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文字数 590文字
相も変わらず、弓の稽古に身が入らない。
武の道を志す者として、そのようなことであってはならぬのだが、いくら自らを律しようとも、一層空回りした。
休息を取ることにした。
水場へ向かう途中、かぐ夜を見かけた。
私は思わず物陰に潜んだ。
刹那、脳裏に、かぐ夜のあの何処か疲れたような笑顔が思い浮かんだ。
と同時に、あの時の自らを恥じる気持ちが蘇った。
住職とかぐ夜の話し声が聞こえた。
立ち聞きなど下衆のすることだと思い、立ち去ろうとした。
だが、そうすることは出来なかった。
立ち聞きなど下衆のすることだと思い、立ち去ろうとした。
だが、そうすることは出来なかった。
何でもない住職の言葉に、何故だかはっとするものを覚えた。
かぐ夜は何と答えるのだろう。
耳をそばだてずには居られなかった。
かぐ夜は何と答えるのだろう。
耳をそばだてずには居られなかった。
かぐ夜は一体どんな顔をしているのだろうか。
物陰より、身を乗り出したのだが、私の所からでは、かぐ夜の背中しか見えなかった。
物陰より、身を乗り出したのだが、私の所からでは、かぐ夜の背中しか見えなかった。
「私は若様が六つの時より、若様のことを見て参りました。心根の真っ直ぐなお方です。稀に見る良い気質だとは思うのですが、真っ直ぐすぎるが故、時折、何処を向いて歩いているのかご自分でも分からなくなることがあるのでしょう」
しばらくの間があった。やがて、かぐ夜は短く答えた。
その声は、春の日の風を思わせるものがあった。
そして、軽く頭を下げると、向こうへ行ってしまった。