第5話

文字数 346文字

 ああ、うとうとしていたか。危ない、危ない。もうトンネルはあれで最後。小さな鉄橋、僕の村。
苦しいならば有り難い。折角生まれて来て、死ぬまでだ。あのトンネルでうつら夢みたぼんやりした幸せ。あれは僕のものじゃない。

 帰れない方へ

 今夜は小屋で眠ろうか。車にはタイヤを積んで来た。降ろす気力なんかない。硬い板の間に御座引いて、車から毛布を引っ張り出す。隙間だらけ、蚊にやられるか?幸い今夜は涼しい。ビールが二本冷えていた。それだけ飲んで、ぐるんぐるんに酔ってしまった。へべれけ、千鳥足。なんとなく気になって外に出て、月を探した。

 見あたらない。何処にも月はみあたらない。

 そういやあのトンネルに居た人たち、みんな顔が無かった。

 みんなどんな顔してたっけ?
 
 死んだみたいに眠って、死にたくなる朝へ。
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