ばすなんて…頭が弱いのかしら?それとも…正気だったり?」
イゼ「…私を馬鹿にしない方が身のためだよ」
セイ「………」
イゼ「─『覚醒(かくせい)』─」
セイ「その程度で何が出来る?」
イゼ「…お遊びはお終いだよ。」
幻刀を投げ捨て、1本の刀を手に取る。
それは今までとは明らかに違う、確実に質量を持ったもの。
イゼ「私の幻覚からは逃れられない。たとえそれが誰であっても、ね。」
狭間の世界が揺れる。
境界線が崩れ行く。
セイ「ありえない…」
イゼ「ありえない?今起こっている事がありえないって?」
冷や汗が流れていく。
目の前に浮かぶ刀の切っ先が自分の顔から離れない。
─目の前だけではない。
横も、背後も、上下に逃げる道も、塞がれた。
ここは…鳥籠の中なのか。
イゼ「あなたはここで終わり─ん?」
一筋の光がイゼに飛んで行く。
イゼはそれを弾いた。
セイ「─!」
トート「んもう…完全に不意を突いたのに反応するとか反則だよぉ…」
イゼ「…増えた…面倒なことに…」
トート「いくよぉ…死生剣(しせいけん)]、エリクス…」
セイ「トート…なんで」
トート「だってさ〜。お姉ちゃんがピンチなんだよ?私が行かないと死んじゃうじゃん〜。」
イゼ「…まぁいいや。2人まとめて消してあげる。」
トート「やってみてよ〜。」
イゼ「…」
手を横に差し出す。
数本の幻刀が闇に浮かぶ。
そのまま手を前に突き出せば幻刀が勢いよく飛んでいく。
トート「…弾幕薄いね〜。簡単に突破出来るじゃん。」
イゼの目の前まで飛んでいく。
トート「─でもさ…やっぱり斬らないと楽しくないよね。」
今度は反応できる。
さっきのようには行かない。
受け流し、腹部を蹴り、振り下ろす。
トート「っ…った…」
セイ「トート!」
トート「大丈夫だって〜…」
イゼ「……」
早い内に決着をつけてマインの手助けに"い"っ"………
イゼ「ぁ……っが…」
リバ「…」
イゼ「なん…で…」
リバ「彼奴なら倒れたぞ?」
イゼ「…!」
リバ「貴様から殺してやろう。有難く思え」
まだ…死ねない…!
リバ「…!」
イゼの身体が消える。
セイ「…あーあ。逃げた」
トート「ちぇ〜。つまんないの」
リバ「…まあよい。行くぞ」

〜幻覚世界〜
マイン「…よかっ………まに、…あっ………た……」
指先の冷たい水。
血の匂い。
そして声。
イゼ「マイン!」
マイン「君が…死ぬ前で…よかった…」
イゼ「私はそう簡単には…!」
マイン「…気付かなかった、のか…?…リバの…武器…」
イゼ「…まさか」
嘘だと思って自分の体を見る。
…セイやトートに付けられた傷は癒えていても、リバに貫かれた所は癒えずに少しずつ血を流していた。
マイン「…厄介なものだ」
それだけではない。
この幻覚世界…私は自分で発動したと思っていたのに…
…能力も使えなくなっている。
マイン「…やす、め…君の体なら…少し休めば…きっと………」
イゼ「…マイン?」
マイン「……」
世界が崩れていく。
イゼ「マイン!」

…世界が完全に崩れた後、私が立っていた場所は人里からそう離れていない場所だった。
すぐ傍には倒れたマインが居る。
イゼ「…行かなくちゃ」
何とかしてマインの体を抱え、歩き出す。
まだ、生きてる。
寝息のような息がそう言っている。
あいつらに見つかる前に。
今度こそ殺される前に。
急いで。

レイル「ふわぁ…」
キルア「眠いのですか?」
レイル「最近あまり寝れていなくて…」
キルア「そうなんですか…」
レイル「はい…」
イゼ「……っ…」
レイル「…?あれ、イゼさんじゃ…」
気付いたレイルが駆け寄る。
レイル「…!?どうしたんですか!?
イゼ「私はいいから…マインを…助け…て…」
レイル「き、キルアさん!」
キルア「…私がイゼさんを運びます…マインさんを頼めますか?」
レイル「はい!任せてください!」

〜白玉楼〜
キルア「ファイナル!」
ファイナル「…ここに。」
キルア「あとの方から着いてきてるレイルさんを手伝って!」
ファイナル「…分かりました。イゼについては後程お伺いします。」
ロッキー「…おい、大丈夫か?」
キルア「大丈夫、です…これでも半竜ですから…」
ロッキー「無茶すんな。イゼを下ろせ。俺が持ってく」
キルア「は、はい…」
ロッキー「…っと…休んでろ。処置やらなんやらは俺とレグルスがやっといてやる」
キルア「ありがとう…ございます…」
レイル「助かりました…ファイナルさん」
ファイナル「…とりあえず先にするのは手当てだ。何があったのかは後に回す。」
レイル「はい…」



トート「…なんで邪魔したのさ〜。」
リバ「貴様らがあんな奴1人に苦戦しているからだろう。」
トート「せっかく面白くなってきたのに…興ざめだよぅ…」
リバ「遊びでは無いのだ。奴らを滅し、我らが支配者とならねばならぬ。」
トート「…支配とか…滅ぼすだとか…言ってて恥ずかしくないの?」
リバ「全く。」
トート「そもそも、あなたがそこまで半竜人に執着する理由がよく分からないのだけど。」
リバ「…私は小さな頃から彼等が憎いのだ。彼奴等をこの手で始末するまでは死なん」
トート「…大体わかったけどさ。」
リバ「なんだ、まだ何か文句があるのか。」
トート「気安く話しかけないで。今は仕方なく従ってるけど、私は貴方のことまったく信じてないから。」
リバ「フン。構わん。亡霊如きに嫌われようと何かが変わることはない。」
トート「………」
リバ「ククク…自分の過去を思い出したか?実にくだらぬ人生だったなぁ?フハハ!」
トート「リバ…!」
リバ「─2度目の終焉を味わう覚悟は有るんだろうな?」
トート「…あるに決まってる」
リバ「そうかそうか!だが強がりも程々にしておくんだな!ただの強がりは呆気なく崩れるぞ!ハハハハハ!!
リバの姿が闇に解けていく。
トート「…………」
拳を握り締め、言いようのない怒りを自分自身に向かって吐いている。
セイ「…トート。」
トート「お姉ちゃん…」
今自分がどんな顔をしているのか分からない。
セイ「おいで。ぎゅってしてあげる。」
トート「…うん…」
セイに近付き、抱き締められる。
姉の温もりが、姉の心臓の音が、
少しずつ怒りを誤魔化してくれる。
それと同時に、ある感情が湧いてくる。
トート「…『消えたくない』…」
元は1度死んだも同然の体。
姉も同じだ。
その結果、生死の境が分からなくなってしまった。
生きるとは?
死ぬとは?
答えがないのが答え。
そして生まれたのがこの『狭間の世界』。
少なくとも今、私達は『生きている』。
セイ「…トート。あなたのお姉ちゃんはここにいるわ。あなたが死んでも、すぐに一緒の所に行ってあげる。だから…」
トート「うぁぁぁぁ…………!!」
セイ「─泣かないで。」
気付かぬうちに泣いていた。
涙を流していた。
姉にしがみついて、子供のように大泣きしていた。
そんな私を姉は優しく抱きしめてくれる。
それでまた涙が溢れてくる。
本当に、子供みたいだ…

セイ「…」
トート「……すぅ…」スヤスヤ
ずっと、ずっと抱き締めている。
自分の過去はあまり思い出せない。
思い出そうとしても霧がかかっているようで何も思い出せないのだ。
セイ「それでも…」
妹と…トートと一緒にいた思い出は鮮明に思い出せる。
この子の笑った顔、困った顔。
泣いている顔、悲しい顔や怒った顔。
ぜんぶ、私の心にしまってある。
トートには私しかいない。
そして、同じように私にはトートしか居ない。
…離れたくない。
ずっと一緒にいたいのは私も同じ。
…だが、この影鴉という場所に来てしまった以上、ここが『居場所』になる。
─郷に入りては郷に従え。
今だけはその言葉を恨む。
セイ「………」
いつの間にか日が落ち、月が夜空を照らしていた。
願わくば、月の周りに浮かぶあの星たちのように…
静かに地上を見守る、そんなような存在になりたかった。
セイ「…私…どうしたらいいの…分からない…」

イゼ「…………」
目覚めたらそこは自分の部屋だった。
無事だという安堵と共にマインの心配が浮かんできた。
ファイナル「動くなよ。」
イゼ「兄様…」
ファイナル「マインは無事だ。…途中まで抱えてきたんだってな。よく頑張った」
頭に手が乗せられ、そのまま撫でられる。
ファイナル「短く終わらせよう。何があった」
イゼ「…散歩してたら、リバに会って…それであいつにも…確か…セイ、だったかな…」
ファイナル「…影鴉か」
イゼ「そそ。」
ファイナル「マインも同じようなものか?」
イゼ「うん」
ファイナル「わかった。今日はゆっくり休め。能力は使うなよ」
イゼ「わかってる…」



リバ「…ククク…フハハハ…ハハハハハハ!!!」
何が半竜だ。
弱点を突けば奴らなぞ人間以下の脆い存在になる。
簡単に傷付く。
ハンター時代から愛用しているこの武器。
雨の記憶を宿す刃。
「レイフォール」
半竜を斬るにはうってつけだ。
あの日の虐殺。
私は真実を知っている。
雨。
それは少しずつ半竜人の体を壊していく。
短期間に、大量に雨に当たれば、そいつはもはや人の形をしたゴミになる。
─あの虐殺は言い換えればただのゴミ処理だ─。
人にも竜にもなれなかった『紛い物』に生きる価値など存在しない。
─私は、『影の狩人』、リバ。
かつてハンター共を裏切り、滅亡させた張本人。
ロッキーの家族を葬ったのも私。
だが、それを知るものは私以外居らぬ。
リバ「─ハーッハッハッハッハッハ!!!!!───」

次の日
セイ「……次はあいつらね」
トート「よしよし、じゃあさくっとやっちゃおうよ〜」

ロッキー「…」
レグルス「どうされましたか?ロッキーさん」
ロッキー「影鴉…ほとんど未知の軍勢だろ?」
レグルス「その通りです」
ロッキー「…なんでだろうな…昨日聞いた「リバ」という名に覚えがあるんだよ」
レグルス「ほう?」
ロッキー「だが…なにも思い出せん…顔は思い出せたんだが」
レグルス「…そうなのですか」
ロッキー「……この記憶が確かだという確信もない。忘れてくれ」
レグルス「…いいえ。不確かな情報でも留めておくべきかと。確信に繋がる可能性もありますし、違うなら軽々と切り捨てられる情報です」
ロッキー「…そういうところファイナルに似てるよな」
レグルス「ふむ?意識してるつもりは無いのですがね」
ロッキー「まぁいい。話はあとにしようぜ…鴉が気やがった」
レグルス「人里のような騒ぎになる場所ではなくて良かったですね。」
ロッキー「そんときはお前に転移してもらうがな」
レグルス「…仕事が増えないで済んだ、という意味で言ったのです」
ロッキー「ほう、そうか。」
トート「『狭間の世界』…」
光と闇が混ざり合う歪な世界に引き込まれる。
足元は水のようで、歩くと波紋が広がっていく。
ロッキー「変な世界だな。」
トート「うるさい」
ロッキー「ひでぇなオイ」
セイ「…‼」
不意打ち。
だが気取られる。
セイ「そんな?!
ロッキー「甘いな。」
セイ「っ!」
銃弾が顔を掠める。
ロッキー「反射神経は良いな。」
セイ「………」
ロッキー「次は無いぜ?」
セイ「…はあっ!」
簡単に受け流され、反撃をもろに食らう。
セイ「くぅっ…」
ロッキー「…ラァッ!」
セイ「…っ!」
力一杯振り絞って剣を振り上げる。
ロッキー「うおぉっ…!」
セイ「─ぅぁああッ!!!!
そのままリヴを振り払う。
ロッキー「ぅぐぁ…!?
セイ「はああっ!!」
突き出す。
ロッキー「く…!」
素手で受け止める。
ロッキー「チイッ…」
セイ「狂ってる…まさか素手で受け止めるなんて」
ロッキー「狂人は黙ってろ…」
ぽたぽたと血が垂れていく。
セイ「……」
少しずつ力を込めて剣を押し出していく。
ロッキーが顔をしかめながら握る力を強くしていく。
ロッキー「─!」
セイ「?!
軽い破裂音。
その瞬間の、肩の違和感。
仰け反る体。
─撃たれた。
それに気付いたのは倒れてからロッキーを見上げた時だった。
セイ「そん…な…」
ロッキー「……」
セイ「トー……と…、…わ…た、…私………」
[newpage]
トート「…」
レグルス「私がお相手になりましょう、お嬢さん。」
トート「子供扱いはやめて。」
レグルス「私は1人の女性として貴女を扱っております。」
トート「…喋らないで。耳障りなの」
レグルス「…なら黙りましょう。」
トート「それでいいの。」
エリクスを向ける。
レグルス「……」サッ
ナイフを数本、短剣を1本。
私に刃を向けているのは短剣。
鋭い眼光。
穏やかに見えて、その裏は冷徹だ。
レグルス「……」
構えたまま微動だにしない。
ならこっちから動く。
トート「…!」
剣を突き出す。
レグルス「…」
身体を逸らして避けられる。
トート「なら…」
連続で斬りかかる。
レグルス「……」
少し微笑みながらすべて避けていく。
トート「…なんでよ!」
レグルス「……」
腕を広げて「さあ?」とでも言うように首をかしげる。
トート「……………」
レグルス「…」
短剣を薙ぎ払うように振る。
トート「!」
バックステップでかなり距離をとる。
レグルス「…!」
ナイフを投げる。
トート「う…!」
なんとか避ける。
レグルス「……」
薄ら笑いを浮かべて私を見つめてくる。
なんだ、その顔は。
馬鹿にしているのか。
トート「…!!!」
振る。とにかく振りまくる。
相変わらず全て避けられていく。
だが、たまに受け流しているようで。
キン、という音が聞こえてくる。
…しかし、人とはこんなにも黙れるものなのか。
喋らなすぎて逆に不気味になってきた。
息切れもほとんどしてないようだ。

次第に弾く音が多くなってきた。
相手も焦っているのか?
これなら勝てるんじゃないのか?
…相変わらず向こうは微笑んでいる。
なんなんだ。
一体何がそんなに…
トート「──!!??」
馬鹿な…バカなばかな!?
いつの間に…攻守が入れ替わっている!?
弾く音が多くなっていたのは…
私が無意識に弾いていたせい…?
いつだ。
いつ入れ替わった?
トート「…っ?!」
足を引っ掛けられて派手に転ぶ。
レグルス「……」
トート「…!」
胸元辺りに手をを置いて、もう片方の手の人差し指を口に近づける。
いわゆる「静かに」のポーズだ。
レグルス『おちついてください』
声を出さず、唇だけでそう言った。
トート「…!」
レグルスの腕を振り払って剣を突き出す。
当然、当たらない。
トート「なにが…何がわかるの…!」
レグルス「……」
トート「なにか言えよ!」
レグルス「口を閉じろと言ったのは貴女でしょう」
トート「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!
がむしゃらに剣を振るう。
レグルス「…」
トート「誰も!私たちの事なんて分からないくせに!死ぬ事がどんなに辛いことか分からないくせに!!なんでみんな分かったように振る舞うの!」
レグルス「…」
トート「助けてよ!もうあんな所嫌なの!」
剣を振る腕が掴まれる。
トート「…!」
レグルス「…助けて欲しいと言うなら。一旦休戦しましょう」

トート「…お姉ちゃん!」
セイ「トー…ト…」
ロッキー「…お前、どういう風の吹き回しだ」
レグルス「実は…なんやかんやありましてね」
ロッキー「………お前な…」
レグルス「とにかく、ファイナル様に相談しましょう」
〜〜
レグルス「…という事がありまして」
セイ「…ごめんなさい…」
トート「…ごめんね……」
イゼ「怒ってないよ…刺したのはリバだし」
マイン「……」
ファイナル「…事情はわかった」
レグルス「……」
ファイナル「影鴉がどう出るか、だ」
セイ「…」
ファイナル「…内部を知ってる以上排除を狙う可能性はある」
セイ「…自分の身は守る…」
ファイナル「…油断するな」
セイ「…分かってる」


リバ「全く…口車に乗せられおって」
?「……」
?「どうしますか」
リバ「殺せ。」
?「…分かりました」
?「おまかせを」
リバ「任せたぞ、ロバート、シーカー。」


セイ「……」
トート「…」
ロバート「よう、セイ、トート」
セイ「ロバート…!」
トート「お姉ちゃん…!」
逃げようと背中を向ける。
シーカー「…逃がさん」
しかし、後一歩のところで狭間の世界へと逃げられる。
ロバート「…チッ。」
シーカー「仕方ない…次のチャンスを狙うぞ」
ロバート「ったく…わかったよ」

セイ「…やっぱり…殺しにくるわよね」
トート「生き残ろう、お姉ちゃん…」
セイ「そうね…トート」

リバ「…やっと貴様に会えたよ」
ファイナル「お前がリバか」
リバ「その通り。またの名を『影の狩人』と…」
ファイナル「聞いていない。」
リバ「…まったく…自己紹介も満足にさせてくれぬとは…」
ファイナル「影鴉を率いているのはお前だな?」
リバ「いかにも」
ファイナル「…明確な敵だな。」
リバ「…私と斬り合うのかね」
ファイナル「…」
リバ「挨拶だけで済まそうと思ったのだが…仕方あるまい…ゆくぞ、レイフォール」
……ああ、なるほど。
予想はついてたが当たったか。
…架空のものだと思っていたが違うんだな。
雨の記憶を宿した魔鉄鋼…
面白い物が見れた。
リバ「…うおお!!」
弾く。
そして斬る。
リバ「な…」
ファイナル「…」
リバ「…覚えておれ…!」
ファイナル「…次は殺す」
リバ「………」

イゼ「…セイ、トート、いる?」
セイ「…なに?」
狭間の世界から顔を出す
イゼ「何かあったらすぐに教えてね」
セイ「でも…」
イゼ「元は敵同士だけどさ。今は味方じゃん?力になれるならすぐに駆けつけるよ。」
トート「ありがとう…イゼ…」
イゼ「いいんだよ、トート」
お互いに微笑む。
マイン「イゼ……ああ、君たちも居たんだ」
セイ「マイン…」
マイン「なんだ?」
セイ「…ううん、なんでもない」
マイン「リバの事か?」
セイ「…うん」
マイン「…いつか絶対に殺してやろうとは思ってるよ。」
セイ「……そう…」
マイン「…まぁいい。イゼ、ファイナルが呼んでる」
イゼ「え、そうなの?早く言ってよ!」
マイン「まぁいいだろ?」
イゼ「もう…」

ファイナル「来たな」
イゼ「なんだった?」
ファイナル「リバの武器について分かったことがある」
イゼ「…聞かせて」
ファイナル「簡単に言うと魔鉄鋼だ。魔力を流し、刃に魔鉄鋼の記憶を思い出させる」
イゼ「…記憶は?」
ファイナル「雨。」
イゼ「……」
ファイナル「潰すなら早めに潰した方がいい」
イゼ「…わかった。ありがとう、兄様」
ファイナル「気にするな」




リバ「…くそ…なんて強さなのだ…あやつめ…」
ロバート「……」
シーカー「…………」
リバ「…トレーネはどこに行った」
トレーネ「なんでしょうか」
リバ「貴様も手伝え。」
トレーネ「わたくしは影鴉に従う者。貴方の命令ならお受け致しましょう」
リバ「うむ…」

ロビー
ホーク「……」
デーブン「よう、ポークじゃねぇか」
ホーク「…俺は豚じゃねぇ。」
デーブン「んだよ、ちょっと間違えただけじゃねぇか」
ホーク「人の名前をまちがえるとは無礼だぞ。…それで何の用だ」
デーブン「お前の力を借りたいんだよ」
ホーク「…ほう?『空の監視者』の力が?」
デーブン「そうだ。お前がいてくれると楽になる」
ホーク「…標的は?」
デーブン「こいつらだ」
何枚かの写真を渡す。
ホーク「…承知した。…こいつらもか」
デーブン「リバ曰く『利用価値の無くなった者どもには死を送る』だそうだ。」
ホーク「…フン…あいつの言葉など信用しない…俺はただ表面上、あいつに従っているだけだ」
デーブン「俺も同じだぜ。」
ホーク「…それでは行ってくる」
デーブン「待て。俺らも乗せてけ」
ホーク「…あの船にか」
デーブン「そうだ。たしか…『ガーディア』だっけか?」
ホーク「そうだが…」
デーブン「乗せてくれるか?」
ホーク「…何人だ」
デーブン「俺を合わせて2人だな」
ホーク「それくらいなら構わん。乗れ」

浮遊戦艦ガーディア:甲板
ホーク「…行くぞ。出せ!」
船員「了解!」
駆動部が唸りを上げて船を浮かす。
ホーク「光学ステルスは忘れるなよ。ターゲットを見つけ次第攻撃に入る」
船員「了解しました、艦長」
To be continued…
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み