第1話 朔

文字数 382文字

 絶望の少し先に居た。

 確かに未来が少し前まではあった。みたいに信じたがっていた。良い決断をやっと出来た。遅かったから大変にしてしまった。なんだ、気楽なもんだ。そう誤魔化して、騙されたい。今だって。けれども何もかも誰も彼もが僕の未来に「死」以外を許さない。
 ともかく働くしかない。労働の楽しみ。そこではまるで一人前。くらくらするまでとことんやろう。梅雨が明けたそうだ。その暑さも見知らぬ誰かと邂逅を促す。

 完全なる一致。

 知らない誰かと。

 追われているのが心地よい。きみを追うのはくたびれたから、もう興味ねーにした。

 そうして真っ暗闇。ツキは見あたらない。稼げど動けど悪化に歯止めがかからない。もう誰とも目を合わせらんねえ。

 それでもまた明日あれば、僕は生き生きと働くふりをする。そうしてどうにか生きのばす。新月てのは、なんにも無いんだ。今の僕とおんなじみたいに。
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