第11話 終わらない終わり
文字数 271文字
そしてまた歩き続ける。
階段を昇って行くと初めて出口らしいところについた。
その重たい扉を押して外に出ると当たり前のようにそこは病院の屋上だった。
病院の廊下の冷たい薄暗さに対して、空はつきぬけるように青く、コンクリートの床は真っ白に光っていて目を開けているのが苦痛な程だった。
めぐらされた金網の向こうに黒いシミの様に人の影があった。
閉じる扉の音に驚いたのか影は振り返った。
影は僕だった。
声をかける間もなく影は消えた。
金網に向かって走り下を見下ろした。
影が小さな点になって限りなく落ち続けていく。
僕は落ちていった僕の事を少しだけうらやましく思った。