文字数 247文字

次の日、かぐ夜を見つけると、私はその背中に声を掛けた。
それはいくらか勇気のいる行いだった。
そのことに気がつき、かぐ夜もそのような気持ちでいたのだろうかと思った。


「……おはよう」





我ながら愛想とは無縁の調子ではあった。

かぐ夜は振り向いた。

私はこの期に及んで、その顔に、意外だとか、驚きだとか、負の思念の一遍を読み取ろうとしていた。

だが、反対に私が驚くことになる。



「おはようございます」



その声もそうであったが、その顔も、一点の曇りもない満面の笑みだったのだ。

私はしばし、見とれた。

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登場人物紹介

かぐ夜 十一歳

若様 十一歳

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