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文字数 556文字

 昭和四十三年。わたしは小学三年生だった。

 わたしの住むO町は、高知県の人口一万あまりの小さな小さな田舎町。

 コメ作りをしている農家が多く、わたしの家も稲作とミカン栽培をしていた。

 この頃、高知県のはしっこにあるド田舎でも、高度経済成長とやらのおかげで、なんとなくゆとりらしきものが感じられるようになっていた。

 ほとんどの家庭が白黒のブラウン管テレビを購入し、読売巨人軍の野球中継をみて長嶋や王に熱狂し、プロレス中継ではジャイアント馬場の十六文キック、アントニオ猪木のコブラツイストや卍固めにしびれ、テレビの前で興奮しながら声援をおくったものだ。

 この年に、あの伝説の野球マンガ「巨人の星」がアニメ化され、テレビ放送がはじまったのだ。わたしたちは「巨人の星」に夢中になり、毎週のテレビ放送を首をながくしてまった。

 その頃田舎の少年は、読売ジャイアンツのYとGのローマ字が重なったあのマークの野球帽をみんながかぶっていた。店にはそれしかおいてなかったのだ。

 テレビで放送する野球中継はジャイアンツの試合だけだから、ほとんどの者が巨人ファンになった。

 しかしわたしは、あまのじゃくだからアンチ巨人だった。アンチ巨人であることを秘密にして、日本シリーズでジャイアンツにいつも負ける阪急ブレーブスをこっそり応援していた。


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