第5話
文字数 602文字
俺は立ち上がり、襖を開けて、老人の傍に立った。
目の大きい、痩せ細った老人だった。
「幡多と言います。お邪魔してます」
シャーロットが俺を見上げた。俺はシャーロットの顔を撫でた。彼女は、俺の手に頬ずりした。
「首輪をしてるから、どこかの飼い猫だと分かってたけど、わしはこんな体だから動けなくて」
「……」
「この猫、シャーロットと言うんだね。勝手に、たまと名付けてたよ」
「いえ、たまで、いいです」
「すまんかったなあ、あんたに返すよ」
「いえ、いつでもいいんです」
僕は太田家を辞した。
それから俺は、シャーロット恋しさに、週に一度は顔を見せてもらいに太田家を訪問していたが、しだいに行かなくなった。
シャーロットは俺より老人と一緒にいるほうが幸せそうに見えたから。
それに俺が行くたびにばばぁが、旅行の土産だの惣菜だのくれるのもなんか気持ち悪いので。
ばばぁは、俺が急いでいて雑にゴミを置いても、何も言わなくなった。
半年ぶりに見に行ったら、たまになったシャーロットは、5匹の子猫の世話で忙しそうだった。子猫はみな、白と黒のブチ模様だった。
おいばばぁ教えてくれよ……そしてどこのどいつだよ……別れた女房が他の男との子供を連れて歩いているのを発見したときの寂寥が、俺の心を一瞬走った。
まあ、たまが幸せなら、いいか。
俺は空を見上げた。
あたたかい風が吹き、桜は八分咲きとなっていた。
目の大きい、痩せ細った老人だった。
「幡多と言います。お邪魔してます」
シャーロットが俺を見上げた。俺はシャーロットの顔を撫でた。彼女は、俺の手に頬ずりした。
「首輪をしてるから、どこかの飼い猫だと分かってたけど、わしはこんな体だから動けなくて」
「……」
「この猫、シャーロットと言うんだね。勝手に、たまと名付けてたよ」
「いえ、たまで、いいです」
「すまんかったなあ、あんたに返すよ」
「いえ、いつでもいいんです」
僕は太田家を辞した。
それから俺は、シャーロット恋しさに、週に一度は顔を見せてもらいに太田家を訪問していたが、しだいに行かなくなった。
シャーロットは俺より老人と一緒にいるほうが幸せそうに見えたから。
それに俺が行くたびにばばぁが、旅行の土産だの惣菜だのくれるのもなんか気持ち悪いので。
ばばぁは、俺が急いでいて雑にゴミを置いても、何も言わなくなった。
半年ぶりに見に行ったら、たまになったシャーロットは、5匹の子猫の世話で忙しそうだった。子猫はみな、白と黒のブチ模様だった。
おいばばぁ教えてくれよ……そしてどこのどいつだよ……別れた女房が他の男との子供を連れて歩いているのを発見したときの寂寥が、俺の心を一瞬走った。
まあ、たまが幸せなら、いいか。
俺は空を見上げた。
あたたかい風が吹き、桜は八分咲きとなっていた。
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