第4話 空の上の砲撃戦

文字数 11,696文字

ファイナル「チッ……なんでこうなったんだよ…」

エンド「竜の国からの贈り物、それがまさか浮遊戦艦とか…無駄に近代改装してあるの面白いんだけどw」

『あーあー…聞こえる?』

ザーザーという雑音に混じって声が聞こえてくる。

ファイナル「なんだ」

『おっけー。とりあえず意思疎通はできるね』

ファイナル「こっちはノイズが酷い。そっちはどうだ?」


浮遊戦艦(ふゆうせんかん)葵詩(あおいうた)』(幻想郷サイド)

霊夢「ノイズ?ほとんどないわよ。」

ファイナル『んじゃあこっちだけなのか……』

霊夢「…というかなんなのよそのバカでかい船」

ファイナル『知るか!向こうから珍しく連絡があったと思った途端にこれだぞ!奴らの気が知れん!』

霊夢「…ところでこの船もファイナル達の…?…あ、やっぱいいわ。誰が作ったのか分かったから」

にとり「な、なぁーんだよぉー!せっかくカッコつけれると思ったのに!」

霊夢「そりゃあんなとこに分かりやすくつけられたら嫌でもわかるわよ」

にとり「ぬぐぐ…竜の国からすごい技術を見せられたから私も真似しようとしただけなのに…!」

ファイナル『……………』

エンド『見た感じこの船のコピーだね、それ』

力丸『おーい。ちょっと失礼するぞ』

ファイナル『力丸てめぇ!送り付けてきたのお前か!!

力丸『そう怒るなっての。影鴉はこういう兵器も使うらしいからな。対抗手段という訳だ。』

ファイナル『・・・・・・』

力丸『…ま、今回は俺らも合わせて3隻のテストがてらに飛行してる。分かったか?』

ファイナル『…後でぶん殴る』

力丸『やってみろよ。んじゃ一旦切るぜ』


浮遊戦艦『レフィタ』(力丸サイド)

力丸「…さて。大丈夫か?」

ジェイ「今のところはな。若干不安定だが問題はないぞ」

力丸「…それ、できる限り直せよ?」

ジェイ「はいはい…」

力丸「落ちたら間違いなく死ぬのは分かってんだろ」

ジェイ「…俺は浮遊戦艦には猛反対したんだ。その反対を押し切ってまでやり切ったのは上の判断だろうがな。…動力に魔法具を使用するとかふざけてる…」

力丸「……」

ジェイ「魔法具が暴走したらどうなるか、お前も分かってるだろ?」

力丸「…」

ジェイ「言え!わかってんだろうが!」

力丸「…ああ」

ジェイ「よりにもよって動力だ!そしてただでさえ常に不安定な浮遊化だぞ?!負荷のかけ方を少しでも間違えてみろ!即刻メルトダウン起こして戦艦諸共消し飛ぶことになる!!

力丸「…………」

ジェイ「人命を大切にするならもう少し深く考えろ!それでもお前はゼロの隊長か!!

力丸「…!」

ジェイ「ファイナルを見習いやがれ!あいつならこんなふざけた動力源を全力で却下して別案を出す!なのにお前はなんだ!却下どころか賛成だと?!ふざけんじゃねぇ!」

自動操縦に切り替え、力丸に掴みかかる

ジェイ「…お前はお前以外の命をなんだと思ってんだ!言ってみろ!!

力丸「…それは…もちろん大切n」

ジェイ「「

」だぁ?! 今「

」だって言ったかこの馬鹿め!」

掴んだまま殴る。

力丸「くっ…」

ジェイ「確かに俺らは竜だ!ちょっとやそっとじゃ死なねぇよ!だがな!今の竜の国には半竜人なんて片手で数えられる程度しかいねぇんだぞ!!

「ジェイさん…落ち着いて…!」

ジェイ「メルトダウンが起こればお前の身体すらも消えるんだぞ!」

「ジェイさん!」

何人かの人物がジェイを引っ張っていく。
ジェイ「離せ!オイ力丸!お前これが終わったらもう一度話し合うぞこの野郎!分かったかァ!」

ドアが閉まり、声が聞こえなくなる。

力丸「………」

「大丈夫ですか…」

力丸「ああ…」

…あいつが言うことは全て正しい。

確かにファイナルなら…あいつなら魔法具を動力源に使う時点で猛反対するだろう。
理由は簡単だ。
─メルトダウンが起こった場合その時点で全員の死が確定するから─
…だ。
だが俺は、その代替案が分からない。
浮遊技術はまだ安定化が難しい。
…どうすれば…

力丸「…レフィタ…応答しろ」

レフィタ『はい!サポートAI No.02 レフィタ!起動しました!』

力丸「質問がある…浮遊戦艦の動力源を安全にする為にはどうしたらいい」

レフィタ『演算を開始します!少々お待ちください!』

力丸「……」

レフィタ『おまたせしました!演算結果をお知らせします!』

力丸「…」

レフィタ『まずは1つ目です!出力は落ちますが、魔法具自体の出力を変更することです!』

力丸「それだとやっぱりメルトダウンしないか?」

レフィタ『はい!その危険は十分にあります!』

力丸「……」

レフィタ『もう一つの方法があります!』

力丸「…答えろ」

レフィタ『反重力です!』

力丸「反重力か…」

レフィタ『どうしたのですか?』

力丸「………気にするな」



ジェイ「………………」

魔法具のメルトダウン。
それは半竜人でも耐えられない。
どんなものでさえ微塵も残さずに消し飛ばす。

ジェイ「…俺が持ってるこいつも…例外じゃない…」

個人が魔法具のメルトダウンを起こす。
それは自害に近い。
許容量を超える魔力を流し続ければコアなんて簡単に融ける。

ジェイ「…………………」

まだ怒りの余熱が収まらない体を虚無感が包む。

ジェイ「…お前はゼロの隊長なんだ…選択を間違えるんじゃねぇよ……失態は…お前一人じゃ抱えきれねぇんだから………」



浮遊戦艦『ミクラス』(ファイナルサイド)

ファイナル「……………誰だ?このふざけた棺桶に賛成した奴は」

浮遊戦艦の資料を見ながら不機嫌そうにつぶやく。

エンド「なんかあった?」

ファイナル「…動力が魔法具らしいんだが。」

エンド「…マジ?」

ファイナル「ほら、ここ」

エンド「…うっわ、ほんとじゃん…」

ファイナル「…」

無線機に向かう。

ファイナル『浮遊戦艦ミクラスから各艦。今すぐテスト航行を中止したいのだが』

にとり『えぇ!?なんでさ!』

ファイナル『動力源の暴走の恐れがある。どこかに着陸して改装したい』

力丸『…分かった。レフィタについて来てくれ。葵詩はミクラスの後方からこい』

にとり『了解!』



地上:緊急キャンプ

力丸「……すまなかった…俺の責任だ」

ファイナル「………………………」

力丸には目もくれずにひたすらメモを取っている。

ジェイ「…頭を冷やしてこい、力丸」

力丸「…すまん」

外ではにとりが中心となって動力源の解体に勤しんでいる。

そいつらに軽く挨拶しながら、声が聞こえなくなるところまで歩いていく。

力丸「…浅はかだった…浅すぎる考えだった…」

メリットだけを考えて、リスクなどこれっぽっちも考えていなかった。

─馬鹿だ。

どうしようもない馬鹿だ。

力丸「…」

ジェイの言葉が刺さる。

『人命を大切にするならもっと深く考えろ!』


───『それでもお前はゼロの隊長か!!』───



力丸「…どうすりゃいいんだよ…」



ファイナル「………」

ジェイ「んで、レフィタからの回答は「反重力」だそうだ」

ファイナル「…なるほどな。早速取り組もう」



にとり「…反重力ぅ?」

ファイナル「簡単に言えば物質にかかる重力を調節する事だ。難しく考えることは無い。」

にとり「…ん、わかったけど…どう作業したら?」

ファイナル「図面はそこにある。葵詩のは俺がやるからそれを見てレフィタとミクラスのを頼む」

にとり「わかった!」

ファイナル「よし、とりあえずこっち来い。説明する……」


〜〜〜

力丸「…………」

ジェイ「力丸。」

力丸「…ジェイ」

ジェイ「頭は冷やせたか」

力丸「…できる訳ねぇよ…」

ジェイ「相当追い込んでるな?」

力丸「…」

ジェイ「…お前のやった事。それは正しいことだ。竜の国の戦力を増やすために浮遊戦艦を作る。それはいい。」

力丸「問題は…俺がリスクを全く見ていなかったこと…だろ?」

ジェイ「簡潔に言えばそうだ。動力源の魔法具。ひとたびメルトダウンを起こせば全員逃げることすらままならずに消し飛ぶ」

力丸「…俺は…そんなことをしでかしたのに…人の命を大切だなんだとほざいていた…」

ジェイ「…」

力丸「…実質的な司令官としても…浅はかな行動だった…」

ジェイ「よく気付いた。」

力丸「…?」

目の前には手が差し伸べられている。

ジェイの顔に目線を上げれば、優しい笑顔を浮かべていた。

力丸「ジェイ…?」

ジェイ「キツいこと言ってすまねぇな…でもお前を信じててよかったぜ。向こうでみんな待ってる。行こうぜ、隊長。」

力丸「……」

手を握って立ち上がる。

ジェイ「そんじゃ来いよ〜」

力丸「なってめぇ!いい感じの雰囲気にしといて自分だけ先行くんじゃねぇ!」

ジェイ「ははは!」

力丸「おまっ…お前!」

にとり「向こうは賑やかそうだね〜」

ファイナル「あいつらほとんど家族みたいなもんだしな。」

にとり「…え?」

ファイナル「詳しくは言わん。」

にとり「なんだよぉ…」

ファイナル「さっさと終わらせるぞ」

にとり「はいはい…」



霊夢「……」

魔理沙「ん?どうしたんだ?」

霊夢「彼等の技術…凄いわね」

魔理沙「…ま、そうだな〜。魔法を使った技術もあるらしいし私も気になるぜ。」

霊夢「故に危険なものも…」

魔理沙「それは仕方ないぜ。便利なものにリスクは付き物だからな!」

霊夢「……そういえば妖夢たちは?この船に乗ってたはずだけれど」

魔理沙「ん?見なかったぜ?」

早苗「あの人たちなら中の見学に行ってますよ!」

霊夢「…へぇ。そうなの」

早苗「はい!」

霊夢「…」

早苗「それで、さっきからなんで上ばっかり見てるんですか?」

霊夢「違和感がするのよ」

早苗「違和感?」

霊夢「…ええ。」

あの空に…

脅威は陸だけじゃない。

空も、奴らの領域なのだ。

霊夢「─ファイナル!!




─浮遊戦艦『ガーディア』─

ホーク「見つけたぞ。優雅に休憩か?」

デーブン「なら都合がいい。潰してやるぜ」

ドルン「さっさと行こうぜ。気付かれたら面倒だ」

ホーク「…そうだな。奴らに向けて主砲を撃て」

「了解!」

ホーク「ガーディア。」

ガーディア『─サポートAI No.00´ ガーディア。起動しました─』

ホーク「船の管理を任せる」

ガーディア『了解。これよりガーディアはAI操作に切り替わります。』

「目標補足!」

ホーク「発射完了次第撃て。私から言及がない限り各々の判断に任せる」

「了解!」

ホーク「『空の監視者』として…貴様達を排除する─」


ファイナル「─伏せろ!」

頭上で破裂する榴弾の爆風。

事前に張っておいた結界で弱まっているとはいえ、その威力は健在だ。
…あと数発耐えられるかどうか。

にとり「できた!2隻ぶん!」

ファイナル「載せろ!ジェイ!」

ジェイ「任せろ!」

ファイナル「にとり!あいつらを乗せて先に浮かんでろ!ヘイトを稼ぐのは後でもいい!」

にとり「わ、分かったよ!」

ファイナル「…タイミングが悪すぎるんだよ…!」

エンド「2発目!来る!」

ロッキー「ショック姿勢!」

レグルス「ミクラス!」

ミクラス『はい!』

レグルス「少しでも構いません!迎撃を!」

ミクラス『承知しました!迎撃を開始します!』


ホーク「今更遅いわ。撃─ッ!?

「被弾!」

ホーク「あやつらか…3番、4番砲を向こうに向けろ!副砲もだ!」

ガーディア『…まもなく、姉妹艦が到着します』

ホーク「…ステルヴンと…レッドモンドか」

ガーディア『到着予想、30分後。』

ホーク「そのくらいなら十分だ…デーブン!」

デーブン「なんだ!」

ホーク「奴らの船の横に付ける。突入しろ」

デーブン「任せろ!」

ミクラス『敵艦、葵詩に攻撃開始!』

ファイナル「─よし!ミクラス、飛べるか!」

ミクラス『動作確認中…はい!飛べます!』

ファイナル「発艦!!

ミクラス『了解!ミクラス、発艦!』


力丸「レフィタ!」

レフィタ『レフィタ、発艦!』

セイ「急いで!」

トート「火力を分散させよう!」

力丸「やつの周りを旋回しつつ砲撃!」

レフィタ『了解!撃ち方始め!』

ジェイ「…飛行安定…計器異常なし…」



ホーク「…セイとトートはそこか。突っ込むぞ」

ガーディア『接触します』

デーブン「よし行くぞドルン!」

ドルン「任せろ!」

甲板へ駆け出していく。



ジェイ「まさか…力丸!あいつ突っ込んでくる!」

力丸「回避!」

レフィタ『間に合いません!激突します!』

力丸「うおあ…っ…」

ジェイ「くっ……」

外から聞こえてくる足音がふたつ。

ジェイ「…力丸!乗り移られた!」

力丸「馬鹿な!?

レフィタ『はわわ…』

こうなった以上、直接戦うしかない。

力丸「レフィタ!お前はガーディアに集中しろッ!」

レフィタ『わ、分かりましたっ!』

ドルン「うおおぉ!!

セイ「!」

急所を狙った突きはギリギリで避けられた。

トート「お姉ちゃん!」

デーブン「余所見してんじゃねぇ!」

トート「うあっ!?ふぐぅっ!!

セイ「トート…!」

ドルン「死ね!」

力丸「させるか!」

ドルン「邪魔すんなぁ!」

力丸「っぐ…!」

ジェイ「ちいっ…!」

デーブン「ガハハハ!! 残念だったな!喰らえ!」

脳が揺れるほどの頭突き。

ジェイ「あがぁっ………──」

そのまま足元がふらつき、崩れる。
─たった一撃で、ジェイが沈む。

デーブン「ガハハハハハ!!

トート「…!!」

デーブン「おっとあぶねぇ。」

トート「あっ…」

足首を掴まれ、床に叩き付けられる。

トート「あぐぅ……」

デーブン「まずはてめぇからだ…トートォ!」

トート「あぐ…」

髪を掴み、無理やり立たせて蹴り飛ばす。

トート「うああっ…」

セイ「トートッ!」

抱き締める。
強く、強く。
弱々しくトートが抱き返してきた。

デーブン「…まぁいい。2人まとめてあの世に送ってやる」

セイ「っ……!!

涙ぐみながらデーブンを睨みつける。
我ながら情けない。
この顔はトートにはとても見せられない顔だ。
…でも、せめて最後に姉らしく、妹を守りたい。

デーブン「死ね」

凶刃が2人の腹部を貫く。

トート「ぁが……っ…ごふ…っ…」

セイ「───ッ!!

デーブン「ドルン。戻るぞ」

ドルン「こいつらは?」

デーブン「放っておけ」

ドルン「どうせなら殺そうぜ」

デーブン「雨水がない以上殺せん」

ドルン「…ちっ。仕方ねぇな」

2人が室内を出ていく。

力丸「…ちく…しょ…ぅ……──」

意識が…
ジェイ…セイ…トート…
すまねえ………


トート「おねぇ…ちゃ…ど、こ…?」

血を吐き出しながら、呟いた。

セイ「ここに、いるよ…トート…」

トート「よか、た…ぉ……ちゃ…………」

セイ「トート…トート……っ…!!

最後の最後に、残っている力全部を使ってトートを包む。

トート「──────」

セイ「いつでも、─いっしょ、だよ…トート───────」





──葵詩──

葵詩『レフィタ…沈黙…』

霊夢「…そんな!?

魔理沙「霊夢!今は嘆く時間じゃない!私達も危ないんだぞ!!

ガーディア船員「殺れ!」

魔理沙「…こんのぉっ!」

ガーディア船員「うわあっ!」

妖羅「はっ!」

ガーディア船員「あぐあぁっ!」

まさに電光石火のような戦いだ。
外では砲撃。
中では殺戮。
ガーディアの戦力が恐ろしすぎる。

霊夢「霊符──」

蹴散らす。

霊夢「『夢想封印 寂』」

ささやかな悲鳴と共に静寂が訪れる。

魔理沙「よっしゃ!」

葵詩『レフィタ、レフィタ!こちら葵詩!応答せよ!レフィタ!』

突然、無線が入る。

ミクラス『報告!敵戦艦2艦が接近中!撤退を推奨!』

ファイナル『構わん!ミクラス!徹底迎撃する!』

ミクラス『え、えええっ?!?!』

ファイナル『レフィタに近付けろ!』


──ミクラス──

ファイナル「行けミクラス!」

ミクラス『り、了解!』

ファイナル「レグルス!」

レグルス「医療処置の用意は万全です」

─レフィタ内部─

ドアをこじ開ける。

ファイナル「力丸!ジェイ!」

息はあるな。
気絶してるだけか。
セイとトートは─

レグルス「…………」

レグルスがゆっくり首を横に振る

ファイナル「馬鹿な…」

力丸「…ファイ…ナル…」

ファイナル「力丸!」

力丸「…レフィタ…生きてるか…」

レフィタ『はい。今現在これ以上の損傷を避けるため、飛行を停止しています』

力丸「…修復は…できるか」

レフィタ『演算中…………完了。50分を要します』

力丸「聞いたな…?50分だ。耐えろ…」

レフィタ『乗員の危篤状態を確認。死亡者複数。』

ファイナル「………」

力丸「緊急モード…」

レフィタ『了解。緊急モード:集中治療 を開始。』

力丸「並行して船体修復…」

レフィタ『了解。』

力丸「…50分後…レフィタは戦線に復帰する…」

ファイナル「………分かった」

力丸「任せたぜ…」

ファイナル『ミクラス。戻ってこれるか』

ミクラス『既に後方に居ます!』

ファイナル『俺とレグルスを乗せたら葵詩の援護に向かう。』

ミクラス『了解しました!』

ファイナル「行くぞレグルス」

レグルス「はっ。」

──ミクラス──

ファイナル『葵詩!状況は!』

にとり『ずっと前から少しずつ押されてる!』

ファイナル『援護する!』

エンド「全主砲放てっ!」


─ガーディア─

ホーク「ぐ…ステルヴンとレッドモンドは…」

ガーディア『…通信不能。』

ホーク「馬鹿な…!」

ガーディア『警告。甚大なダメージ。避難を推奨』

ホーク「おのれ…!」

駄目だ、沈む─



─────────

ガーディア『…報告。レッドモンドとステルヴンを確認。』

ホーク「…ガーディアは離脱する…撤退だ」

ガーディア『了解。撤退開始。』

─────────

エンド「逃がすな!」

ファイナル「追うんじゃない!まずはこいつらを沈ませる!」

ミクラス『目標、レッドモンド!砲撃開始!!

にとり『葵詩!ミクラスに合わせて!』

ミクラス『葵詩の砲撃、直撃を確認!』

ロッキー「ステルヴンから来るぞ!」

ファイナル「カウンターを食らわせる!」

レグルス「被弾。損害軽微」

ファイナル「撃て!」

弾丸がステルヴンの船体を貫いた。

レグルス「障壁貫通!弾着!」

爆煙が船体を隠す。

ファイナル「この2艦は必ず仕留める!」

続けざまに砲撃を続ける。

ミクラス『敵艦損傷確認!』

ファイナル「沈めろ!」

エンド「─撃て!」

全弾直撃。
爆発炎上。
鉄の塊が空に沈んでいく。

ミクラス『ステルヴン撃破!』

レグルス「レッドモンドから砲撃!」

ファイナル「回避!」

レグルス「間に合いません!」

着弾。
衝撃が船を揺らす。

ファイナル「うぐ…」

エンド「くっそ…!!

ファイナル「反撃!」

ミクラス『やってます!』

障壁が貫通しない。

エンド「硬っ?!

ファイナル「ダメか…」

葵詩『撃って!』

それでも障壁は割れない。

葵詩『そんな!?

ファイナル「くそっ─」

一際大きな衝撃が入る。

エンド「ぐうっ……!」

レグルス「…障壁、貫通されました」

ロッキー「………!!

ファイナル「…最後まで抗うんだ!!最後の最後まで!!

エンド「撃て!撃てえッ!」



──レフィタ──

力丸「…撃て!」

ジェイ「障壁貫通、内部爆発確認。」

力丸「一気にトドメを刺してやる…主砲展開!」

レフィタ『了解!』

力丸「目標、レッドモンド!」

レフィタ『ターゲットロック!』

ジェイ「チャージ完了。行けるぜ」

力丸「─『アルマゲドン』─」


魔法具など比べ物にならないほどの出力。
レッドモンド、蒸発。
戦闘勝利。

ファイナル『…お前な。』

力丸「勝ったんだ。文句はねぇだろ?」

ファイナル『……まあな。それでミクラスをどうしろと?』

力丸「幻想郷にでも置いとけ。俺からのプレゼントだ」

ファイナル『置く場所がねぇよバカ』

力丸「お得意の魔法でちっちゃくすれば良いじゃねぇか。メンテもお前なら簡単だろ」

ファイナル『丸投げかよ…』

ジェイ「諦めろ…慣れたもんだろ?」

ファイナル『…お前も苦労人だな…』

ジェイ「わかってくれて嬉しいぜ、ファイナル」

にとり『はいはーい!葵詩は?』

力丸「やる。」

にとり『やったぁ!』

ファイナル『それこそ置く場所ねぇだろうが』

にとり『何とかするさ!』

ジェイ「…最終的にミクラスと同じようにちっちゃくなりそうだな」

力丸「さて…終わったことだし…俺らは竜の国に戻るとするか?」

ジェイ「仕留め損ねた奴が残ってるだろ」

力丸「ガーディアか」

ジェイ「それまで残るべきだと思うが」

力丸「…ファイナル、どう思う」

ファイナル『残ってくれた方が心強い』

力丸「そうか。…よし。1度試すか」

レフィタ『光学ステルスですね!』

力丸「よくわかってんな。やってみろ」

レフィタ『了解!』

力丸「お前らからはどう見える?」

ファイナル『お前たちが動かない限りは見えないな』

力丸「OK。それじゃどっかに浮かんどくか。手頃な場所を探しに行こう」

ジェイ「はいよ」

力丸「幸い生活する分の物資はあるんだ。余裕はある」

ジェイ「だな」



〜白玉楼〜

エンド「疲れた」

ロッキー「右に同じ」

ファイナル「帰ってこれた…けど」

妖夢「けど?」

レグルス「どうかなされましたか?」

ファイナル「これどうしようか…」

腕に抱えたミニサイズのミクラスに視線を落とす。

妖奈「いつの間に持ってたの?」

妖羅「だいぶ前からだよ…なんで気づいてないんだよお前…」

ファイナル「……重い」

妖夢「持とうか?」

ファイナル「いやいい…あ、そうか最初っからこうすればいいんだ」

突然ミクラスの船体が消える。

妖奈「ええっ!?

ファイナル「…魔法だよ。俺がいつも使ってるやつの応用だ」

妖奈「そういえばお父さん達って帯刀してないよね」

妖羅「それが魔法でしょ?武器を粒子にして魔法具に保存してるんだっけ?」

ファイナル「今は違うがな。魔法具経由だと面倒だから直接出し入れしてるのが現状だ」

妖奈「ねえねえ!今度私にも魔法教えてよ!」

ファイナル「また今度な」

妖奈「やった!」

イゼ「みんな、おかえり。」

妖羅「イゼさん!」

イゼ「よしよし…頑張ったね〜♪」

妖羅「ちょ…いきなり撫でるとか…」

イゼ「ほら、妖奈もおいで?」

妖奈「わ〜い!」

イゼ「よ〜しよしいい子いい子〜♪」

妖奈「えへへ〜♪」

ロッキー「そういえば子供が好きだったな、あいつ」

レグルス「ほう?私は知らなかったのですが」

ロッキー「そうだったか?まぁ話してやるから俺の部屋に来いよ」

レグルス「ありがとうございます。」


それぞれがそれぞれの時間を過ごす。

キルア「ファイナル…?居ますか?」

ファイナル「なんでしょうか?」

キルア「少し聞きたいことが…」

ファイナル「はい?」

少し俯いて口を開く。

キルア「…貴方がなんで私なんかに仕えているのかが…分からないんです…」

ファイナル「ざっくり言いましょう。貴女の覚悟を折らせぬ為です」

キルア「…覚悟?」

ファイナル「あなたは人から竜になりました」

キルア「…はい」

ファイナル「「何も知らずに笑っている自分が嫌だ」と、あなたは俺に言いましたね。」

キルア「覚えてるの…?」

ファイナル「その正直な言葉と…本当に半竜になりたいという信念があなたの目から伝わってきました。…貴女の覚悟はそこから感じ取りました」

キルア「……」

…人から成り下がる。
それが半竜になるということだ。

ファイナル「半竜になったことを後悔はさせません。」

レイルは…あいつは…
あの健気な姿に隠れた真実は痛々しい。
だから…キルア様を絶望させたくない。

ファイナル「…あなたは…俺の主です。せめて…執事として…付き人として、貴女を守らせてください…」

キルア「…はい…!こちらこそ…よろしく…!」

にこにこと笑った顔で見つめてくる。
…人という神聖な身体を捨ててまで、竜になったあなたは…
なんで、そんな顔ができるのですか?
どうして…笑っていられるのですか…

ファイナル「…それでは、失礼します。またお呼び下さい」

部屋を出ていく。
今日はやけに涼しい。
心が空になった気分だ。

ファイナル「…」

妖奈「お父さん?」

ファイナル「妖奈か。どうした?」

妖奈「お茶でも飲もうかな〜って」

ファイナル「俺が入れようか?」

妖奈「ほんと?」

ファイナル「遠慮するな」

妖奈「ありがとう、お父さん!」



〜〜〜〜

ファイナル「……」

お茶を入れるのは慣れたものだ。
時刻はもう夜だ。

ファイナル「珍しいな。こんな時間まで起きてるなんて」

妖奈「…なんか今日に限って眠れなくて…」

ファイナル「なんかあったのか?」

湯呑みを渡す。

妖奈「ありがと…でも思い当たることは何もないんだよ…?」

ファイナル「あまり思い詰めると体に悪いぞ?」

妖奈「うん…」

頭の上に手を置いて撫でる。

妖奈「…!」

ファイナル「なんかあったら言うんだぞ。俺はお前達の父親だ」

妖奈「お父さん…!」

ファイナル「頼れ。何がなんでも守ってやる」

妖奈「うん!」

ファイナル「それじゃ、それ飲んだら寝ろよ。おやすみ」

妖奈「おやすみ〜!」



後ろ手に襖を閉める。
そこには妖夢が立っていた。

妖夢「ふふ。「俺はお前達の父親」だって。かっこいいじゃん」

ファイナル「…言うな。恥ずかしくなる」

妖夢「良いでしょ別に。」

2人で並んで廊下を歩く。

ファイナル「お前も寝れないのか?」

妖夢「そんな子供っぽい理由じゃないもん」

ファイナル「じゃあなんだ?」

妖夢「…一緒にいたいだけ」

ファイナル「そうか。なら少し散歩にでも行こう」

廊下から庭に出て、白玉楼から離れていく。
その辺りで妖夢が腕を抱き締めてくる。

ファイナル「可愛いやつめ…」

妖夢「…」

顔は見てないがきっと赤いんだろう。
一緒に居ることが出来たらそれ以上の満足は求めない。
これあくまで俺の主観だ。
妖夢がどう思ってるか?
わからない。
俺はさとり妖怪じゃない。

ファイナル「妖夢。」

妖夢「なに?」

今なら誰にも見られないさ。
妖夢の腕を解いて顔を真っ直ぐ見つめる。

ファイナル「─愛してる。これまでも、これからも─」

妖夢「─うん…んっ?!

答えを聞いてから、その口を塞ぐように唇を重ねる。
─長く。
お前すら失ったら…
今度こそ、心が壊れてしまう。

口をゆっくりはなす─

妖夢「えへへ」

笑う。
それだけで心が満たされる。

妖夢「ありがとう。わがままに付き合ってくれて」

ファイナル「構わない」

妖夢「帰ろっか。」

ファイナル「もういいのか?」

妖夢「まだいいの?」

ファイナル「帰っても暇だからな」

妖夢「寝なよ…」

ファイナル「一理ある」

妖夢「真理しかないよ?」

ファイナル「でも暇なのは事実だ。たまには外に出て気分転換がしたい」

妖夢「そっか。じゃあ一緒に行こ?」

ファイナル「ああ」

─────────────

力丸「おう、ジェイじゃねぇか」

ジェイ「こんな時間に甲板に来るとか馬鹿だろお前」

力丸「ブーメランだぞ、それ」

ジェイ「…うるせぇ」

力丸「んで何してんだよ寝っ転がって」

ジェイ「ただ月見てるだけだ」

力丸「んじゃ俺も。横いいか?」

ジェイ「…」

力丸「よっと。つめてぇな甲板」

ジェイ「…やっぱ馬鹿だろお前。」

力丸「馬鹿でいいんだよ。実際馬鹿だしな!」

ジェイ「……はぁ」

力丸「正直なんで俺がゼロの隊長になれたのかはわかんねぇ」

ジェイ「…信頼じゃないのか」

力丸「かもな」

ジェイ「……帰りてぇよ。」

力丸「どっちにだ?」

ジェイ「…竜の国へも戻りたいし、このまま幻想郷に降りていって鈴湖と一緒に過ごしてもいい」

力丸「鈴湖…ああ、この前言ってたな。「幻想郷に用事が出来たからしばらく帰らない」って」

ジェイ「…可愛いやつだ。玉兎なんだけどな」

力丸「玉兎だぁ?」

ジェイ「機会があれば紹介してやる」

力丸「ほう?楽しみにしてるぜ?」

ジェイ「期待してろ」

力丸「ははは!」

ジェイ「…はは」

力丸「……いい眺めだな」

ジェイ「そうだな。昔を思い出す」

力丸「…やめろ。俺らの昔話は」

ジェイ「俺だって話したくねぇよ」

力丸「………」

ジェイ「…こういう日は1人で静かに泣きたくなる。お前はどうだ?」

力丸「俺は…そうだな。どこかの寒空の下を1人で歩きたい。気が紛れるような鼻歌を唄いながらな」

ジェイ「意外だな。俺はてっきりバカ騒ぎすると思ったが」

力丸「それで忘れようってか?…それこそ馬鹿のすることだ」

ジェイ「…」

力丸「…そもそも、産まれてくる時代が悪すぎたんだよ、俺らは」

ジェイ「否定はしない」

力丸「…そもそも、半竜人に産まれたのが不運だったんだ」

ジェイ「……」

力丸「なぁ知ってるか?半竜人は寿命でしかマトモに死ねないらしいぞ」

ジェイ「知ってる。お前が言いたいのは「大虐殺」の事だろ?」

力丸「察しがいいな」

ジェイ「寿命でしか死ねないはずの半竜人が、何故いとも容易く命を落として行ったのか」

力丸「この前な、その謎がわかったかもしれない、って言って俺の部屋に飛び込んできたやつがいるんだよ」

ジェイ「ほぉん」

力丸「そいつの言う限りだとよ、「雨水」らしい」

ジェイ「確かに俺らは雨に弱いもんな」

力丸「それをなんやかんやして、半竜人を殺してた、って訳だ」

ジェイ「なんか報告書にあったな…学か?」

力丸「お、よくわかったな」

如月 学(きさらぎ がく)
現在妹が行方不明になっている、
竜の国の科学者だ。
たまに医者もやってるらしい。

ジェイ「しばらく会ってないな」

力丸「今度顔見せてこいよ」

ジェイ「そうするかな」

力丸「……やべぇ、眠い」

ジェイ「俺も…眠くなってきた」

力丸「…風邪引くかもしれねぇけど…ここで寝るか?」

ジェイ「馬鹿は風邪引かねぇよ。寝ろ。俺も寝る」

力丸「…ははっ!んじゃ、おやすみな。ジェイ」

ジェイ「さっさと寝やがれ、力丸…」

まもなく力丸の寝息が聞こえてくる。
そっと起き上がり、艦内から毛布を2つ取り出し、戻って来て、
力丸に1つをかけてやり、もうひとつは自分で被って眠る。
…今夜は悪夢を見るかもない。
だが許してやろう。
その悪夢すら、俺は笑ってやるよ。
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