第1話

文字数 560文字

真っ白な、ブリティッシュショートヘア。雌。生後2か月。¥289,800(税抜)。
俺は新しいマシンを買おうと思っていたのだが、やめた。
すぐさまクリックし、対面予約を取り付けた。
数日後、抱き上げた彼女は、俺の顔を見上げて小さくニャと鳴き、俺の指を舐めた。
俺は彼女に、シャーロットと名付けた。

こんなに可愛い女はいない。
シャーロットはいたずら好きで、俺が家で仕事をしてる時に必ず邪魔をしてくれる。
マシンに乗っかって、謎の文字入力をしてくれたり。
長いこと待たされ、ようやく手に入れた伊予の手漉紙を、びりびりに破いてくれたり。

だけど俺は怒りはしない。
人間の女のように、
「仕事ばっかでつまんなーい。どっかに連れてってえ~」
なんて言ったりしないからな。
エッチな動画も、彼女と一緒に鑑賞するのだ。

シャーロットは素晴らしい女だ。
夜、俺は彼女と一緒にベッドに入る。
彼女は俺の腕に小さな頭を乗せて、すこやかな寝息を立てて眠る。腕が痛いが動いてはいけない。
猫は大抵すぐに寝入ってしまうものだが、彼女は、しばらく起きていて、俺の顔をじっと見つめてくる。
そんなときは、心ゆくまで見つめ合う。
ふたつの小さな、琥珀の瞳。
この世にこれほど美しい生き物がいようとは。
俺はその鼻先に顔を寄せて、そっと、口づける。
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