そっくりさん

文字数 374文字

「じゃあいくぞ?」
タオルの端を濡らした様に、夕日の傾きが校舎を黒く塗りつぶしていく。
まだ日の届く机には、ひらがなの書かれたわら半紙と、隠し持ってきた硬貨。
その硬貨に未だしわのない指を重ねている。
「そっくりさん、そっくりさん。どうぞおいでください…」

決まった段取りを成功させれば願いが叶う、N地方に昔から伝わる占い。
別のクラスの友達がねだっても買ってもらえなかったゲームを、翌日持っていたので真似したのだった。
「もしおいでになりましたら…」
ぴくり、硬貨が動く。
途端、汗が噴き出たが、少年は冷静に念じた。
(学校なんかなくなって、もっと遊べますように)

結局、無事成功したようだが周りに見える変化はない。
「なんにもなかったね。」
少年は遅くなったので親に電話を掛けた。
プルルルル
「あ、お母さん?そろそろ迎えに…」
「一家団欒しているところです。息子ならさっき」
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