第X3話 Shake my soul

文字数 769文字

「先日までの寒さが嘘のようですよ」
 キョン子は早くも半袖だ。

「まったくだ。夏は待ち遠しいものだったが、いまはあまり歓迎できないな」
 俺も半袖のほうが動きやすくて好きなのだが。

「ただ、熱いからこそ冷たいビールが美味いんスよね~」
 誤解を招くような発言だが、こいつはお子ちゃまなので酒は飲めない。

「そこは炭酸ジュースだろ」
 小突く真似をする。

「お客さんもアイスコーヒーの注文が増えたっスよ~」
 野球場のビールの売り子ではないが、キョン子にはよく声が掛かる。

「自販もあるが、いいとこで席を立てないからな」
 ゲーマーのトイレ事情と似ている。

「ただ、ボクなら店舗併設のシェイクを飲みたいっス」
 ハンバーガー店では大抵取り扱っている。

「俺が生まれて初めて飲んだシェイクはロッテリアだったなあ」
「遠い目をしていますね」
 他はマックにモス、ドムドムといったとこか。

「味は3つくらいしかないですよね。バニラにチョコにストロベリー」
 機械トラブルで断られることもある。

「あんまり増やすと可哀想だが、バナナシェイクは欲しいな」
 バナナは好きじゃないが、バナナシェイクは好きだという御仁もいる。

「チョコと似てますけど、コーヒーシェイクも飲みたいっス」
 全然違う。アイスの実のコーヒー味を食べれば、コーヒーアイスの人気は高まりそうなんだが。

「フルーツドリンクの店になっちまうが、メロンシェイクやいちじくシェイクとかな」
 タピオカドリンクのブームは過ぎ去ったが、こっちの路線はどうだろうか。

「フルーツは夏のものってイメージですから、どう冬場を乗り切るかっスね~」
 ホットドリンクメニューも考案しないとな。

「どうもコンビニの甘すぎるペットボトルが苦手でして。同じ甘いモンでもシェイクを飲みたいですし、提供したいっスね」
 やる気になるのはいいが、ブギーな胸騒ぎがするぞ。







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登場人物紹介

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

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