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文字数 536文字
私は一層、弓の稽古に励んだ。
だが、励もうとすればするほど、身が入らない。
遅れた分を取り戻そうとすると、稽古の時間ばかりが増える。
学問の時間に遅れたこともあった。
住職に叱られている間、私は横目でかぐ夜の顔を窺った。
私が叱られていることを、いい気味だと思っているに違いない。
私の視線に気がつくまでは、かぐ夜は浮かない顔をしているかと見えた。
私と目が合うと、にっこりと微笑んだ。
だが、それは、あの完璧を思わせる笑顔とは、到底言えなかった。
日に雲がかかるように、その笑顔には疲れの色が見て取れた。
ふと、わたしの心にざわつくものを感じた。
また、かぐ夜の笑顔をそんな風に変えてしまったのは誰だ。
そのような問いが、胸の内に去来した。
無論、私だ。
いや、当初のつもりでは、私に笑顔など振りまかなくてもいいということを分からせれば良かった。
それでも、かぐ夜は笑顔を浮かべて来たということは、私の試みは上手く行かなかったと言うことに……否。
そうではない、私はそんなことを思ってはいない。
私の心の内にある疑問は、次の様なものだった。
そんな風になっても尚、私に笑顔を向けて来ようとするのは何故だ。
私はその問いに答えを出すことが出来なかった。
私の胸は羞恥に満たされてしまったからだ。