7・奈良時代の百済王、日本の国主となる

文字数 1,308文字

7・奈良時代の百済王、日本の国主となる
今から、1200年前の奈良時代に韓国の百済王が日本に渡来し、東北の陸奥国に国主となって金の鉱脈を採掘する際に、日本人を徴用工として鉱山の鉱夫として従事させた。
「百済の国の王が日本に来て、国主になっていたんですか?」と訊かれた。
韓国では歴史の教科書には載っていないはずだ。だから、韓国人のほとんどの人が知らないはずだ。
奈良時代の百済の国は高句麗と中国の連合軍によって滅亡しているからだ。
ユンハさんは目を丸くして聞いていた。
「百済の国って、古代朝鮮でしょう。千年以上も昔に滅亡した朝鮮半島の国でしょう。
その国の王さまがどうして、日本に渡って国主になっているの?
古代の日本の国主というのは、今でいうと、どの程度の権力がある方なのかしら?」
今の時代で言うと、ソウルは古代日本の奈良平城京ということかな。今の日本の首都は東京だけど、千年ほどの昔は京都にあったんです。その前は、奈良の大仏様のある奈良あたりになる。1200年前の日本の首都は奈良だったので韓国でいえばソウル。そして、百済王が日本にやってきて国主になったのが、今の仙台あたりです。
仙台は政令都市で市民は100万人を超えているけど、奈良時代は仙台から東に離れた多賀城市というところに東北を治める多賀城という都があった。
韓国でいうと光州広域市というあたりだね。百済王敬福は、その光州広域市の市長に抜擢されていたという意味がある。朝鮮から亡命してきた人が日本の国の市長に抜擢された訳だから驚きだと思うんだけど。
古代朝鮮と日本を今の時代にあてはめたおおまか説明だけどね。でも実際、仙台は韓国の光州広域市と姉妹都市になっているので、それは1200年前の百済国と関係があるということだと思うよ。
百済王は、正確には百済王敬福という名前なんだけど、彼は百済国が滅亡する前に百済を脱出し奈良の都にたどり着いたんだ。」
ユンハさんは、信じられないという表情をしていた。
「私は百済国の王さまが百済国の滅亡後、日本に渡来して日本の地方の政治家になっていたなんて信じられない。」
「百済王というのは正確には百済王家の血筋をひくという意味で、百済王は苗字で【くだらのこにき】と発音するらしいんだよ。王家の血筋という意味で苗字にしたらしいんだけど、日本の歴史書にきちんと載っているよ。」
「それは、なんという日本の本なの?」
「続日本紀(しょくにほんぎ)という歴史書で、日本では古事記、日本書紀に続く貴重な資料だよ。」

古代朝鮮と古代日本の大和朝廷は隣国同士でずいぶんと仲が良く交流も進んでいたらしい。
古代朝鮮は日本よりも文化が進み、百済国が滅亡してもその国の王家の一族に日本の官僚として受け入れ、地方の国さえも治める長官として任命していた時代があった。
「百済王敬福は、陸奥国の長官として人生を終えたのかしら?」
とユンハさんが訊いてきた。
「いや、それが、当時の聖武天皇に大抜擢されてその後、刑部卿まで出世している。
今でいえば、韓国の法務大臣にまで上りつめたということだよ。」
ユンハさんは、驚きのあまり身を引いた。
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登場人物紹介

私・イチロー(大学4年生)

ユンハ(韓国生まれ)

イ・ユンハ 韓国からの仙台の大学に留学している女性

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