第4話
文字数 711文字
ばばばぁは「あっ」という顔をして立ち上がった。シャーロットは俺の顔を一瞥すると、俺の元へは来ず、縁側から奥へ消えていった。
何故、どうしたんだ、シャーロット。この俺が迎えに来たというのに!
「あ、あら。ほほほ。お腹を空かせているようだったから、ちょっとね」
「太田さん。猫からコロナがうつるって前に仰ってましたよね」
「まあ、まあ。立ち話もなんだから、中へ入って頂戴な」
「このご時世ですし、シャーロットを返して貰えれば帰ります」
ばばぁがしつこく誘うので、仕方なく俺は太田家の玄関をくぐった。旦那さんは仕事で留守らしい。居間の奥の襖が少し空いており、暗がりに老人が寝ているのが見えた。その枕元でシャーロットが丸くなっている。
ばばぁは小声で愚痴り出した。
「お義父さん、寝たきりになってから怒りっぽくなって、ちっとも言うこと聞いてくれなくて、本当に参ってたのよ。あたしもう、毎日へとへとで……。旦那は仕事仕事で自分の親なのに無関心だし。お義父さん、おむつを嫌がって、無理に付けようとすると暴れるから下の世話もそりゃあ大変で。あっごめんなさいね」
「いえ……」
俺はカステラをつつきながら返事した。
「でも、あの猫がうちの縁側で寝ているのを、あたしが追い返そうとしたら、お義父さん、猫を見たいって言い出してね。あの猫がお義父さんと一緒に寝るようになってから、お義父さん、すごくおとなしくなってくれて、ちゃんと言うことを聞いてくれるのよ。とても、助かってるの」
「そうだったんですか」
俺が黙って茶をすすっていると、奥の部屋から老人の声がした。
「すまんが、あんた。ちょっと、こっちへ来てくれんか」
何故、どうしたんだ、シャーロット。この俺が迎えに来たというのに!
「あ、あら。ほほほ。お腹を空かせているようだったから、ちょっとね」
「太田さん。猫からコロナがうつるって前に仰ってましたよね」
「まあ、まあ。立ち話もなんだから、中へ入って頂戴な」
「このご時世ですし、シャーロットを返して貰えれば帰ります」
ばばぁがしつこく誘うので、仕方なく俺は太田家の玄関をくぐった。旦那さんは仕事で留守らしい。居間の奥の襖が少し空いており、暗がりに老人が寝ているのが見えた。その枕元でシャーロットが丸くなっている。
ばばぁは小声で愚痴り出した。
「お義父さん、寝たきりになってから怒りっぽくなって、ちっとも言うこと聞いてくれなくて、本当に参ってたのよ。あたしもう、毎日へとへとで……。旦那は仕事仕事で自分の親なのに無関心だし。お義父さん、おむつを嫌がって、無理に付けようとすると暴れるから下の世話もそりゃあ大変で。あっごめんなさいね」
「いえ……」
俺はカステラをつつきながら返事した。
「でも、あの猫がうちの縁側で寝ているのを、あたしが追い返そうとしたら、お義父さん、猫を見たいって言い出してね。あの猫がお義父さんと一緒に寝るようになってから、お義父さん、すごくおとなしくなってくれて、ちゃんと言うことを聞いてくれるのよ。とても、助かってるの」
「そうだったんですか」
俺が黙って茶をすすっていると、奥の部屋から老人の声がした。
「すまんが、あんた。ちょっと、こっちへ来てくれんか」
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