目の男

文字数 346文字

一陣の風が吹く。
ようやく新設されたという駐輪場の前で、男はため息をついた。
灰皿にされたような空の色に反して、周りの住宅にかかったブルーシートはまだはっきりと青い。
「これが先輩の仕事ぶりか」
そう呟くと、男は携帯を取り出し写真を眺めた。

ガラスの散乱した民家
根元がむき出しになった公園の樹木
あべこべに向いた信号機
川に浸かる車
タンカーに激突された連絡橋
嘆く声の報道

その時、男に激痛が走った。
痛みの方を見ると、少女が果物ナイフをわき腹に突き刺している。
「あんたたちのせいで…」
「俺を殺したとこ、ろで…後釜は何人だ、っているの、さ…」
そう言い残し倒れた男の携帯がぶるっと震えると、どこかで一筋の光が地上に落ちた。

「そんな…」
液晶画面の通知が、少女の目に入る。
『台風17号発生・近年にない勢力で日本に接近』
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