第X話 菜の花畠に入日薄れ

文字数 857文字

 キョン子とJUSTOに買い出しに来ている。

「ここの看板、どことなくウッドペッカーみたいっスね」
 ナガシマのマスコットも昔そうだったんだよなあ。

「エンペラーのメンバーでBBQも久しぶりだな」
 岐阜県はBBQ大国だが、三重も負けていない。

「花見の季節にこういうのって憧れてたんすよ~」
 キョン子は初参加だ。

「お前あんな顔だったんだな」
 キャラクター紹介に顔が掲載されていた。

「へ? 毎日見てるじゃないスか!」
 俺も当初の想像とはだいぶ違うが、素人の作者が作ったやつだからな。

「でも、BBQって何を買うかでけっこう話がまとまらなかったりしませんか?」
 それはあるよな。

「自分ちだけならともかく割り勘で買うんだしな」
 この肉は食うが、あの肉は食べないとかな。

「食にも合わせ技ってあると思うんスよ」
 キョン子がバナナを手に取る。猿だ。

「ボクはバナナクレープが好きなんスけど、その時にバナナジュースを飲むのは違うんじゃないかと。バナナジュースも好きなんスけどね」
 もう片方の手でバナナジュースを取り出し、すぐ戻した。

「俺もそうだと思うぜ。ショートケーキを食べてるのにイチゴミルクは頼まない」
 同じく、両方好物である。

 総菜コーナーを見回すキョンコ。
「あれもよくやってしまいますが」

「お好み焼きに合わせたいのは御飯であって、焼きそばだとさすがにくどくなりすぎるっス」
 これでもかというソースの摂取量だ。

「話が見えてきたぞ。豆は違うがコーヒーとチョコの組み合わせも俺は好かん」
 チョコにはさっぱりした飲みもんが合うと思う。

「献立考えるのも、そういうところにヒントがあるような気がするんですよねえ」
 似たものばかりにならないように注意が必要だ。栄養も偏るだろう。

「まだ早いが、素麺に天ぷらってのは理に適ってるよな」
「はい。水と油みたいなもんですが、そういうものこそ手を結ぶべきですよ」

「似てるやつは意外と喧嘩しやすいんだ。性格が違う奴ほど案外うまく行くのかもな」
(ボクもそれを言いたかったんですよ! でも先輩ニブイからなあ・・・)








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登場人物紹介

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

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