恐怖の激安ツアー

文字数 2,624文字

池乃が学生だった頃、「なんか旅行が趣味ってかっこいいよなぁ」という思いつきから、旅行に行きまくってた時期があります。

今から思えば相当危ない目にも何回か(ほぼ毎回)遭遇してますが、今回は友達のカバさんと初の海外旅行に行ったときの話です。

事の始まりは、大学の台湾人留学生が、
「日本人がアメリカ人を好きなように、日本人が台湾へ行けば猫も杓子もモテまくる」と言ったことが発端。

よっしゃ~!台湾へいってモテまくろう!と、カバさんを誘って行くことにしました。
とはいえ貧乏学生ですのでお金も全然なく、旅行会社でとりあえず最も安い値段で台湾へいけるツアーを探してもらいました。
すると相場の半値くらいのツアーがあり、内容もよく確認しないでそれに即決!

ところが旅行の数日前、カバさんと一緒に旅費を下ろしに行き、マクドのトイレで置き忘れて全額盗まれるという事態に遭遇!
あまりに幸先が悪い。
この時点で呪われし格安ツアーの恐ろしさを察するべきでした。

泣く泣く残りの貯金も全て下ろし、いざ台湾へ出発です。
飛行機で数時間、国内旅行とそんなにかわりません。

で、台湾の空港で現地のガイドさんのお出迎えです。
きれいなお姉さまのガイドを期待してましたが、
リーマン風のお兄ちゃんがガイドです。

で、訛りのある日本語で挨拶もほどほどに、さっそく台湾めぐりです。

が、乗せられたのはフロントガラスにヒビの入った、タバコのヤニだらけの小汚いマイクロバス。客も池乃とカバさんしかいません。
このまま裏社会に連れて行かれそうだったので、「客は僕らだけですか?」とガイドに尋ねると、「いや、すぐに日本からのお客様と合流します」というので一安心。

で、日本人の教師団体5人組と合流し、観光地をまわります。

ハイペースで観光がすすみ、何かおかしい雰囲気はあったのですが、故宮博物館にいったときに衝撃の事態が!

「故宮博物館は本日お休みですので、バスから建物を眺めるだけにして下さい」

へっ!?
入れへんの??
門の外から建物眺めて何がオモロイの??
全て計算ずくの匂いがプンプンしてきます。

夕方頃台湾料理の店で食事。
店員がメニューの説明をした後、なっかなか料理が出てきません。
30分以上待ってます。
そのかわりに、素性の知れない謎の女が池乃らに万年筆を買わないかと日本語ですすめてきます。

そういえばさっきから行く先々でこのようなお土産売りみたいなのに遭遇します。
台湾ではそんな商売が流行っているのか・・・?

その万年筆、数千円します。花柄の変な万年筆です
台湾に来てノンブランドの万年筆を数千円出して買う奴がいますかっ!
ほんでお前だれやねんっ!

あまりにひつこいので必死で無視してると、一緒にいた教師団体の一人が、「せっかくの記念だから、君達の分を買ってあげるよ」と、池乃とカバさんに数千円の万年筆を買ってくれました。
ありがたいですが、全っっっ然いらんのに・・・と思っていると、謎の女が消え、即座に料理が運ばれます。
ここで池乃とカバさん、ようやくピンときました。
「そうか、このツアー、あの売り子の売りモンを買わんと、次の目的地に進めんし、飯もでんのか!?」
おそらく旅行会社と売り子が契約してて、売れたらいくらかを旅行会社にバックしているんでしょう。
ここに着くまで、教師連中はかなりの金額のワケの分からんモンを買わされとったに違いありません。
池乃らが無知なばっかりに…。
池乃らは申し訳なさでいっぱいです。
気まずい夕食を終え、ホテルに行きますが、でっかーーーーーいホテルの横の小さいホテルでした。
ホントに期待を裏切らない(笑)。

次の日は自由行動で、池乃が台湾の漫画を買いたいと駄々をこねて、本屋へ行きました。
途中道に迷い、カバさんが通行人を捕まえて英語で道を尋ねますが、全く伝わりません。
発音が悪いのかと必死で説明しますが、それでもダメ。
何故か?
池乃は英語が話せればどんな国でも行けると当時は思っていましたが、日本人が英語教育を受けていてもしゃべれないように、台湾人も英語がわからんかったようです。
結局ジェスチャーで切り抜けます。

海外へ行って本屋で漫画を買い、わざわざ台湾で昼食はマクドです。
なにしに行ったのかさっぱりです。
しかし物価が安いのか、Mサイズのポテトとコーヒーがバケツ並みの多さで食いきれません。
ハンバーガーもでかすぎです。
日本のSサイズシェイクはおちょこ並みです。

その後、思いつきで台湾の美術館に行ったのですが、タクシーの運ちゃんが日本語ペラペラで驚きました。
きけば台湾の年配の方は日本語がある程度しゃべれるそうですね。

3日目、バッタモンのブランド品の店に連れて行かれて、この後は日本に帰国です。
気孔の達人に会うとかいって、首に槍をさして力ずくで折るというパフォーマンスを見せられ、すごいなぁと感心してると気力がアップするという漢方薬を買わされそうになるという生き馬の目を抜くようなこともありましたが、それはそれで楽しかったなぁと感慨にふけっていると、この後まだ生き馬の目を抜き鼻をそぎ、腹を掻っ捌くような事態があろうとは…。

地下の店から地上に出ると、街には人っ子一人いません。
そして街中にサイレンが鳴り響いています。
ガイドが早く車に乗れとせかします。
この時点で教師連中とは別になっていたので、池乃、カバさん、ガイドの3人を乗せたオンボロバスが、無人の街を走ります。

けたたましくサイレンの音が鳴り響き、あちこちに警官が立っています。
で、少し走るごとに警官に止められ、そのたびにガイドがパスポートを見せながら警官とヤイヤイやりあいます。

明らかに異常事態です。
何が起こっているのかさっぱりわかりませんし、こんなにとめられては帰りの飛行機に間に合いません。
ガイドに何が起きているのか問いただすと、しぶしぶといった感じで、
「万一の有事に備えて、街全体で非常事態の訓練をする。今日がその日です…」
な・ん・で・す・とーーーーーーー!!
そんな日があると分かっててツアーくんでんの??
そら安いわ!
現地人には非常事態訓練かもしれんけど、池乃らには非常事態の実戦でっせっ!

なんどもなんども警官に止められ、ようやく空港に着いたのは飛行機のチェックインギリギリの時間。
なんとか日本に帰ることができたのは、ツアーの予定通りなのか、たまたま運が良かったのか。

皆さんも台湾へ行ってもモテまくることは全くないですし、格安ツアーには充分お気をつけください。
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