第25話 TOSHIDA 再襲来!

文字数 8,091文字

「じゃあ続き行くぜ」

「前も言ったけど石井が短すぎて土志田が長すぎるよ」

「そうだなあ、ちゃんとバランスを考えないといけないか。土志田の次の奴からは気を付けるぜ」

「お願いよ。一人一人の文字数を平均的にしてくれた方が分かり易いし……って、次の奴が居るって言うネタバレをしないでよ!」

「お、おうごめんよ……ついうっかり……え、えっとどこまで話したっけ? あ、あれだあれ。確か金曜の午後、一週間の最終日で、既に納期分も終わっていたので疲れていて、少し機械に背中をもたれながらで仕事してたんだ。そうしたら川谷に報告して一緒に見に来た」

「週末はへとへとになるよね。奴は若いからそこまで大丈夫って感じか」

「ああ、俺の方が年上だし疲れ易いなんて土志田だって分かっている筈なのに、それくらいスルーしてもいい内容なのに……わざわざ言い付けたんだ。恐らく、

『鈴木が機械に寄りかかって楽してますよ。よろしかったでしょうか?』

とでも報告したんだろうな……でもよ、んな事どうでも良いと思わねえか?」

「え? そんな事で言いつけたの?」

「そうだ。だって川谷と土志田がそれを見た直後に、二匹そろって俺を見に来たんだ。1分後にな」

「ああ、そりゃ言い付けたんだわ。分かり易いクズね。マジでぶん殴りたいわ」

「俺もだぜ。はあああああむかつくわ……俺のこの、一見軽いサボり行動にしか見えない事でも、奴の中では

【上司に報告しなくてはいけない程に悪い事】

と判断した様だな。正義感の塊でかっこいいよなあ男の中の男だぜ」

「心にも無い事をww」

「で、それを信じ付いてくる川谷も川谷だよ……どんだけ相思相愛なんだよ……気持ち悪いなあ……1年目の癖に新しい仕事を覚えようともしないで、俺をつぶさにチェックして、少しでも俺が法に則った行動をしていないと判断するや否や、ノータイムでリーダーにチクる……一応20年。でもバイトだから社員の土志田よりも少ない給料で頑張っている大先輩が、週末の在庫分の品物を加工してるまったりとした時間まで妨害しようとして来たんだ」

「生意気ねえ。でもこいつはそこまで技術は無いって事か」

「そうだ。あのラスボスの様な威圧感があり、仕事がいかにも出来そうな顔なのに全く出来ない。何故なら今の様に俺をチェックする事に命を懸けているからだ」

「見習いラスボスか……」

「wwww」

「お? 受けたw」

「見習いとラスボスって組合わされる事ない言葉だからなあ。ある程度完成しているのがラスボスだ。その対極が見習い。で、うっかり笑っちまったw」

「ずっと内藤への手紙で笑わされてたからねえ。私も笑わせたいと思って考えたのよw」

「そうか面白かったのか? 嬉しいぜ!! あいつを文面だけで攻撃しようと思って書いただけの手紙に面白さがあったとは……だがある程度休んだらずっともたれ掛かっているってのも悪いと思ったので、普通の状態に戻った」

「うん」

「で、そのタイミングで川谷を連れてきたせいで奴の思惑通りにはならなかった」

「ずっと同じポーズでいる訳ないよねwこの辺も頭悪いわねw」

「あっ! って顔してたぜ?」 

「え? それおかしくない?」

「ん?」

「ああ、戻ってくれたんだ良かった……これで美しい木林製作所が保たれる……嬉しい……とは思わなかったって事よね?」

「そうだな。まああいつはそんな事を考えない。あんな顔だし」

「そうね。だから川谷を呼んで戻ってくるまでは寄りかかっていてほしかったって事よ。良い事なのに驚いてたって事は」

「そうだな。で、

【あっ、あいつもたれ掛かってない! 折角言いつけて怒って貰おうと思ったのに……不思議だ……】

と……悔しそうな感じの表情だった。自分と川谷の仕事中にそれを中断してまでこれを言いつける必要性ってあるか?」 

「無いよ」

「そこまで俺が憎かったのか? あんな顔で」

「最低の部下ね」

「それで分かったんだ。鈴木もずっと同じポーズをしているとは限らないって事をな」

「土志田も一つ賢くなったわね」

「ああ、で、もう一度土志田が来た時に敢えて分かり易くもたれ掛かっている姿を見せつけても、2度と言いつけに行く事は無くなった。奴が来てから敢えて、

『ああーなんか疲れたなあ。ようし、よっこらせっと』

って聞こえる様に言いながら奴の見ている前で大袈裟に寄りかかって見せたんだがなあ。逆にわざとらしすぎたかな? この演技に引っかかって、言いつけに言って、また噓つき呼ばわりされればいいと思ったが、流石に警戒し始めたようだな。川谷を連れてくる間ずっと同じ状態でいてくれるかは分からないからな」

「確かに」

「また恥をかくのは嫌だったから。言いつけるのは危険かもしれないと言う事に気付いてしまったんだ。まさか、あいつ、すっげえ頭の良い男だったのかあ?」

「ww」

「ここから分かる事は、かつては悪いと思っていて、上司に報告してまでして止めたいと思っていた筈の正義を、

【たった一回のミスで違和感に気付き】

諦めたんだ。だが、本当に正義の心があるのならどうする?」 

「えっと、例え鈴木さんに殺されるかもしれないとしても何度も何度も食い下がり、土下座してでも止めようとするわ。何百回殴られても」 

「そうだ」

「ww」
 
「それも見てる前で見せつける様に寄りかかって見せたんだぜ? いわば現行犯だ。
奴に本当の本当に正義の心があるなら、

『仕事中に機械に寄りかかるのはいけないと思います。よろしかったでしょうか?』

と直接言えばいい」

「言い方ww」

「それか、

『あの、鈴木さん。1分だけその状態で固定でよろしかったでしょうか? その間に川谷さんを呼んできますので。よろしかったでしょうか?』

と言って足止めすればいい」

「そんな事思ってても言う訳ないじゃんwww」

「本当に正義の心があり、この俺の一休みが奴の中では殺人よりも重い悪行であるとすれば、それくらいしないといけない。
まあ仮に言ったとしても完全無視するけどな」

「聞く訳ないよねw」

「やっている事が最悪、例えば悪口を堂々と言う、俺の行う例え一般的には良いとされている休み時間に行う筋トレも、俺がやった場合は全部否定的、俺の傍と遠くでは明らかなる二面性があり、毎秒毎秒悪臭も放つ。見るに堪えない恐ろしい顔面。それらを既に俺にバレているのに、その上でいくら正義面したところでその正義は正義と言うペルソナに覆われた俺への攻撃と言う事は明白。
奴の言葉に正義の意思は皆無。だが、薄っぺらい正義を振りかざし、俺を攻撃したいだけの大馬鹿。でも自分にはその力が無いから強い者に言いつけるしか出来ない。だがずっと同じ状態でいるかも分からない事を何と

【たった一回】

の失敗で理解し、確実性が無いと理解した以上、それを止めたいと思っていても行動しない」

「土志田も2つ賢くなったわね」

「成長期www」

「あんな顔




で正義の味方です。と言っても説得力が無いんだ。観相学を馬鹿にしてはいけない。顔と性格は間違いなくリンクする。間違いなくこれは悪人顔だ。悪人は悪事しかしない。それでも正義を貫きたい。表面だけでも。呆れるわ……考え方、顔、声、臭い。全てが嫌いだぜ。良いか悪いかで比較できる部分が全て悪い男」

「例えば?」

「頭、悪い。顔、悪い。声、悪い。性格、悪い、体臭、悪い」

「改善点が多すぎるww」

「改善できねえよあんなの。その若さで全てが悪い男。好きになる要素が無い」

「そうね。この顔で




いい人間なんていないわ」

「おう!」

「しかしこれ本当に一年目? かなりハイペースで攻撃してくるじゃん」
ゲシゲシ
土志田のブロックを蹴りつつ言う。

「こいつが入社当時から嫌な予感がしたんだが、見事的中した。何故かそういうのを的中させるのは上手いんだよな俺。名木の時もなんかやばいと思ったんだよ……で、蓋を開けりゃああんな内容のクズ。何で嫌な予感ばっかり当たるんだよ……てか新入社員が全て嫌な奴で困る。社長は俺を攻撃する、奴の味方になりそうな精鋭を面接で見極めてから入社させているのかと思う程にだぜ」

「私もそう思うわ。社長って本当に嫌な奴ねえ……救い様がないよ……こんな会社も後輩もみんな消滅してしまえばいい……私なら……蘇ったら……場所を突き止めて……逃がさない様に外堀を固めて……追い詰めて……何度も何度も……」
ぶつぶつ

「おいおい? なんか物騒な独り言言ってねえか? そんなのは止めてくれな? 社長や川谷共に俺の過去を全て聞いたからな。オソローイの話とかバイトだから土志田よりも下だって事も。だから馬鹿にしても良いと思っているのだろう。しかもみんな同じ考えを持っているって所も怖いぜ」

「最低……土志田って銅鑼衛門の脛男みたいな男ね」
ポーイ
土志田ブロックを投げ捨てる。

「良い例えだ。さっきも言ったけどとんでもない悪臭を毎日届けてくれる男が、少しの時間もたれ掛かっただけで悪い事をしていると判断し、川谷に言いつけ叱ってもらおうとした訳だ」

「土志田だって川谷と仲良く陰口叩いてるんでしょ?」

「陰口は良い、だが疲れて、ちょっともたれ掛かって仕事するのは絶対ダメという事だ。あいつだって仕事中に腰かけて仕事してる時もあったんだ。それを俺に見られていてもその点はOK。だが先輩の俺が疲れて寄りかかっているのはダメと言う後輩」

「りっふじーん」

「後輩なのに、ちっとも可愛いと思えない。これが大体の土志田の特長だ」

「クズね」

「そして、二人は、お互いのポテンシャルに気付いた。すると、磁石のプラスとマイナスの様に惹かれ合うように寄り添い、タッグを組んだ。さあ、最強が生まれた。たった二人ぼっちで最強だ。最強の二人が……今、降臨したんだよ!」

「きたああああああ」

「ここからはびっくりの連続だ。衝撃に備えろよ?」

「はいっ!」

「いくぜ! ……うおおおおおおお」
ごとっ



「これは?」

「これはとりあえず中身も……うおおおおおお」
ごとっ



「これはプランジャーと言って、何に使うかは分からんが未加工品だ。だから加工してまたこの上に乗せるんだ。だから、一旦ここから下ろさないといけない。それは本来リーダーの川谷の仕事。まあ100パー俺が下ろす事になるが」

「へえ」

「因みにこれは水で加工するのでそのままにしといたら錆びちまう。鉄の材料だからな。で、帰りの間際にはやってはいけないんだ。もしやってしまえば帰る前にしっかりと水を飛ばす作業をしないといけないからな。そうならん様、帰りの時間付近にその仕事をやっていた場合なら、水をしっかり飛ばして乾いたのを確認した後に別の仕事に変更する」

「それしかないよね」

「なのに川谷は敢えて別の仕事をやっている俺に、帰り間際の時間帯にプランジャーをやれ。と、指示を出す場合がある」

「なんで?」 

「自分の受け持ってる分野以外は勉強しない。これが水仕事と知っていても、材質的に錆びるという事すら知らない」

「成程ねえ。素人以下じゃん」

「そうだよな……おっと、これは川谷の時に言うべきだった事だ。ごめんよ。分けて言っちまった」

「いいよいいよ時間は無限にあるし。8箱もあるね。大変そう」

「そう、1箱20キロくらい。合計160キロだ。アリサちゃん、1枚目の右側に青い箱があるだろ?」

「うん」

「これを8個の箱が置いてあるところに置きたい場合どうする?」

「それは……8箱を下ろしてから乗せるわ」

「だよな?」

「え? それ以外ある?」

「あったんだ」

「どんな方法?」

「二人はこれが俺が受け持つ仕事と分かっていて、これを下ろすという事は暗に俺の手伝いをしてしまう。それだけは嫌だ。何故なら奴らの中では俺は敵らしいから……理由は分からん。だが絶対に下ろしてくれない。だが乗せておかなくては運んで貰えない。それも急ぎの品だから」

「うん」

「だから、それ以外の方法を導き出す為、最強達はその8箱を見ながら約3分相談していた」

「最強達w存在自体が矛盾してるw」

「俺はその傍の機械で奴らの行動を見ていたんだが、何を言っているかまでは分からなかった。だがあの8個の箱を見て真剣な眼差しで相談していたので、それに関する事だと何となくは思っていた。そして、相談が終わり結論が出た。そして最強達は行動に移った。どうしたと思う?」

「分からないわ」

「箱の下に2段に重なっているパレット、それはフォークリフトで運ぶんだ」

「うん、内藤のとこでも聞いたよ」

「で、パレットの隣、具現の左下に見えにくいけど、木の台があるだろ?」

「うん」

「パレットの隙間に本来フォークの歯を入れる筈の穴があるんだが、最強達はそこに目を付けた。よく見ると分かると思うが二段重ねなんだ。で、上の段のその穴に手を入れて、持ち上げて隣の木の台の所に持っていこうとしたんだ」

「そうするとどうなるの?」

「下の段には何も乗っていない。だから上のパレットを最強達の剛腕で持ち上げ、木の台の上にずらし、下の段の空いたパレットに乗せると決めたらしいんだ」

「でも160キロでしょ? 二人で持つなんて無理よ。一人80キロだし」

「ああ。そうだ。そうなんだが、最強達、最強と言う割には腕力は最強では無かった様で、持ち上げる事は敵わなかった。いいえ。動く事すらありません。そうです、1ミリも、いいえ、それどころか1ミクロンも動いていませんでした。動いていたのは最強達のみっともなく細い腕と、へし折れた方が愉快な腰だけが惨めにプルプル痙攣していたのです。これは堪った物ではないでしょう。ですが、最強の頭脳を持つ彼ら、その事に一切動揺せずまるで何事もなかったかの如く、自分の仕事に戻ってしまいました。
その時の去り方もあまりかっこよくなかったですね。まるで受験に落ちて一刻も早くこの場から立ち去りたいと思う、浪人生の様に無様に去って行ったんです。本当にかっこよくありません。二匹の負け犬でしたよ。という事は? そうですね、外見の良さも特に最強ではなかった様です。
そして、他人の力にならない様にする為にはどうすればいいか? と言う

【逆日本人的な考え】

の問いに対し、3分も使用したあの方達は、その生き様もそれほど最強ではなかったと言う事になりましょう。で、合計5分程度の時間を無駄にした事になるのです。そうです、最強達、頭の良さも特に最強ではなかったのです! そして俺の手伝いをしたくないが為に、2匹の力を合わせ目的を遂行しようとするその性格のよろしくなさも、とても最強と言えるものではありません」

「え? じゃあ何が最強なの?」

「分りません……」

「www」

「だがこの結果、さっきの行動から二人の会話が推測出来た」

「私も分かったよ」

「そうか! 簡単だよな! こんな感じだろう。

土志田「あの箱どうしましょう最強?」

川谷「うーんそうだ最強」

土「あれがあるとこの青い箱が乗っけられないです最強」

川「確かにそうだ最強」

土「難しい最強」

川「うーむ。閃いた最強! 二人でパレットを木の台の上にずらすんだ最強」

土「重いじゃないです最強?」

川「俺たちの友情パワーで余裕だ最強!」

土「あ! そうです最強! はいっ! 任せて下さい! では早速行きましょう最強」

二人「せーの」
ビキーン 
二人の腰に999ダメージ。そして、二人のIQが1下がり2と0に変わった!

二人「ぎゃああああ」

「うん。私も大体同じ事思っていたよ」
最強と言う語尾もか?

「3分相談してこの結論しか出せないんだぜ? 無脳過ぎる。俺一人で考えてもあんな結論は絶対出ない」

「下手の考え休むに似たりね……鈴木さんの言う通りだわ……人って何だろうって思わされたわ……二人で協力してこの程度のアイディアしか生まれないなんて……最強だわ……馬鹿のチャンピォン」

「何故か最強達は俺に敵意をむき出しにしていて、開いている所に一箱ずつ下ろすと言う基本的な行動が出来ないんだ。俺の手伝いだけはしてはいけないという強い強迫観念が脳裏に根付いている。まあ元はと言えば、川谷坊ちゃんペコリーダーが下ろさなかったのが原因だけどな」

「川谷坊ちゃんペコリーダーwゴロがいいw」

「ゴロが良くても内容は最悪だ。最低の二人思い出すだけでも吐き気が……」

「川谷、土志田。聞けば聞くほどやな奴らねえ」

「一応運転免許も持っているし、溶接の資格も持っているし、大型旋盤を操作する資格も保有している。なのにそんな簡単な事が出来ないんだ」

「人間性は資格でどうこうできないよ……あんな内容は二人で相談する必要すらないわよ……相談し始めたのは誰?」

「土志田だ。でも、鈴木の手伝いをするのは嫌だから他の方法はありますか? と、露骨には言っていないと思う。俺は既に最強達が俺に敵意を抱いている事は知っていて、それに相応しい扱いをしてきたからな。例えば挨拶を無視したり、狭い通路ですれ違う時に肩がぶつかりそうになったら思いっきりぶつかって差し上げて、吹き飛ばして差し上げたり」

「強烈w」

「そんな俺が凝視している中でこれを口にするのは流石にまずいと思っただろう。次にこれも酷いぜ? クレーンと言うもので重い物を吊ってそれをさっきのパレットの上に移動させるという作業があるんだ。2tまでなら吊れる」

「うん」

「で重い品物、大きなひょうたん型の鉄の塊を運ぶ時があったんだ。その品物の真ん中にはロープを通せる穴がある」

「うん」

で、降ろすとひょうたんの広い部分が下に来るわけだ」

「わかるよ」

「だがその状態のままだとフォークで運搬する時に倒れちまう」

「ああ、そうよね」

「だから横にしなくてはいけないんだ。これは一人でも頭を使えばできる作業。それを何故か土志田を使って横にする」

「どういう事?」

「川谷はひょうたんを斜めに持って細い上の方を半分倒した状態で固定する。で、その状態で土志田に口頭でクレーンを操作させ、川谷が少しずつ下げて横に寝かせる」

「一人で出来るんじゃない? それ」

「出来る。土志田は要らない。奴は残念な事にこれからやる事を脳内で一切イメージできないんだろうな。ひょうたんの下の部分は既に床に付いていてロープで真ん中を押さえてあるんだから一人で斜めにしてもロープで固定されているから危険はない。一人でゆっくりクレーンを下げれば横に出来る。どう考えても土志田は蛇足」

「頭悪いわねえ。……って、え?」
アリサは辺りを見回す。そして、一つのブロックを手に取る

「どうした?」

「これ……」
わなわな……



「さっきの奴か? なんだい?」

「君塚と澤口って奴以外全員じゃん……」

「え?」

「鈴木さん狂った従業員紹介してたけど、汎用の鈴木さんと君塚と澤口以外みんな紹介している……」

「ああーそういえばそういう事になるな……」

「君塚はどんな奴? 出せる?」

「そいつは顔は面白味もなく、どちらかと言うとイケメンの部類だ。そうだな……ドワーフの若者と言った感じだ。身長は低めだが体格はがっちりしていて眼光は鋭い。職人気質な面構え」

「ひげ生えてるの? ちょっと見たい」

「ああ、男らしい立派なあごひげだ。悔しいが男の俺でもかっこいいと感じてしまう。物静かで何を考えているかは分からないが、悪い奴ではない。だから出さない」

「分かったよ。じゃあ澤口は大丈夫なの?」

「ああ、あいつは声は大きいがとても爽やかな奴だ。服は汚いけどな。汚れても一切家に持って帰らない。奴は仕事にプライドがあり、日本人の心を持っている」

「どういう事?」

「相撲のまわしは一度も洗わない」

「え?」

「彼もその力士と同じ気持ちで作業着をまわしと同じ仕事の相棒と考え、仕事しているという事だ。だから新しく支給されるまで一度も洗わない。これはすごい事だ」

「本当にそれだけ……? 何かあるんじゃ?」

「アリサちゃん……疑心暗鬼になってるなあw大丈夫! 澤口は安全だ」

「良かった……って! 良くないわよ! ゴミばっかじゃないの!! でもそういえばこの表に石井っていないけどどうして?」

「ああ、石井はこの表が作られた後に入って来た新入りだからな」

「そういう事ね」

「じゃあ次行くぜ?」

「まだ居るんかーい!」
ズコー
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