まいどあり
文字数 395文字
ポルシェが走り去ったのを横目に、中年男が店に入ってきた。
「へへ、まいどあり…今日は忙しい日だねぇ」
店主の小言を断ち切るように、男はタワーマンションの所有権と遊ぶ金を要求した。
「へぇ、構いませんけど。差し出すものが分かっての事なんでしょうねぇ?」
男は会社をクビになり妻にも逃げられ、余生は女を連れ込んで毎晩遊ぶんだと言い張った。
遠くの道で轟音が聞こえると、煙の臭いが二人の鼻先をかすめた。男は身震いする。
店主は地図を出した。
「ここがお前さんの部屋になっているからね。そこに金も積んである。ささ、気が変わらないうちに…」
男は地図を握ってそそくさと立ち去った。
「へへ、まいどあり…」
店主が一服ついていた頃、老婆が店を訪れた。
「ばあさん、アンタはだめだ。生い先短くちゃあ払えるもんも払えねぇだろ。ささ、帰っとくれ。」
翌週、ベランダ転落死亡事故が報道された。
現場はあの男の住むタワーマンションだった。
「へへ、まいどあり…今日は忙しい日だねぇ」
店主の小言を断ち切るように、男はタワーマンションの所有権と遊ぶ金を要求した。
「へぇ、構いませんけど。差し出すものが分かっての事なんでしょうねぇ?」
男は会社をクビになり妻にも逃げられ、余生は女を連れ込んで毎晩遊ぶんだと言い張った。
遠くの道で轟音が聞こえると、煙の臭いが二人の鼻先をかすめた。男は身震いする。
店主は地図を出した。
「ここがお前さんの部屋になっているからね。そこに金も積んである。ささ、気が変わらないうちに…」
男は地図を握ってそそくさと立ち去った。
「へへ、まいどあり…」
店主が一服ついていた頃、老婆が店を訪れた。
「ばあさん、アンタはだめだ。生い先短くちゃあ払えるもんも払えねぇだろ。ささ、帰っとくれ。」
翌週、ベランダ転落死亡事故が報道された。
現場はあの男の住むタワーマンションだった。