1200年前の徴用工と旧約聖書
私と韓国生まれのユンハさんは、仙台の教会で同じ礼拝を守っている。教会の玄関脇の壁にミレーの落穂拾いの絵が架けてあり、礼拝後にその絵に見入っているユンハさんの姿に気づいた。落穂拾いの絵は、フランスの夕暮れ時の農家の婦人たちが収穫した残りの落穂拾いを描いたものだが、それは聖書の旧約聖書を題材にして書かれたものだ。そのことに気づいたユンハさんは、落穂拾いの絵と韓国の従軍慰安婦や徴用工など、かつてしいたげられていた弱い人々とその姿を重ね合わせて見ていたのだ。教会の婦人会の方から近くの喫茶店の無料券を2枚いただいた私とユンハさんは、一緒にコーヒーを飲みに行った。そこで、私は続日本紀の話をした。続日本紀とは、古事記、日本書紀に続く日本の歴史を記録した書物だ。今から1200年前、百済国から渡来した百済王敬福が東北の仙台あたりの陸奥国の国主となっていた。国主となった百済王敬福は、金を採掘するために鉱山に民を徴用し金鉱脈から金を採掘させていた。1200年前の掘削技術では多くの日本人の徴用工が亡くなったと推定されている。そのせいもあり、反乱が起き朝廷内にも波及していった。天皇に信頼の厚い百済王敬福は反乱を鎮圧したが、その際、ムチ打って五人の朝廷の役人を獄死させたことが記録として残っている。千年単位という長い歴史を見ると、日本でも韓国でもおなじような事件が繰り返されていることを知る。私たちは、ミレーの落穂拾いの聖書の奥深い意味をかみしめ弱者に配慮した社会になることを共に祈った。
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小説情報
1200年前の徴用工と旧約聖書
- 執筆状況
- 連載中
- エピソード
- 8話
- 種類
- 一般小説
- ジャンル
- 歴史
- タグ
- 聖書ラノベ新人賞2
- 総文字数
- 14,215文字
- 公開日
- 2019年01月01日 11:30
- 最終更新日
- 2019年01月10日 21:35
- ファンレター数
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